第63話 暴力性相互理解

 



 幼い頃、私はまだこの家に希望を抱いていた。


 真恋が生まれるまでの1年間は、一応は愛されていたのだろうから、その頃の刷り込みみたいなものかもしれない。


 ともあれ、どれだけ裏切られても、どれだけ蔑まれても、どれだけ無視されても、お父さん、お母さんと縋り続けたわけだ。


 考えてみると、あの頃が一番辛かったのかもしれない。


 諦めてみれば、あいつらは“そういう生き物だ”と割り切ることができて、悲しむ必要もなくなった。


 だけど同時に希望も失った。


 小学生の頃には、私の人生はすでに閉ざされていたのだ。




 そんな真っ暗な場所で膝を抱える私の隣で、真恋はいつでも輝いていた。


 私が持たない全てを持って。


 でも、きっとそんな真恋にだって、日々ストレスを感じるようなことはあったに違いない。


 過剰な理想を押し付けられて、勉強も、運動も、常にトップクラスの成績を求められる。


 だけどそんなストレスのはけ口に、私が居た。


 倉金真恋は人格面でも優れた人間だ。


 けれどそんな彼女が、誰にも見られずに、そして誰にも咎められずに、サンドバッグにできる存在。


 それが私だったはずだ。


 ああ、なんて完璧な家庭図だろう。


 母は父より瀬田口を愛していて、瀬田口との子供をこの家の人間として残したかった。


 父との間に生まれた私は汚点だった。


 そして父も、情けない自分から生まれてきた真恋が、血を引いているとは思えないほど優秀な人間に育っていく。


 誰も損しない。


 誰も悲しまない。


 あまりに完成されすぎたロジック。


 最後は曦儡宮の贄として捨てれば、跡形も残らない。


 なのに。


 なのにどうして――




「おぉぉぉおおおおッ!」




 強い気迫(のようなもの)とともに振り下ろされた刃は、こんなにも迷いの中でぶれているのだろう。


 交差させたドリーマーで受け止める。


 姉妹は互いの命を奪わんと鍔迫りあう。


 でもこれっぽっちも怖くはなかった。


 彼女の殺意が、私を殺せるとは思えなかったかr.あ




「私は、お前が羨ましかった」


「は?」




 思わず声が出た。


 それぐらい、ふざけた言葉だった。




「私はあの家で育ってきたが、あの家の子供じゃないんだ。母は私に繰り返しこう言っていた。あなたは瀬田口との間に生まれた子供。あの人を父だと思うのは上っ面だけでいい、と」


