第42話
「———本日、最後を飾るのは……」
(予算は残り金貨三枚だから、多分買えないが……見るだけならタダだしな)
途中退出もできるが、折角なので、裏オークションに居座ることにした俺。遂に最後の品を拝めることになったのだが……
「最高級の媚薬と避妊の魔道具のセット! 高名な錬金術師と魔道具士の作品となっております! いやぁ、これは私も欲しいですね〜 では、金貨十枚から!!」
「金貨十枚!」
「金貨十一枚!」
「金貨十三枚!」
「金貨十五枚ッ!」
「金貨十七枚!」
「金貨二十枚だ!!」
「金貨二十四枚ッ!!」
「金貨三十枚!」
「「「「「くッ……!!」」」」」
「では、まさかの金貨三十枚で、5番の方の落札です!!」
(最後だと期待して損した……最高級の媚薬ってなんだよ!? 普通のヤツと何が違うの? まぁ、いい……帰るか)
俺は出口付近で番号を見せてお金を支払い、腕輪を受け取ってから会場を後にした。
♢
翌朝、俺は伯爵邸の訓練場の脇に立っていた。
「———それで、昨日手に入れた魔道具を試したいから念の為、騎士たちを遠ざけてほしいと」
「正確には、増やした魔力で固有スキルを試したい、ということですよ、お嬢様」
俺は朝に訓練をしている伯爵家の騎士たちに訓練場から出て行ってもらえるようお嬢様に頼んだあと、腕輪を装着した状態で広い訓練場の中心に立つ。
「ゼオンくん、化け物みたいに強いのに、まだ使ったことがない固有スキルがあったのね……」
「化け物って……」
「いい意味で、よっ!」
「それより、お嬢様も一応、離れていて下さいね」
「分かったわよ」
お嬢様が十分に離れたのを確認すると、早速俺は《時空間魔法》を意識して魔力を練り始める。
俺の魔力全てが体内で動き出す。
(やはり、今までとは違って、《時空間魔法》を発動できそうだな……)
これまでに試してきて、空振っていた魔力が、今回は思い通りに消費され、しっかりと魔法が発動する感覚へと向かう。
「……って、ヤベッ、制御が難しすぎる!」
だが、《時空間魔法》は相当神経を使い、《魔力操作》のスキルが上級であるにもかかわらず、上手く制御できず、魔力が辺りに漏れ出す。
(チッ……今、溜めている魔力の消費の仕方が分からない。このままだと、この大量の魔力が周りに放出されて、近くで此方の様子を見ているお嬢様や騎士たちを威圧してしまう。兎に角、魔法を発動するしかない……。《時空間魔法》だから、時間と空間を操るんだろう。空間はイメージが難しいから、時間をイメージして、《時空間魔法》を使う!!)
「ねぇ、ゼオンくん! 本当に大丈夫なの!?」
辺りに散らばりつつある魔力を感じ取ったのか、お嬢様が声を掛けてくる。
「ッ……!!」
しかし、俺は返事をする暇も無く、大量の魔力に任せて、無理矢理、《時空間魔法》を発動する。
メルシアーネと騎士たちは濃密な魔力を肌で感じ、思わず目を瞑る。
カンッ! カカンッ……
金属の衝突音が鳴り響く。
それに合わせて、その場に居る人たちが目を開けると、訓練場の中心で一人の子供———ピンクブロンドの髪に琥珀色の瞳の3歳くらいの幼子が、身体に見合わない大きさの服に埋もれて、寝ていた。
♢
「———ぁ……?」
「あっ、起きたんだね?」
ベッドの上で目を覚ますと、お嬢様が側にいるのが見えた。
「ぇーと、お嬢様。俺はどうなって……?」
うん? なんか言葉を上手く発することができないな……?
「あぁ……その口調、やっぱりゼオンくんなんだね」
「ええっ、俺の顔が分からなくなったんですか!?」
「そうじゃないわよ! ほらっ、見てみなさい!」
そう言って、お嬢様は俺の顔の前に手鏡を掲げる。
「………。……へっ!?」
「ねっ!」
「ぇ……えっ? えぇっ!? 俺、若返ってる!?」
「そのようね」
「ぁ……一応、固有スキルは発動したっていうことか……」
「どんな固有スキルなの?」
「えーと、《時空間魔法》ってやつです」
「なんか凄そうね」
「まぁ、若返ることができましたし? ちょっと若くなりすぎな気もしますが……何とかなるでしょう、きっと」
流れでお嬢様に固有スキル名を教えちゃったけど、別にいいや。お嬢様なら、無闇矢鱈に広めたりしないと思うし。
「それで、どうするつもりなの? というかそもそも、元の姿に戻れるの?」
「ちょっと待ってて下さいね———ステータス」
~~~~~
ゼオユーラン・ルクーツド(男)
種族 : 人間 称号 : なし
Lv : 58
魔力 : 1340/1340
スキル
剣術(上級)
格闘術(上級)
気配察知(超級)
魔力感知(超級)
魔力操作(上級)
火魔法(中級)
水魔法(中級)
地魔法(中級)
風魔法(上級)
光魔法(超級)
威圧
隠密(中級)
状態異常耐性(超級)
固有スキル
時空間魔法
成長促進
~~~~~
「ええ……戻れると思いますよ」
「ステータス、私にも見せてっ?」
お嬢様が手を合わせて、ベッドの上で体を起こしている俺に上目遣いで頼んでくる。
「可愛くお願いしても、ダメなものはダメです」
「えー、ケチぃ……」
俺はあることに気付き、嬉しさでニヤケた状態で、お嬢様と会話をする。
「ダメよ!」
「何がですか?」
「こんなに可愛い姿のゼオンくんが、そんな悪そうな顔をしちゃっ!」
お嬢様が急にそんなことを宣いながら、俺を抱きしめてくる。
……俺、そんなに悪そうな顔をしてたんだ?
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