第15話


「おし! これが新しいギルドカードだ……お前が初めてギルドに来た時はAランクになるなんて想像すらして無かったよ」


「俺も初めて見た時、すぐにおっさんは受付を辞めさせられると思ってた」


「くっ、悪かったな、受付がおっさんで」



 俺はウォルクとサラがギルドを出た後、受付でギルドカードをAランクの物に更新してもらった。

 因みに、ギルドカードはランクによって色が変化する。Aランクの場合は金色だ。



「———ガルフさん」


「なんだ? ゼオユーラン」



 正式にAランク冒険者となった後、ギルド内で冒険者たちにドラゴン討伐時のことを褒められて何となく恥ずかしい思いをしていると、ガルフさんの姿が視界に入った。聞きたいことを思い出したので、話しかけた。



「ちょっと聞きたいことがありまして……」


「何でも聞いてくれ」


「あのー、ガルフさんって他人のステータスを見ることが出来たりします?」


「おぉ……場所を移そうぜ」


「分かりました」



 俺とガルフさんは人気のないギルドの訓練場の隅に移動すると、徐にガルフさんが口を開く。



「まぁ、特に隠していることでもないんだが、俺の左目は魔眼なんだよ」


「……ガルフさんの目が光っている時があったので、何となくそうじゃないかとは思ってました」



 魔眼———。

 それは生まれつき高い魔力を持つ者の目にごく稀に宿り、特殊な能力を発動出来る。


 モノによって色が異なるため、基本的にオッドアイの者は魔眼持ちである。


 魔眼は魔力を使用してノータイムで発動できるため、戦闘系の能力の魔眼を持った過去の人物の内の何人かは歴史上、有数の強者として知られている。



「ガルフさんの目がオッドアイじゃないのは、元々、魔眼の色と瞳の色が一致していたからなんですね……」


「そういうことだ。だが、俺の魔眼はレベルを見るモノだから、ステータスまでは見えないぜ」


「なるほど……」


「俺が初めてお前を見た時、お前の年齢で異常にレベルが高かったから、クランに誘ったってわけだ……今では圧倒的に負けているがな」



 あ、今の俺のレベルも見えてるのか。



「お前のパーティーメンバーを勝手にクランに誘って悪かった……」


「謝らないでいいですよ。どっちにしろ、そろそろこの街を出ようと思ってましたから」



 ガルフさんが急に頭を下げて謝ってきたが、俺は元々、ラキートの街から離れるつもりだった。

 ずっと同じ場所で冒険者をするのも悪くないが、一定の場所に留まるのは俺の描く理想の冒険者像じゃない気がしていた。

 ただ、ウォルクとサラにわざわざ別れを告げてまでやるつもりもなかったからな……



「そうか……まぁ、お前の強さなら何処ででも上手くやっていけるだろう」


「ありがとうごさいます」



 俺はガルフさんとの話を終えると、ギルドを出る。

 ふと上を見ると、空には星が散らばっていた。

 ……俺、思ったより長く寝ていたんだな。


 星空の下、もう慣れきったギルドから宿への道を歩いていった。




   ♢



「あっ! ゼオンくんっ!」



 宿に入るとすぐにノーラさんが俺の方へと走り寄って、そのまま抱きついてきた。



「……怪我はない?」



 そう言って俺の顔をじっと見つめる。



「うん。俺は光魔法が使えるから、大丈夫だよ」


「良かった……」



 ノーラさんはホッとした様子を見せると、ようやく離してくれた。



「そういえば、ウォルクとサラは?」


「二人ならさっき、部屋に戻って行ったよ」


「ふーん」



 なんか今日のアイツら怪しいな? ……まぁいいや。



「食事はどうします?」


「あー……、頂くよ」



 そういえば、俺、寝ていたせいで昼食もとってないわ。


 今日の戦いの疲労もあってか、まだ睡眠が必要なようで、食事を済ませるとすぐに眠気が襲ってきたので、早めに部屋に戻ることにした。



「……あっ、んんっ……。あぁっ……ん……ウォルク……」



 はい。今、俺は部屋に戻ってきました。

 部屋にウォルクが居ないなぁ……と思ったところなんですけど、隣の部屋からサラの悩ましい声が聞こえてきます。

 しかもご丁寧にウォルクの名前まで出してますよ。


 まぁ、あの二人がそんな関係になるのは確定事項だったけど、早くね? 年齢的に……確かアイツら今、14歳だろ? いや、この世界だとそうでもないのか?


 だからアイツらドラゴン討伐後、なんかソワソワしてたんだね。


 まぁいいや、寝よ。


 俺は隣の部屋から聞こえてくる声は気にしないで寝ることにした。



 スヤァ……



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