「ふーん」




 刃をずらす。


 力を入れていた真恋の体勢が崩れる。




「そんなことを、子供に言う必要などッ!」




 だが彼女もそれぐらいは読んでいたのか、前のめりになる勢いを利用して、右後方へ一閃。


 刃は、体をのけぞらせた私の胸元をかすめていく。


 そのまま私は後ろにくるりと宙返りすると、着地。


 同時に真恋は私の懐に入り込み、強烈な斬り上げを放つ。


 私はタイミングを合わせ、ナイフによる刺突でその軌道を逸らすと、近距離でブラッドピルエットを発動――プロペラのように回転する刃が、ゆっくりと相手に迫る。




「あの女のエゴが大嫌いだッ!」




 真恋の振り下ろしが、ガギンッ! とそれを叩き落とした。


 そして彼女の刃がオーラのようなものを纏う。


 斬撃が“飛ぶ”ようになる例のスキルを使ったらしい。


 さらに彼女はその場で分身を生み出し、一斉に斬撃を私に放つ。


 対するこちらも、連撃――フルムーンで迎え撃った。




「で、真恋はどう思ってたの? あの男のことを父親だとは思わなかった?」


「私の父は一人しかいない!」




 スキルによる応酬が落ち着くと、今度は純粋な身体能力の比べ合いがはじまる。


 剣道歴の長い真恋の攻撃は鋭く、無駄がない。


 けれどそれが実戦で有利に働くかというとまた別の話だ。


 会話で集中力が途切れているせいもあるんだろうけど、やけに攻撃が真っ直ぐで単調だ。


 私でも捌ききれるぐらいに。


 剣戟の音を鳴らしながら、私は彼女に問いかける。




「綺麗事だね。割り切れるなら最初から悩まないでしょ」


「っ……!」


「心のどこかでは、瀬田口が父親だって意識もあるんだ。わかるよ、あいつスタイルいいし顔もいいもんね」


「そのような理由では!」


「でもあっちが父親だと思ったほうが自然・・じゃん」


「く――!」




 真恋の悩みはそこにある。


 どれだけ頭で瀬田口は父親じゃないと主張しても、家に帰れば自分とは似ても似つかない、頼りなさそうな父の姿がある。


 妻に裏切られているとも知らずに、その妻の尻に敷かれるみじめな夫が。


 その姿と倉金真恋は、あまりにかけ離れている。


 探したって、血の繋がりを見つけ出すのが難しいぐらいに。




「でもさ、真恋は贅沢だよ」


「だとしても!」




 力強い一撃が、私のナイフを弾いた。




「依里花は私に無いものを持っている!」




 その隙を狙ってくる真恋。


 私はソードダンサーを用いて高速移動し、避けた上で彼女を翻弄する。




「だからお互い様だって? ははっ、面白い発想だね!」


「ちっ、ちょこまかと!」


「そんな考えが思い浮かんだり、変なことでうじうじ悩んだり――」




 そして最後に背後を取ると、素早く、力強い刺突で後頭部を狙った。




「なんでそうなるか教えてあげよっか?」


「そんなものに答えなどあるものか!」




 真恋は回転し、体を捻りながら攻撃を回避。


 そのまま振り返り、鋭い突きで私の顔面を狙う。


 後ろに目が付いてるのかって言いたくなるような動きだ。


 首を傾ける。


 刀が耳を掠める。


 でもやっぱり怒りに任せたその一撃は、どうしようもなく直線的で読みやすい。


 今の私には、笑みさえ浮かべる余裕がある。




「恵まれてるからだよ」




 真恋が手首をひねると、チャキッ、という音が成り、刃が寝る。


 そして真横に振り払うような斬撃。


 即座にしゃがんで回避。


 膝のバネを使い、一気に相手の懐に飛び込む。




「人間、追い詰められたら変なこと考える余裕だってなくなるんだから」




 私にはその経験が何度もある。


 本当は心が落ち着く場所であるべき家や学校で、何度も。何度も。




「そんなはずは無いッ!」




 私の言葉を否定するように振り下ろされる斬撃。


 パワーでは真恋の方が上だ。


 だが適切な場所、高さ、そしてタイミングで刃をぶつけてやれば、真正面からでも、片手で刀を受け流すことはできる。


 さすがに戦い慣れしているからか、弾かれたことによる動揺は一瞬だ。


 でもその一瞬ですら命取りになる。


 もう一方の手で真恋の肩を突き刺す。


 この位置では回避は出来ない。


 血が噴き出し、真恋は顔をしかめながら後退する。


 まだだ。


 私はさらに前に踏み込み、彼女との距離を詰めた。


 もちろん向こうも斬撃にて応戦するも、腕の負傷により思ったように力が出ない。


 つまり、より弾きやすくなったということ。


 何度斬りかかっても、なぜか弾かれてしまう――その状況に焦れる真恋を見て、私は楽しむ。




「羨ましかった? ルーツがはっきりしてるから? はっ、ふざけないでよ。私の地獄をわかったつもりになって、勝手に同レベルだと思わないでッ!」




 怒鳴り付ければ、彼女の体はわずかに震え、その剣筋に迷いが生じる。


 弱い。


 こんなにも弱かったのか、私が羨望し続けた真恋という人間は。


 あれほど恵まれた人生を送ってきても、こんな弱みを私に見せるのか。




「お前の悩みはちっぽけだ! お前が私に与えた苦痛に比べれば、ゴミにも及ばないほどどうでもいい!」




 刀を弾き、一歩前に出る。


 真恋の表情に焦りが浮かんだ。


 だがそろそろスキルのクールタイムが完了する。


 さらに前に踏み出そうとすると、見えない“殺気”が近づくのを感じた。


 体をひねる。


 “新月”のスキルによる攻撃が、私の肩をかすめ、わずかに血が飛んだ。


 それを好機と見たか、強く刀を握り、袈裟懸けに刀が振り下ろされる。




「それでも私は苦しいんだッ! 貴様が――“まっとうな子供”が常に私の目の前にいるからッ!」




 ここは後ろに下がるしかなかった。


 リーチは刀の方が長い。


 できれば距離は取りたくなかったんだけど。




「なら私が死ねば苦しみから解放されるとでも?」


「そうだ! 少なくとも比べる必要は無くなる!」




 身勝手な理屈とともに、突っ込んでくる真恋。


 私に殺意が向けられる。


 だけどそれすらも弱い。


 自分で言うのもなんだけど、集堂くんを殺したときの私のほうがよっぽど鋭い殺気を出せてた。


 突進から繰り出されるのは、強烈な斬り上げ。


 本来なら回避すべきところ。


 そこを私は、あえてスキルで受け止める。


 大きな金属音が鳴り響き、散った火花が両者の顔を照らす。


 わずかに押し負けたか――柄を握る両手が強く痺れた。




「それは私のセリフだよ。あんたさえいなければ、私は普通の人間でいられたはずなのにッ!」




 でもそんなものはお構いなしにナイフを振るうと、真恋の前髪が何本かはらりと落ちた。




「それに今さらすぎるんだよ。起きてしまった過ちは正されない! もし私が死んで真恋だけが戻ったら、あの両親は喜ぶ。もし真恋が死んで私だけが戻ったら、あの両親は怒り狂って私を殺そうとする! 時間は戻らない! 私たちがもう正常になることはないッ!」




