第16話 今後の予定


 朝起きると、いつも通り隣のベッドでウォルクが眠っていた。

 わざわざ此方の部屋に戻ってこんでもいいのに……


 取り敢えず、ウォルクが起きる前に、この街を出る時のために荷物を整理しておくか……


 丁度、荷物の整理が終わった頃に、ウォルクはベッドから身を起こした。



「ふぁあ〜、おはよう、ゼオン」


「あぁ、おはよう、ウォルク」



 暫く雑談するが、特に変わったことは言ってこない。


 まさか、コイツ……昨日のこと、バレてないとでも思ってんのか?



「———そういえば、昨日はお楽しみだったようだな。ウォルク」


「えっ……」



 ウォルクが俺の言葉を聞いて硬直する。



「な、なんのことかなぁ……?」


「だから、お前とサラが……」


「うわぁああっ!?」



 ウォルクが急に叫び出す。



「おま、お前……なんでそういうことを平然と言えんだよ! まだ11歳だろ!?」


「お前らと3つしか歳は変わらないだろ」


「……そうか? そういうものか?」


「……そういうものだ」


「まぁ、お前は前から歳上みたいな雰囲気があったから、不思議なことじゃないか……」


「えっ、そ、そんなことないと思うよ!?」


「なに動揺してんだ……?」



 コイツ、鋭いな? これが大人になった男の勘だとでもいうのか!?



「まぁ、それはさておき、お前とサラに話したいことがあるから、サラが起きてくるまで待とうぜ」


「……おう、分かった」




   ♢



 四時間後———。


 サラが中々起きてこないので、俺たちは恒例の宿の裏庭で剣での手合わせを行っていると、サラがようやく姿を現した。



「ごめん、ごめん遅くなったよ〜、寝坊しちゃってね〜」


「そうか……」



 サラが焦った様子で走ってきた。



「今日は話があってな……」


「———ああ」「うん」



 俺がそう話を切り出すと、ウォルクとサラが真剣な表情になる。



「……お前らは『夜明けの君主』に入ることになったことだし、俺はここらでパーティーから抜けようと思ってな」


「なるほどな」「やっぱり……」


「……驚かないのか?」


「ガルフさんが俺たちをクランに誘ってきた時に、予想してたんだよ」


「へぇ……まぁ、そんな感じだ」


「分かった。元々、お前がそう言ってきたら止める気は無かったしな……」


「……いいのか?」


「ああ。これから俺たちは『夜明けの君主』に入るからな。先輩冒険者と一緒にパーティーを組ませてもらえるしな……お前ほど強い人は居ないだろうがな」


「そりゃどうも」


「ゼオンくん。今日、街を出るつもりなの?」


「そのつもりだったが、今思えば知り合いに報告する必要があるからな……多分、明日になりそうだ。それに、何処に行くかもまだ決めてないしな」


「無計画だったのかよ……」


「ゼオンくんはAランク冒険者だから、何処ででもやっていけるでしょ……多分」


「そこは自信持ってくれよ……」



 ということで、知り合いへの報告をすることにした。

 昼食を宿の食事で摂ったが、ノーラさんは宿の手伝いで忙しそうだったので後回しにして、孤児院へと向かう。

 俺が街を去ることを伝えると、子供たちが非常に悲そうな顔をしていたので、暫く相手をしてから院長のサーナさんに任せてそのままギルドへと向かった。

 目的は勿論、ガルフさんへの挨拶だ。



 ———そのつもりだったのだが、俺はギルドの三階の応接間でソファーに座って、ギルドマスターと向かい合っていた。


 ギルドに到着して中を見渡してもガルフさんが見当たらないからギルドを出ようとしたんだけど、受付のおっさんに呼び止められて、この部屋に案内された。それでこの状況なわけだ。


 俺、ギルドマスターに呼び出されるようなことした覚えないんだけど……?


 色々考えを巡らしていると、ギルドマスターが話しかけてきた。



「急に呼び出してすまないな」


「いえいえ、暇だったんで問題ないですよ」



 普通に暇じゃなかったけどね! これは様式美なんだ。目上の人にこう言われたら、仕方ない……



「まずお前に知って欲しいのは、お前がAランク冒険者になったことは世界中、全ての各支部のギルドマスターに通信用魔道具で通達されてるということだ……本来ならSランク冒険者が誕生した時にすることなんだが、お前の年齢でAランクとなったのは極めて重要度の高い案件だと思ったんでね」


「そうなんですね……」


「今回の本題だが……この通達後、お前に指名依頼が届いた」


「誰からですか?」


「ここから東に馬車で一週間ほどの街の冒険者ギルド支部のギルドマスターだ」


「……どんな依頼ですか?」


「ああ、それは———」



 ギルドマスターが俺への指名依頼の内容を話し終える。



「これは強制ではないし、断っても罰則はない。俺としても、Aランク冒険者のお前にこの街から離れて欲しくないしな」


「……いえ、やります」


「そうか……冒険者は自由だからな。引き留めはしないよ」


「ありがとうございます」



 そう言うと、俺はソファーから立ち上がって扉の前に行くと、ギルドマスターに一礼して応接間から退出した。




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