第19話
最後の一人の頭を左右に二等分すると、俺は光魔法を解除する。
「ありがとうございます!」
「お、おう?」
俺が姿を現すのとほぼ同時に縛られている男が感謝の言葉を述べる。
「まさか、あの有名なゼオユーランさんに助けてもらえるとは……」
「ん? 俺を知っているのか?」
「それは勿論! 貴方は今、世界で一番有名な方と言っても過言ではない!」
「お、おう?」
俺は困惑しながらも男の拘束を解き、軽く光魔法で治療してやる。
「いやー、自由はいいですねぇ」
「それにしても、お前、何で捕まっていたんだ?」
「あっ、よくぞ聞いてくれました!」
「あー、人を待たせているから、やっぱり歩きながら話してくれ」
そう言って、来た道を歩いて戻る。
「———それで、奴らに騙されたのに気付いた時にはもう遅かったというわけですよ〜」
「なるほどなぁ……」
男はウルムンドと名乗った。彼の話によると、少し前までラキートに滞在していたのだが、俺と同じでヒュライゼンに向かおうとして、商人と冒険者と名乗った三人組の馬車にお金を払って乗ったところ、実は盗賊で捕まってしまった、というわけだそうだ。
そんな話をしていると、馬車に到着したので、結界を解除する。
「あぁ! おかえりなさいませ、ゼオユーランさん」
「ああ」
「ところで、そちらの方は……?」
「僕はウルムンドと申します! 恥ずかしながら、盗賊に襲われてしまったので、馬車に同席したいのですが……」
「あぁ、全然大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」
そんなわけで、現在、俺はウルムンドと馬車の中で話している。
「そういえば、お前さっき、俺に気付くのが早くなかったか?」
「……他言しないで欲しいのですが、僕には固有スキルが二つあるのですよ」
「おおー、そりゃあ凄いな」
急にウルムンドが真面目な顔になり、小声で話す。
「その二つが、《超遠視》と《投写》なんです」
「《超遠視》は何となく分かるが、《投写》ってどんなスキルなんだ……?」
「《超遠視》は、遠くを視ることが出来るスキルです。僕を中心に、半径50キロまで視ることが出来ます。」
「それで俺を先に見つけていたというわけか」
「はい。ゼオユーランさんが盗賊三人を倒すところも視ていました」
「なるほどな」
「そして《投写》は、見たことがある光景を紙に写し出すというスキルです」
「え……その二つの組み合わせヤバくないか?」
「実はそうなんですよ……このスキルのことは僕の家族とストゥード新聞社の代表しか知りません。そこ関連で僕は普段、王都で仕事をしているんです」
さっきもウルムンドが口に出していたけど、ストゥード新聞社って確かこの国で最大手の新聞社だよな……
「因みに、いつもは《超遠視》で盗賊を避けて移動しているのですが、最初から同行者が盗賊だったので、為す術なく捕まってしまった、というわけです」
「ああ、そういうことか」
俺は漸く、ウルムンドが何故捕まっていたのか知る。
「ところで、王都で仕事していると言ったのになんでラキートに行ったり、ヒュライゼンに行ったりしてるんだ?」
「そこに限らず、主要な貴族の居る場所を転々としています……王位継承権争いが激化してきているので、貴族たちの動きを把握しようとしてるんです」
「……王位継承権争い?」
「はい。今、この国で王位継承権を持っているのは二人。第一王子のジェラルド様と第二王子のリュザート様です。この二人を担ぎ上げて、貴族たちが日々、牽制し合っています」
「第二王子が継承権……?」
この国の王や貴族の当主は、基本的にはその家の長男がなるものだと記憶しているのだが……
「あぁ、第二王子の実母が第一王妃で、第一王子の実母が第二王妃なんですよ」
「普通は第一王妃が第一王子を産むものでは……?」
「いやぁ、それが未だに貴族たちの議論の的らしいですよ〜、第一王妃が中々子供を産めなかったから王様が同時に第二王妃にも手を出してしまったとか、第二王妃が王様を誘惑したとか……」
「なるほどねぇ……まぁ、俺には関係のない話だな」
そんな言葉を交わしていると、今日泊まる予定の村が見えてきたのであった。
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