 そして私もそのつもりはない。


 おそらく、両親だって。


 仮に真恋が正常に戻りたがってるとするのなら、それは間違いなく独りよがりの夢物語だ。




「ならばどうすればいいッ!」


「知るもんか、そんなもん自分でどうにかしろッ! 私より恵まれてるんだからさあ!」




 スキルのクールタイムが回復する。


 再びスキルとスキルによる応酬が始まった。


 感情的になった真恋は、最も強力な技である“十六夜”を使うことをためらわない。




「ならば、一体誰なら知ってるというのだ!」




 それはあまりに速く、強力な“突き”だ。


 大きく余裕を持って横に避けたつもりだった。


 けれどその“余波”が私の右腕を抉る。


 ヒーリングで治せばそれまでだ。


 でも真恋は回復するという考えすら頭に浮かばない――あるいは泥仕合にするつもりは無いようだ。


 優しいお姉ちゃんである私は、そんな彼女のルールに従って傷を放置する。




「誰なら導いてくれるんだ! 父は欺瞞に塗れ、母は不貞に溺れ、瀬田口は信仰に酔っている! 誰一人として、私のことなんて見てくれやしないじゃないか!」


「だから私に縋るって? 私こそあんたのことなんて見てない! どうでもいい! なぜならッ!」




 強撃は強撃で。


 連撃は連撃で。


 対応するスキルで相手の技を潰していると――真恋はやけに湿っぽい目つきをして、生ぬるい声で言った。




「“嫌い”――だからだろう?」




 鳥肌が立った。


 反射的に私は後ろに大きく飛び退く。


 とにかく本能的に、真恋と距離を取りたくて仕方なかったからだ。




「……チッ」




 ああ、わかっちゃったよ、そういうことか。


 父は、自分から生まれたとは思えない優秀な娘を愛した。


 母は、不倫相手との愛の結晶を愛した。


 そして瀬田口は、戒世教で上り詰める道具として彼女を愛した。


 確かにそこに愛はあった。


 だけど、誰一人として倉金真恋を見ていなかったのだ。


 誰でもいい、私を見てくれ。


 そう願ったとき――まっすぐに倉金真恋という人間を嫌う、私の存在に気づいてしまったんだろう。




「そういう理由ならさ、日屋見さんに頼ればいいのに」




 足を止め、呆れ顔で吐き捨てる。


 すると近くで観戦していた日屋見さん本人が答えた。




「私では駄目なんだよ」




 目を細め、ため息を挟んで繰り返す。




「たとえ血がつながっていたとしても、出会うのが遅すぎたんだ」




 確かに、高校で出会って1年も経ってない相手を“家族”と認識するのは無理があるか。


 理解はする。


 でも――




「依里花先輩でなければ」




 さんざん今まで私を苦しめてきた嫌いな相手にそこまで頼られるの、納得はしたくないな。


 これ付き合う必要ある?


 ほら、令愛とかネムシアも心配そうに見てるし。休まなきゃいけないのに。


 いつも笑ってるギィは『何で殺し合ってるんだろこの二人』みたいな困惑顔してる。


 私だってそうだよ。


 もしここで真恋の悩みを解消できたら、令愛が褒めてくれるとかなら頑張れるけど。


 褒めてくれるかな……まあ、始まっちゃった以上は途中で止めらんないし、そういう明るい未来を想像していこう。


 今の私にならそれができる。




「ああ、まったく――家族に恵まれないよね、私って」




 頭を抱え、やれやれと左右に首を振る。




「しかもさ、そっちから誘ってきたくせに、いくら話しても平行線とはやってらんないよ」


「私は答えを知らない」


「しかも意地張ってばっかでさ」


「張る意地もないんだ!」


「それが意地だって言ってんの。真恋が望む答えなんてこの世に無いんだよ。それを認めるか、認めないかの二択でしかない」


「違う……違う……私はッ!」


「だから、まずその意地を叩き潰す。復讐も兼ねてね」




 私は前に飛び出し、一気に真恋との距離を詰めた。


 “飛ぶ斬撃”による牽制が接近を阻む。


 しかし速度は緩めない。


 スピードを維持したまま滑空し、最低限の体の捻りだけで回避する。


 しかしある程度まで距離が詰まると、“望月”による密度の高い連撃が私を襲う。




「これならば避けられまい!」




 今の真恋の最大の弱みは、心のぶれだ。


 私はそこを狙って、あえて斬撃の巣に真正面から突っ込んだ。




「な――馬鹿な、そのような無茶を!」




 切り刻まれ、血まみれになりながら、しかし最低限のダメージで切り抜ける。


 これが最速で真恋に近づく方法だった。


 そして傷だらけの私を見る彼女の瞳は、迷いに揺れている。


 あ、もしかして本気で殺すつもりはなかったから焦ってるとか?




