第83話 依頼続行


「もう流石に、自爆するヤツは居なかったか」


「お疲れ様、ゼオンくん」


「フィリナをあの女と戦わせないで良かったよ……」


「ゼオンくん、油断しすぎよ。あの時、私なら結界を張ってたわよ」


「……ん? まさか、見えて、た……?」


「別にいいじゃない。既に隅々まで見てるんだから」


「ああっ!? 俺の尊厳が!?」



 どうやら、俺が全裸になったシーンは、フィリナに見られていたらしい……



「————ゼオユーラン様、とお呼びすればよろしいですか?」


「……ん? いや、呼び捨てでいいぞ」


「では、ゼオユーラン、本日は本当にありがとうございました」



 ユフィアーネが、礼を言ってきた。



「ありがとうございました」



 クレリアも、礼を言ってくる。



「お前、気持ち悪いから、前の口調でいいぞ?」


「Sランク冒険者様だとは露知らず……」


「いいって……」


「そうですか。本人がそう言うのなら仕方ないですね、ゼオユーラン」


「変わり身早いな、おい」



 コイツ、変わらんな。



「じゃあ、達者で」


「えっ? どこに行こうとしてるんですか?」



 俺が二人と別れようとしたところで、ユフィアーネに呼び止められる。



「ん? 第三皇子を殺したから、依頼は終わりだろ?」


「私を追っていた彼が死んだのですから、当然、私が怪しまれるでしょう……」


「……どこかで大人しく隠れて過ごせば? お金はあるんでしょ?」


「はい。ですが、依頼は、私たちを守って下さいというものです! 冒険者の頂点なんですよね? 依頼は最後まで遂行すべきだと思います!」



 ユフィアーネは、熱弁を振るう。



「うーん……」


「い、今ならっ! わ、私も報酬に————」


「要らん」


「……」


「だが、依頼は最後までやってやるよ」


「っ……! ありがとうございます!!」



 ユフィアーネは、満面の笑みで礼を言う。



「それじゃゼオンくん、帰りましょ」


「あ、ああ?」



 フィリナは、何故かわざとらしく俺の腕を取った。



「そういえば、ゼオユーラン」


「……ん?」


「兄妹って嘘なんですよね? その女は誰なんですか?」



 ユフィアーネは、ジト目で俺の方を見ながら尋ねてくる。



「私はフィリナリア。シュッペルゼ王国の第四王女よ」


「「……!?」」



 フィリナの自己紹介に、二人が驚愕する。



「……でも正直、そんなことはどうでもいいのよ。大事なのは————」


「んっ!?」


「っ……!?」「……」



 フィリナは、俺にキスをしてきた。


 ……何故ここで?



「私はゼオンくんの女だってことよ」


「「「……」」」



 だから、何故ここで?



「ふ、ふふ……いいでしょう! 受けて立ちます!」


「ふっ、出来るものならね!」



 二人とも、なんか怖いぞ?


 何となく、二人の気迫に押される俺であった。




   ♢



 それから三ヶ月後。


 俺たち四人は、天空の国を遠くの丘から見下ろしていた。



「おおっ、あれが!」


「ええ。天空の国、オウグリークね」


「……って、全然浮いてねぇじゃん」


「浮いているのは、首都だけですよ、ゼオン」


「なんか拍子抜けするなぁ……」



 そんな遣り取りをした後、国境に向かった俺たち。



「四人とも冒険者か! しかも、Cランクとは……凄いな!」


「ありがとうございます」


「兄ちゃんも、フラーテルンに行くつもりなのか?」


「ええ、そのつもりです」



 門番が言うフラーテルンとは、天空の国の首都のことで、そこが噂の地面が空に浮いている場所だ。


 そして、何日か目的地に向かって、乗合馬車で移動して思った。



 (この国、街道の整備が行き渡ってないな)



 良く言えば自然的だが、そのせいで移動中、魔物との遭遇率が非常に高い。


 俺たちはCランク冒険者で通っているので、ちゃんとそれっぽく駆除しておいたが……


 この国には、天空に浮かぶ首都を見に、多くの冒険者が訪れるらしいから、丁度いいらしい。

 沢山の冒険者が来るのは、空に浮かぶことにロマンがあるからだろうね!


 因みに、ユフィアーネが顔を隠していないし、もう面倒だからいいやということで、フィリナもフードを被るのはやめた。


 そうすると必然的に、絡んでくる輩が多くなるわけで……



「おうおう、オメェよぉ。こんな別嬪を二人も連れて、いい御身分じゃねーか??」


「「「「「……」」」」」



 とある街の冒険者ギルド。


 他所者の俺に同じ事を思っているのか、周りの冒険者達は、俺に絡む男を止める様子は微塵もない。



「はぁ……またか」


「あん? テメー、なに溜め息ついてやが————ブヘッ!?」



 絡んできた男は、吹き飛び、ギルドの壁に衝突した。



「ふんっ!! 嫌らしい目でミューネを見るんじゃないよ!」



 それを成したのは、クレリアだ。



「お、おい。あのオバさん、ヤベェんじゃね?」


「あ、ああ、そうだな。関わらないでおこうぜ……」



 冒険者達はクレリアの方を見て、怯えるのだった。




  ♢


 あとがき


 ハーレムタグは付いてないです(2回目)





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