第122話 ディートヘルムの最後

 俺がエイクと話していると、戻ってきたディートヘルムが普段の余裕さを無くして怒鳴り散らす。


「な、な、な何故ここに四神の一体が居るんだ!! おかしいだろうがッ! おい、クソガキッ! 何故コイツがこんな所にいるんだッッ!!」


「いやそんなの呼んだからに決まってるじゃんか」


 そんなんも分からんくなったのか、このアホタレは。


 実はこの戦争が始まる前にエレノアとフェンリルに原初の森に行ってもらい、予め呼んでいてもらったのだ。


 昔、四神の一角を魔王に倒されたから恨みがあったらしい。


 俺はその時初めて四神の仲がいいことを知った。


 そのお陰で案外簡単に事が運んだそうだ。


 だからこうして俺の目の前にいる。


 ディートヘルムは体を震わせながら必死に否定の言葉を呟いていた。


「あ、ありえん……! 四神の一体だぞ……! 魔王様しか倒せないと言われた神獣だぞ……ッ!?」


「まぁ色々あったんだよ。なぁエイク?」


『そうですね。色々と言えば色々ありましたね』


「色々で済ませていいことではないだろうが!」


 激昂しだしたディートヘルムを見て、エイクが軽いため息を吐いた。


『ソラさん、取り敢えず話すのはこの方を倒してからでも良いでしょうか?』


 エイクの体に纏われていた銀色のオーラが更に輝きを増していく。


 すげぇ……俺じゃこんなに出力あげれないよ……。


 俺はエイクの戦いが見たかったが、今はそんなことをしている暇はないのだ。


「ごめんなエイク。それじゃあ頼むわ」


『ソラさんも頑張って下さいね』


「ああ! ……サラ! 俺たちはここから離れるぞ!」


「……ん。分かったけど後で教えて」


「ああ勿論だ。——よし、兵士ども! 俺たちは戦場に出るぞ!」


「「「「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」」」


 俺はサラと兵士を連れて、城壁を降りた。






☆☆☆







『さて……皆さん行ったようですが……貴方は何をしようとしたのですか?』


「くッ……」


 エイクは自身の神気でディートヘルムを縛り上げて言う。


 ディートヘルムは攻撃しようと手を向けた状態のまま止まっていた。


『私は聞いているのです。何をしようとしたのですか?』


 どんどん増していく威圧に耐えきれなくなったディートヘルムは重い口を開いた。


「や、奴らを逃さないようにしようとしただけです……」


(この化け物め……! 私は弱いと言っても幹部になれる程の強さなのだぞ……! それに今は力を制限されていない状態のはずなのに……)


 ディートヘルムは何とかして動こうとするが、ピクリとも動かない。


 魔族は人間よりも身体能力に優れているが、それは所詮人間に比べてだ。


 エイクとは基礎能力に格の差があり過ぎるため、levelでも下のディートヘルムには解けるはずもなかった。


『もがいても無駄です。と言うか貴方、もがけてもいないじゃないですか。どうやら最近の幹部は弱くなっているようですね……』


 そう呟くエイクにディートヘルムはプライドを傷つけられたことにより怒りが湧き上がってきていた。


(この私が弱いだと……!それもただの獣に言われるなんて……屈辱だッ! 非常に不愉快だッ! こうなったら最終手段を使うしかあるまい。———【悪魔化】)


 その瞬間にエイクの神気が吹き飛ばされ、人間ぽかったディートヘルムの体が黒く悪魔に近づいて行く。

 

 ほんの数秒でディートヘルムの体が2倍ほどに大きくなり、筋肉は弾けんばかりに膨れ上がり、ツノが頭に生えてくる。


「これで貴様と戦える……ッ!!」


 そう言ってソラが神気を使っていなければ見えない様な速度で接近してくる。


 しかしそれを見ながらもエイクは特になんとも思っていなかった。


『はぁ……所詮悪魔程度ですか……。多分上位悪魔なのでしょうが、私には全く違いが分かりませんね……』


 そう言って攻撃してきたディートヘルムを角に引っ掛けて地面に叩きつける。


「ガッッ!?!?」


 しかし流石上位悪魔とでも言えようか。


 すぐに離脱して体勢を整えた。


「はぁはぁはぁはぁ……ば、馬鹿な……ッ! そんなはずは……くそッ!」


 ディートヘルムは【ライトニング】を何百も発動させて撃つが、エイクは避けるまでもなく触れる前に消えて行く。


『逃げられては面倒なのでさっさと終わらせることにしましょう』


 エイクが更に神気の出力を上げたことにより、輝きが増していく。


 そしてある一定まで行くと、突如白銀だったはず神気が赫く赫くなっていく。


 この状態はソラですら見た事がなく、そもそもこの世界に生きている者で、見た事があるのは多分いないだろう。


 そのためディートヘルムも怒りや闘争心やらを忘れてポカンとしてしまう。


「な、なんなんだそれは……」


 ディートヘルムはそう言うが、エイクは答えない。


 ディートヘルムは無視されたことにより正気を取り戻し、攻撃しようとするが……


「う、動かん…………ッッ!?」


 そして動けなくなったディートヘルムに向かってエイクが軽くたんっと地面を蹴ると———


 グシャッッ!!!!


 辺りに何かがつぶれた様な音がしたのと同時に真っ青な液体が飛び散る。


 エイクは既にいつのも銀色に戻っており、そこにはエイクと潰れた肉片しか残っていなかった。


 こうしてサラの最大の死亡フラグであるディートヘルムは本領を発揮するまでもなく、一撃でこの世を去った。


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