「フルバーストッ!」




 なおもナイフの間合いには遠く――でも十分近距離と呼べる位置からの、大量投擲。


 今度は真恋が回避不能の攻撃を受ける番だ。


 しかし彼女に真正面からそこに突っ込む度胸も、能力も無いだろう。


 そしてタイミング的に回避も不可能。


 ゆえにそれなりの威力を持つスキルで迎撃せざるを得ない。


 見えないだけで威力は控えめの新月、威力は高いが単発の破月では対応は不可能。


 かといって切り札である十六夜を使うわけにもいかない。


 ここで使うなら、連撃である幾望月――




「幾望月で撃ち落とすッ!」




 よし、読みどおり。


 このスキル使用は防御のためのもの。


 フルバーストを放ったあとの私はフリーの状態になる。


 真恋が投げナイフの対処をしている間にソードダンサーで背後に周り接近。




「いくら後ろを取ろうともッ!」




 ここで振り向きざま、破月による強烈な斬り上げ――でも読めているのなら、刀の射程ギリギリで回避ができる。


 刃先が私の鼻先を掠める様を見て、真恋の目が見開かれる。


 彼女とて今ので攻撃が読まれていたとわかったはずだ。


 だから多少強引な方法で、私の次の手を潰そうとしてくる。


 仮に十六夜を使われた場合、今の状態で私が反撃する方法はない。


 こちらもメテオダイブを使えば相殺できるかもしれないけれど、あのスキルの欠点は“落下”しなければならないことだ。


 地面に足をつけた状態では発動条件を満たせていない。


 一方で――次の十六夜さえ切り抜けてしまえば、大技を放った直後の真恋は無防備だ。


 しかし、無傷で切り抜けるには真恋から大きく距離を取って回避するしかない。


 そうなれば反撃までの間に彼女は体勢を持ち直す。


 この状況、私が有利に踏み込むのに必要なのは――十六夜の威力を落とす・・・ことだ。




「ならば十六夜でッ!」




 真恋がスキルの発動準備の体勢に入る。


 そこで私は手のひらをかざし、魔法・・を放った。


 ファイア――私たちの眼前で、激しく炎が燃え上がる。




「炎だとっ!?」




 もっとも、物理攻撃に特化したステータスをした私たちが放つスキルに比べれば、大した威力は無い。


 だが、人間……というより動物の本能として、根源的に炎への恐怖がある。


 魔法を使えるようになった今でも、私だって何だかんだで炎は怖い。


 戦いの中で慣れていれば違うのかもしれないけど、そういう魔法を使ってくる壊疽に私たちは遭遇していないはずだ。


 ましてや、心の準備も出来ていない、突然の出来事。


 そのときわずかに――本当にわずかに、真恋の動きに動揺が生じた。


 なおも直撃すれば私を軽く殺せるだけの威力はあるけれど、これで回避に必要な“退避距離”は短くなった。


 そして私が、腕一本を捨てる覚悟ができていれば――その距離はさらに縮まる。


 刺突が放たれる。


 負傷して邪魔だった右腕が吹き飛ばされる。


 舞い上がる腕を見てか、後ろの方から令愛とネムシアの声が聞こえた。


 心休まらない光景を見せてごめん、あとで謝るから。


 真恋の視線も一瞬だが腕に向けられる。


 さらに隙が大きくなる。


 前へ踏み込み、残った左腕で真恋の首を狙った。


 彼女は至近距離で破月を放つ。


 私はその斬り上げ・・・・にパワースタブで対応。


 威力は真恋の方が上だ。


 刃と刃がぶつかり合い、私はわずかに弾き飛ばされる。


 抗わない、踏ん張らない。


 体がふわりと浮かぶ。




「しまった――」




 気づいたときにはもう遅い。


 すぐさま私はメテオダイブを発動。


 体は急降下を始め、真恋――からちょっと横にズレた部分を狙う。


 彼女は慌てて、残る新月と三日月のスキルを使い止めようとするけれど、その程度でメテオダイブが止まるはずもない。


 着弾。


 刃は真恋の肩を掠め、その衝撃波で彼女の左腕を消し飛ばした。


 肩はかなり深くえぐれており、肺までダメージが達したのか、真恋が口から血を吐き出す。




「依里花あぁぁぁぁああッ!」




 もはやなりふり構わず、しゃがれた声で叫び、刀を振り回す真恋。


 私はその刃を左腕の前腕で受け止める。


 斬撃は骨を断ち切れずに止まった。


 両者ともに腕は一本ずつ。


 だから私は、大きく口を開いて、まだ残っている真恋のもう一方の二の腕に噛みつく。




「また噛みついて――ッ!?」




 力いっぱい。


 ステータスが上がってるからって無茶をして。


 肉だけじゃなく、骨まで食いちぎるつもりでガリ、ゴリ、と強く噛んだ。


 そして口いっぱいに肉と骨を含んで、引きちぎる。




「んべっ。まっず」


「なんと……滅茶苦茶なことを……ッ!」


「無茶しないと生きていけないんだよ。そういう世界に私を落としたの、あんたらでしょ」




