十三話 VS耐久のマガン!

テロップス、シャズ・レクド。


以上二名の四天王に敗北した新田であったが、相も変わらず無策のまま、今日も懲りずに魔王城へと侵入していた。彼は負けた事が余程悔しかったと見える。


しかし、四天王の間に続く扉が四つある部屋へと再びやって来た新田は悩みに悩んだ末、最も左にある『耐久』の文字が書かれた扉を開けた。


実を言うと、新田はあれから何度か敗北を喫した二匹に挑戦しているのだ。


だが……『目覚めたら教会』と言う結果ばかりが続き、どうにかして魔王軍へと一矢報いたい彼は別の四天王に挑戦してみる事を決めたのだった。


さて、その判断は吉と出るか凶と出るのか……『答えなんてもう出ているようなものだ。』なんて冷たい事は言わずにどうか見届けて欲しい。






階段の途中に※いつもの男性が倒れており、ぼそぼそと何か呟いていたが、新田はこれを無視した。どうせまた訳の分からない事を言っているに違いないのだから……


※(この男性はシャズ・レクドのいた物量の間の階段に倒れていた男性と同一人物である。彼は何故か四天王へと続く階段に必ず倒れている、そう言うタイプのキャラクターなのだろうか?それとも、馬鹿なのだろうか?)


新田は気を取り直して男性を跨ぎ、奥へと進む。


すると、四天王の一人がいるべきその場所の中央には、奇妙な物体が置かれていた。


それは丸々しい形状をしており、下部は赤黒く、カーペットのような質感をしていた。上部はフェルトのようにもこもことした何かで覆われていているが、無数の小さなロケットのような物が付着している。


「……何だこれ」


暫く眺めていると、それが上下に動いている事に気付いた……呼吸している。ならばこれは置物ではなく、これ自体が四天王だとみて間違いはないだろう。


「おい!お前が四天王だな!」


「……客人か」


新田がそう問いかけると、やはりと言うべきかその球体は言葉を返した。そしてその形が崩れたかと思うと、驚くべき生物が現れた。


その生物としては巨大な事と、たてがみに大量のロケットが付いている事を除けばだが……それは、まさしくライオンと呼ばれる生物であった。先程のものはただのフェルトボールではなく、体を丸めた猫科動物の後姿だったのだ。


「うっ」


新田は怖気付いた。相手の見た目は頂点捕食者そのもの……元いた世界の記憶によって本能的にそうなってしまうのも無理はない。


「人の子よ、もっと怯えるのだ。その恐怖を帯同しなければ、我の〝緩慢なる地獄〟には耐えられぬ。さあ、もっと怯えるのだ」


ライオンの姿をした魔物は優しげな口調でそう言った。テロップス、シャズ・レクド達と同様、彼も自分の戦法に余程の自信があるらしい。


心を読まれ、どうやら情けまでかけられている事に気付いた新田は顔に怒りの表情を浮かべ、恐怖に抗おうとした……


が、出来なかった。生物としての本能から産まれた恐怖、それは肉体と精神が持ち主からの要求を拒む程に勁烈なるものだったのだ。


「そうだ。それで良い。ではそろそろ始めようか……『耐久のマガン』参る!」


心の準備も出来ぬまま、新田の視界はいつも通りに暗転してゆく……

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