第2話
可能性について、いくつか候補を挙げておきたい。
まず現状、見知らぬ女の子と2人、見知らぬ森に連れてこられ、「ふたりで秘宝を探してください」と言われ。手を繋ぐ事以外には特にルール無し。秘宝を見つけ出した暁には、女の子:ミユちゃんと僕がどうして一緒に連れてこられたのかの秘密が明かされる。※致命的モンスターの出現は無し。
秘密の理由はなんなんだろうか?
第一候補、これが本命なのだが、ミユちゃんがどこからか僕の事を知って、これを機にお近づきになろうとしている説。激推し。正直ミユちゃんは現実で出逢えていれば、一度でも目にすれば虜になるレベルの可愛さだ。手入れの行き届いた髪、端正な顔立ち(夜だからよくは見えないのだけど)、ほどよく鍛えられた体躯。どれをとっても理想と言わざるを得ない。あとは性格だが、ぶっちゃけ過度に緊張している現状では判定が出来ない。ビクビクしている今の姿も可愛らしいが、もしかしたら素だと壊滅的にガサツだったり凶悪だったりする可能性は否めない。無いとは思うがこの可愛らしい照れ方焦り方喋り方全てが僕を嵌める為の演技である可能性だって捨てきれない。なにしろさっき会ったばっかりなのだから。隠し事が出来ない、ようにも見えるがそれが本性かどうかは乞うご期待。
第二候補、ミユちゃんおよび球体のポラリスが天使の可能性。あるいは死神か。要するに僕が死にかけていて臨死体験として見ている夢かもしれない。僕が生き返る為の手段として、この広いかどうかもわからない、世界に3番目に広い森から秘宝を見つけ出す必要があるのかも。すると光の柱が空から降りてきて、その光に照らされたミユちゃんがその背中に翼を生やし「よく困難な道を乗り越えましたね」と僕の頭を撫でてくれる可能性……。あるいは、その服越しからでもはっきりとわかるふくよかな胸に抱き締めてくれる可能性……。非常に低い可能性だが、無い話では無いだろう。いや、恐らくだが、期待するほどではないまでも、初めから絶望視するほど無い話では無い。いや、間違いなくある。あれ。
第三候補、上記2候補以外のなにか。はっきり言って想像つかん。
ともあれ旅は始まった。と言っても歩くだけだ。懐中電灯も何もない。夜の森を、女の子と手を繋いで歩くだけだ。ヌルゲーだ。人生もかくあれば良いのに。先程からミユちゃんは沈黙を保っている。手を握る力も弱い。やっぱり手を繋ぐの嫌なのかな?
「やっぱ、手を繋ぐの、いや?」
「……っ!!」
ぶんぶんと激しく首を振る。その度にしなるツインテールが飛んできた。いや、喋れよ。
ミユちゃんは心持ち握る力を強くして、さりとて身体の距離はさっきより離れた気がする。歩きにくい……。
「ルールを追加します」
「どわっ!?」
進展のない僕らに嫌気が差したのかポラリスが高速で降りてきて命令する。
「ミユはマコトに腕を絡めなさい」
「……っ!!」
パクパクと声にならない悲鳴を上げて、ミユちゃんはポラリスを引っ張って木陰に行く。なにか内緒の話をしているようだ。
しばらくあって息を吐かせて戻ってくると、ミユちゃんは腕を絡めてきた。先程よりもかなり密着している上に胸も当たってる。こ、これは良いものだ……。さっきよりなお歩きにくいけど。
「では楽しんで」
ポラリスがふよふよと再び空へ上がろうとする。
「ちょっと!」
僕は呼び止めた。
「……なに?」
「出来れば3人で探さないか?」
会話がもたないし……、たぶんこの先もポラリスが何度も口出ししにくる事になると思うし……。
側を見ると凄い勢いでミユちゃんも頷いていた。
「……仕方ないわね」
「おまえ女なんか」
「……」
語尾に反応してツッコむと、ポラリスがハッとしたように黙り込み、それをミユちゃんがジト目で睨みつけている。いや、不甲斐ないのはミユちゃんの方だからね。責める資格無いと思うな。
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