 真恋の右腕から、だらんと力が抜ける。


 私はその手首を掴むと、自分の方に引き寄せる。


 そして真恋の腹あたりを、足裏で強く蹴り押した。




「これで――」


「まさか、それを……!?」


「私の、勝ちだぁぁぁああッ!」




 ブチブチィッ! と筋が千切れる感触を手のひらで味わう。




「が、あ、ああぁぁあああああッ!」




 さすがに腕を引きちぎられると相当な痛みがあったのか、真恋は目を充血させながら、口を大きく開いて叫んだ。




 ◆◆◆




 倉金真恋が瀬田口と初めて会ったのは、小学生になったばかりの頃だった。


 母親がいつもと違う服と化粧をして、やけに浮かれていたのをよく覚えている。


 家に父と依里花を残して、なぜかレストランに連れてこられた真恋。


 母からは友達と食事をすると聞かされていたけれど、そこにいたのは長身の、見知らぬ男だった。


 笑みを浮かべて見下ろす彼を始めた見たとき、真恋は生理的な嫌悪感を覚えた。




『紹介するわね、この人があなたのお父さんよ』


『違う、お父さんはお父さんだよ』


『いいえ、あの人は本当のお父さんじゃないの。真恋の父親はこの人だけ。私が本当に愛してるのもこの人だけ』




 そう語る母の顔を見たとき、なんだか胸がもやっとした。


 母は父を愛しているのではないのか。


 愛しているから、夫婦で、家族なのではないか。


 幼いながら、そんな疑問を覚えた。




『よろしくな、真恋。俺のことはパパって呼ぶんだぞ』


『そうよ真恋、この人のことはパパって呼びなさい。あとこの人と一緒にいるときは私のこともママって呼ぶのよ』


『どうしてそんなことをするの?』


『私たちが本当の家族だからよ』


『そうだよ真恋。この3人でいるときだけが、本当の家族の時間なんだ』




 何を言っているのか、真恋にはさっぱりわからなかった。


 けれど一ヶ月に一度ほどのペースで会うたびに同じことを言われ、言うことを聞かないと母の機嫌が露骨に悪くなるので、言うことを聞くしかなかった。


 パパ。


 ママ。


 二人をそう呼ぶたびに、心の中にある何かがすり減っていく気がした。


 そして食事を終えて、家に帰る。




「おかえりお母さん、真恋。ご飯はおいしかったかい?」


「ええ、とても。そうよね真恋」


「うん」


「家のことを任せてしまってごめんなさいね、お父さん」


「これぐらいどうってことないよ」




 家に帰ると、母は母の顔をして、父と平然と話した。


 そして真恋もお母さん、お父さんと呼ぶ。


 安心した。


 でも心のどこかで、『あの人は本当のお父さんじゃないんだ』、『ここは本当の家族がいる家じゃないんだ』と考えてしまっていて。


 瀬田口と出会ったあの日から、この家は真恋にとって心が休まる場所ではなくなった。


 どうして自分はお父さんの子供じゃないのか。


 でも、どうしてお父さんは、自分の子供をあんなにひどい目に合わせているのだろう。


 お母さんはわかる。


 依里花が瀬田口の子供じゃないからだ。


 でも、その感情を理解してしまう自分も嫌だった。


 いつからだろう。


 真恋を取り巻く世界が、何もかもが歪んでしまったのは。


 そんな中で彼女が生きていくには、もはや言われるがままに、全てに身を任せるしかなかった。


 期待に応え、助言に従い、敷かれたレールを歩く。


 そうするとみんなが喜んだ。


 みんなが真恋を称賛した。


 明らかに間違っているとわかっているのに、周囲の全ての人はそれを正しいと褒め称える。


 何が正しくて、何が間違っているのか。


 真恋にはすっかりわからなくなっていた。




 そんな中、真恋は小学四年生で剣道と出会うことになる。


 学校の帰り道、無意味と知りながら、いつもと違う道を通ってみた日があった。


 そこにちょうど、道場があったのだ。


 一心不乱に竹刀を振るその姿を見て、その真っ直ぐさを見て、真恋は心が躍った。


 そして珍しく、彼女は自分から剣道をしたい、と親に告げたのだ。


 もちろん母は難色を示した。


 父も乗り気ではなかった。


 けれど瀬田口との食事会を経て、彼が『いいんじゃないかな』と言ったので、あっさりと真恋は道場に通うようになった。


 最初は純粋な憧れだった。


 けれど次第に、無心で竹刀を振っているその時間だけは何も悩まないでいいことに気づき、没頭するようになっていった。


 元々才能のあった真恋は、すぐさま上達し、師範にも一目置かれる存在となる。


 中学に上がる頃には大会の上位を取ることも増えてきた。


 誰に言われるでもない、自分のために、自分自身で得た成果。


 いつの間にか剣道は、真恋にとっての心の拠り所となり、師範の口調を真似するほどに入れ込むようになっていた。




