第10話 クソゲーに相応しい鬼畜さ《試練のダンジョン》④

 始めに言っておくが、第3の試練は少し特殊だ。


 第3の部屋に入ると毎度同じくメッセージが俺の目の前に現れる。


《第3の試練が始まります。成功条件は、1回も攻撃を受けずに討伐することです》


 ほらな? 正直無理ゲーだろ?


 こんなんだからクソゲーって呼ばれるんだよな。


 俺もゲームで一体何回死んだことか……。


 その時の辛さといえば……思い出したら涙が出てきそうになるな……。


 俺はそこで一旦考えるのをやめて試練に集中する。


 今俺のいる部屋は草原の様な感じだが、岩が隆起していたり、巨大な木がポツポツと生えていたりしていた。


 俺がいつでも戦闘できる様に準備していると。


「ふわっ!?」


 突然何もいなかったところに1体のモンスターが現れる。


 いや心臓に悪すぎるって……。


 俺はビビりまくりながらも【鑑定】を発動する。


______________

レッドドラゴン

level:105

______________


 そう今現れたモンスターは、知らない人はいないと言えるほどのメジャーなモンスター、ドラゴンだ。


 しかもおかしいよな? こっちは装備なしのレベル100なのに、向こうは最強種のレベル105。


 どう考えても勝てないじゃん。


 それに1回も攻撃を受けてはいけないとかいきなり難易度上がりすぎだろう。


 だが成功しないと俺のレベルが上がらない。


 それはサラを救うことができないことを意味している。


「あーもう! やるしかないじゃないか!」


 俺は大声をだしてやる気を出すと共に、ドラゴンが気づく瞬間に魔法鞄からソフトボールくらいの大きさのミスリルを取り出す。


 そして【身体強化】と【魔闘気】を発動して、レッドドラゴン目掛けて思いっ切り投げる。


「ガァアアアアアア!?」


 物凄い速度でドラゴンに命中すると、硬いものと硬いものがぶつかる音がしてドラゴンが吠える。


「この間に……俺は隠れる!」


 俺は急いで岩の後ろに隠れる。


 痛みから帰ってきたドラゴンは俺を見つけようと躍起になっていた。


 そして何分か経ち、探すのがめんどくさくなったのか、口を大きく開ける。


 きたっ! いよいよだ……。


 俺は息を殺しながらゆっくりとドラゴンに近い岩や木に移動する。


 俺が別の岩に移動した瞬間に炎のブレスが俺の元いた場所を巻き込んで発射された。


「あ、危ねぇ……移動してなかったら耐性とか貫通して死んでいたな……。しかし今はドラゴンが動けないからチャンス!」


 俺は大量の冷や汗をかきながらも【全力ダッシュ】を使いながらドラゴンに突進する。


「絶対に痛いだろうけど……男は気合いだ! おらッ!」


 俺はスピードの乗った全力のパンチを放つ。


「グルァッ!?」


 ドラゴンは突然現れて攻撃してきた俺にビックリしている様だ。


 ドラゴンのブレス後のスタン時間は10秒。


 その間に一気に攻める!


「【魔闘拳・連撃】ッッ!!」


 この技はゲームではなかったのだが、現実となったことでできる様になっていた。


 しかし今俺が出せる最大の火力なのだが、やはりレベル差がある為、思った以上に削れない。


「やばいッ! もうスタンが終わってしまう! よし、また隠れよう」


 俺は攻撃を中断して再び隠れる。


 物凄く姑息なやり方だが、人間がドラゴンに装備なしで勝つなんてこれくらいしかないだろう?


 まぁゲームのフレンドの中にはゴリ押しした人もいるらしいけど、この世界はゲームに似ているが、ゲームではない。


 リトライやコンテニューなんてものはないのだ。


 だから安全第一を忘れてはならない。


 俺は【気配感知】をしながら息を潜める。


 【気配感知】にはドラゴンが怒り狂って尻尾を振り回しているのを感知していた。


 あれに当たったら即死してしまう……。


 俺はバレないことを祈る。


 すると再びブレスを吐く動作に入った。


 俺はゆっくりとドラゴンの背後から近づく。


 あと少し……よし、今だ!


 俺が【魔闘拳・連撃】を放とうとすると、急にこちらを向いてきた。


「なッ!?」


「ガァアアアアアア!!」


 ドラゴンは俺に向かってブレスを吐く。


 やばい、避けられない!


「く、くそッ! 最後の奥の手だ! 【絶対回避】ッッ!!」


 俺がスキルを発動させると、気がついた時にはブレスを回避していた。


 そして横には必ず当たると思っていたのに避けられたことに驚いているドラゴンがいる。


 なんかよく分からないが今がチャンスだ!


「はああああああ!!【魔闘拳・連撃】ッッ!!」


 俺の全身全霊の攻撃は、ドラゴンの硬い鱗を突き破って腹に大きな穴を開けた。


 ドラゴンが光の粒になって消える。


《全ての試練を合格しました! 報酬を獲得しました》


 俺は疲れを一瞬忘れて雄叫びを上げる。


「よっしやあああああああ!! これで限界突破のアイテムゲットだぜッ!!」


 しかし、叫ぶと体の内側から激痛が走る。


「ゴポッ……な、なんで攻撃当たってないのに血を吐くの……?」


 俺は魔法鞄から3級ポーションを取り出して飲むと痛みは幾分か軽減した。


 どうやら【絶対回避】は自身の体のリミッターを外して、無理やり回避するスキルみたいだ。


 体は痛いがそれより先に報酬と行こうか!



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 ではではまた次話で。

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