 そして中学3年生の冬。


 前年夏の全国大会で優勝を掴み、高校への推薦入学も決まっていた真恋は、夜まで鍛錬に没頭することも少なくなった。


 すでに道場に残っているのは彼女と師範だけ。


 すると真恋は師範にこう切り出した。


 『私と手合わせしていただけないか』、と。


 もちろん稽古ではなく、正真正銘の真っ向勝負で。


 今までそんな生意気なことを言おうという気にすらならなかった。


 だが高校入学を目前に控えた今、全国大会でも結果を残したことだし、一度ぐらいは願いを叶えてもらえるのではないか――そう思ったのだ。


 師範は少し悩んだ後に、あまり気乗りしない様子で承諾した。




 結果は言うまでもなく、師範の圧勝だった。


 真恋は、もちろん悔しがった。


 こんなにも力の差があるのか、と。


 だが、やはりまだまだ進むべき道は半ばなのだと、それを身をもって感じられたのが嬉しかった。


 そんな幸福感に浸っていると、師範はなぜか浮かない表情で口を開いた。




『倉金。私はやはり、お前の剣が好かん』


『え……?』


『確かにお前は強い。剣筋も整っている。だが外面が綺麗なばかりで、芯が無い』


『どういう……ことでしょうか』




 急転直下。


 幸せから奈落へ向かって放り出された真恋は、次の言葉で、さらなる絶望を突きつけられた。




『お前の剣は空っぽだ。このまま続けても、良い剣士なれるとは思えん』


『あ……』




 何も言えなかった。


 頭が真っ白になって、気づいたら防具を抜いて帰り道を歩いていた。


 意識が戻ってからも、何度も何度も師範の言葉が脳裏に響いた。


 そして繰り返されるうちに、彼の言葉が理解できるようになってきた。




『これがあなたの本当のお父さんよ』


『パパと呼んでくれ』


『僕の子供がこんなに優秀だなんて。ははは、本当に僕と血が繋がってるのかな』


『あの家に本当の家族はいないの。だから依里花は愛されていないでしょう?』


『あの哀れな男を父親と思う必要はない』


『僕は真恋のことがちゃんと好きだよ。依里花がああなっているのを見ればわかるだろう?』


『依里花を見て。お父さんそっくりでしょう。よかったわね、ああならないで』


『怖がることはない。曦儡宮様の遺伝子を引き継ぐことは光栄なことなんだ』


『そうよ。あなたは周りの人間とは違う。選ばれた、優れた人間なんだから』


『よかったよ本当に、真恋が生まれてくれて。依里花は失敗作だってわかったからね』


『私たち、素敵な家族よね』


『俺たちは素晴らしい家族だ』


『僕たちは幸せな家族だね』




 剣は知っている。


 倉金真恋の全てを。


 だからそれを受け止めた師範は理解したのだ。


 思えば――依里花はとっくに、そんなことを知っていた。




『お前たちは全員ゴミだ』




 確かまだ小学生だった頃、吐き捨てるように彼女が言った言葉。


 何かに耐えかねて、その後どんな罰を受けるか理解した上で、それで言わずにいられなかった言葉。


 それが全てだ。


 素敵で、素晴らしくて、幸せな家族。


 彼ら・・は度々そう口にする。


 それは、倉金家という集合体が、家族として破綻していることを知っているからだ――




 その日以降、真恋は道場に通うのをやめた。


 高校に入ってからも剣道部は続けているが、前のように打ち込めているかというと、答えはノーだ。


 竹刀を振るたびに、師範の言葉が頭に響く。


 それでも彼女は優秀で、部長や顧問からその実力を認められ、将来有望だと褒め称えられる。


 その言葉すら、彼女にとっては呪いのようなものだった。


 剣道は真恋にとって、唯一心安らぐ聖域。


 しかし今はもう、そんな居場所すら無い。


 どこへ行っても、“家族”という毒がついて回る。




 ◆◆◆




「ぁ……」




 仰向けでぶっ倒れた真恋に馬乗りになって数十秒。


 彼女は、ようやく小さくうめいた。


 薄っすらと開いた瞼。


 うつろな瞳が私を捉える。




「やっと起きた」


「う、うぅ……っ、私、は……」




 両腕を失った上に私に乗られた真恋は、もはや立ち上がることすらできない。


 というか普通の人間なら、出血しすぎてとっくに死んでそう。


 千切られた左腕の切り口とかグロいことになってるし。




「腕引きちぎられて何十秒か失神してた」


「数十秒……あれが……」


「走馬灯でも見た?」


「……ああ、見た」




 本当に見たんだ。


 というか実在するんだ、走馬灯。




「私は……負けたんだな」


「あんな体たらくじゃね。でもわかってたんじゃないの? あんな頼み方しといて、真恋が勝ったら何も解決しないわけだし?」


「負けたくて、頼んだとでも……?」


「だと思ってたけど。結局さ、真恋は認めたくなかっただけなんだよ」


「なにを?」


「まずお母さん。不倫して子供まで作った挙げ句、その子供に真恋なんて名前を付けちゃう痛い人。次にお父さん。薄々不倫には気づいてたくせに、現実逃避して自分の子供を徹底的にいじめる情けない人。最後に瀬田口。不倫しまくって色んな人の家をめちゃくちゃに壊した挙げ句、それも曦儡宮様のためとか言って悦に浸ってそうなナルシスト。クズの特売してんのって言いたくなるぐらいどうしようもないやつらばっかり。こんな人間のこと、親だとは思いたくないよね」




 私も同じだ。


 でもどんだけ拒否っても、私があの二人の子供であることは変わらない。




「そんな単純な話では……」


「単純な話なんだよ、負けたんだから認めてよ。真恋の悩みは、難しくもなければ複雑でもない。単純明快で馬鹿馬鹿しい話なの」




 この期に及んで悩ませるつもりはない。


 真恋は負けた。


 だから私に従ってもらう。




「ならば……仮にそうだったとして、貴様はどう答えを出す?」




 私は血の滴るドリーマーを、前に突き出す。


 その刃には、反射した真恋の顔が写っているはずだった。




「見てよこの情けない顔。お父さんそっくり」




 少なくとも私は、真恋があの瀬田口みたいに、わかりやすく心根の曲がった表情をしたところを見たことは無い。




「私、集堂くんとか大木とか殺したけどさ、あいつら殺すときすっごく楽しかったんだよね。集堂くんのときはちょっと残念な思いもしたけど、後から考えたら、“集堂くんがいなくなった”って思うだけでこの世界で呼吸してるのが楽になるっていうか。なんで私、そんな人間になっちゃったと思う?」


「わからない」


「私が苦しむ様を楽しむ人間が、周りにいっぱいいたからだよ。私は鏡だったの」




 人は一人で育つわけじゃない。


 例えば、まっさらな赤子は、親を見て自我を芽生えさせていく。




「人格は周囲の環境によって形成されていく。親と子供も一緒だよ。そりゃあ身長とかスタイルとかは遺伝するかもしんないけど、“倉金真恋”を作ったのは瀬田口じゃない」




 真恋の、お父さんにそっくりな表情を見ればわかるはずだ。


 どれだけ顔のパーツが違っても、表情筋の動きが似てしまうと、それだけで親子だってわかってしまうものだから。




「あの救いようのないクズ両親だ」


「……そんな、理屈で」


「そこ、はっきりさせてほしかったんでしょ? あの家で苦しんできた私に」




 本当はこんな理屈すら必要は無い。


 お母さんと真恋が二人で食事に行ってたのは知ってたけど、あれで瀬田口と会いに行ってたっていうんなら、せいぜい月に1回ぐらいしか会ってないはず。


 色んな家庭はあるだろうけど、少なくともうちには家に毎日顔を合わせる“父親”が存在するわけで。


 その程度の頻度で瀬田口が父親、なんてことになるわけないじゃん。




「真恋はあの両親の娘で私の妹だよ。いくら悩んだところで、その事実が変わることはない。瀬田口がそこに入り込む余地なんて一切無い」




 まったく、なんでこんなわかりきったこと、わざわざ言わなきゃならないんだか。


 実は真恋って見た目ほど優秀じゃなかったりする?


 やっぱり私の妹だからかな。




「まだ納得できないんなら、もっと簡単な解決法教えてあげよっか」


「そんなものが、あるのか?」


「瀬田口を殺せばいい」




 見開かれる瞳。


 そんなにショッキングな話だったかな。




「ううん、どうせ殺すことは決まってる。そのとどめを刺すのを真恋がやればいい」


「恐ろしい……ことを言うんだな」


「そういう人間を作った原因の一部が何を言ってるんだか。てか全然恐ろしくないし。人肉食いながらのうのうと生き延びてるあいつらを殺さない方がよっぽど怖いよ」


「だが、単純明快で、わかりやすい。確かに――瀬田口がいなければ、悩む必要もないのか」


「これは真恋がまだ割り切れてないなら、の話だけどね。私に負けたんだから、全面的に私の言葉に従えっての」


「ほぼ納得できているんだ。だがまだ、頭の中に一割ほどこびりついて残っている。こそぎ落とすには、私の手で殺すしかないというのも納得できるほど、しつこい汚れだ」




 月1とはいえ、小学生の頃からだもんなあ。


 仕方ないとは思う。


 それはそれとして、負けたくせに言い訳してる真恋はムカつくけど。




「あとさ、あの両親から生まれたって事実は一生ついてまわるけど、その上でどういう人間になるかってのは私たちは決めることだと思うんだよね」


「どういうことだ?」


「真恋が何者にもなれないって嘆いてたのは、自分があの両親の子供だってことを認めてなかったからだよ。土台が無いと家なんて建てられないみたいな感じでさ、そこを見失ってたらどう生きていくかなんてわかるわけないし、どう変わっていけばいいかもわかんないじゃん」


「認めることで、見えてくるものもあるのか」


「前の私みたいに無力だと、流されるだけだったけどね。でも今は違う、幸運にも私は力を手に入れた。真恋に至っては、元からその能力があった」


「その力で、どうするんだ? どうしたら変われるんだ?」


「拳でぶっ飛ばす」




 私は至極真面目にそう言い切った。




「暴力は一番わかりやすい手段だよね。こっから脱出して普通の世界に戻れたら、あの両親の前で戒世教や瀬田口のことを全部洗いざらい話した上で、二人の顔面ぶん殴って縁を切ろうと思ってるんだ」


「豪快、だな」


「もちろん真恋にもその選択肢はあるよ」


「そうか……認めることができたから、距離を置くという選択ができるのか」




 大事なのは自分の現在地だ。


 私は最初からはっきりしていたから、一つの方向を見て走ることができたけど――例えば令愛は、大木や中見さんの件で葛藤があっただろうし、ネムシアもアドラシア王国の滅亡を受け入れるまでは迷い続けていた。


 そういう悩みって案外、誰でも持ってるものなのかもしれない。




「真恋も一緒にぶん殴る?」




 真恋は黙り込んだ。


 おそらく脳内でシミュレートしているんだろう。


 たぶん、自分が両親の顔面ぶん殴ることなんて想像したことなかっただろうしね。


 しばらくして計算が終わったのか、表情が変わる。


 頬がほころんで、何か救われたような――解放されたような表情に。




「答え、出たみたいだね」


「殴るかどうかは別として、正直に言ってみるよ。私が感じてきた苦痛を」


「いいんじゃない。あんだけかわいがってきた真恋から言われたら、さぞかしショックだろうし。何なら私のパンチより効くかもね」




 そう言って、私はお互いの体にヒーリングをかける。


 ちぎれた腕やえぐれた傷を元通りにすると、立ち上がり、手を差し伸べた。


 別に意識してやったわけじゃなく、気づいたら自然と手を差し伸べていた。


 そんな義理ないはずなんだけどな。


 もしかして真恋をぶちのめしたから、私も気持ちよくなっちゃってる?


 しかも真恋も真恋で、素直に握っちゃうし。


 立ち上がった彼女は、たぶん人生で絶対に私に向けることなど無いはずだった、爽やかな笑みを浮かべて言った。




「ありがとう」


「どういたしま――」


「姉さん」




 ……ん?


 今、真恋――なんて言った?


 えっと、姉さん、って言わなかった?




「その……両親と関係が途絶えるのなら、最後まで縁の切れない家族が依里花になるだろう。だから今後に向けて姉妹として関係修復することも考えて、試しに呼んでみたのだが――問題はあるか?」




 問題大ありだ。


 うわ、姉さんって呼ばれたことを脳が理解した途端に寒気がしてきたんだけど。




「いきなり姉さんはキモいって」


「私もそうは思っていた。正直、鳥肌が立ちそうだ」


「じゃあ言わないでよ」


「これもまた禊だと思ってな」


「私にとっても禊なんだけど!」


「そうだな。それに今まで私が依里花にしてきた仕打ち……学園に閉じ込められてから交わした対話程度で許されるものでもないか」


「いや、そこは別に気にしてないよ」


「そうなのか?」


「真恋を痛めつけてるとき、大木のときほど気持ちよくはなかったから。私の中で、真恋に対してある程度は復讐を果たしたってことになってるのかもね」


「復讐を終えれば普通の関係になれるものなのか?」


「さあ。私はなれそうな気がしてるけど」


「では、やはり姉さんと呼ぶべきか」


「だからそれは気持ち悪いっての」




 私は真恋に背を向ける。


 体を休めるはずだったのに、無駄な体力を使ってしまった。


 早く教室に戻って、令愛たちに癒やされよう。


 そんなことを考えながらも――なぜか顔は微妙ににやついていて。


 こんな常人みたいな感性で喜ぶなんて、復讐対象がこの世から消えて、私が浄化されてきたってことなんだろうか。


 あと“気持ち悪い”と言いながら笑っている私、周囲からは一番気持ち悪く見えたかもしれない。



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