十一話 VS四天王シャズ・レクド!
入った部屋には目当てのテロップスではなく、別の魔物がいた。
しかし、一つ前にあった部屋の石像などからも分かる通り、こう言った仕様の世界ならばどの道引き返す事は不可能なのであろう。新田は覚悟を決めて目の前にいる爬虫類のような魔物を正面に見据え、構えた。
「失礼、自己紹介が遅れましたね。私はシャズ・レクド。『物量のシャズ・レクド』で御座います。今回はよろしくお願い致しますね、転生者さん」
臨戦態勢となった新田の前で、シャズ・レクドと名乗る魔物は悠長にも深々と頭を下げて見せる。
どうせ戦いの際にはターン制バトルとなるからなのか、テロップスと同じく余程の自信があるからなのか……とにかく、彼の落ち着きが何処からやって来るのかは新田には知る由も無かった。
……それよりも、新田には今のシャズ・レクドの言葉で気になる部分があった。
「なあ、一つ教えてくれないか?アンタと言いテロップスと言い……いや、他の奴もそうだったか。とにかく、何でアンタ達は俺が転生者だってすぐに分かるんだ?」
新田はそんな言葉をシャズ・レクドへと投げかける。それは前々から思っていた疑問だった。
「あぁ、簡単な事ですよ。貴方、現地人を見た事はありますか?」
「……ある」
「それならば答えは自ずと導き出せるはずです。思い出してみて下さい。貴方達転生者と現地人には決定的な違いがある……一目で分かる、明確な違いが」
シャズ・レクドはそう言ったきり、微笑むばかりで口を閉ざしてしまった。そこからは自分で考えろ、という事だろう。
転生者と現地人の違い……一応思案するような素振りはしてみたが、既に答えは出ている。
「体つき……か?」
「正解です。こちらの人間と比べて貴方達は小さく、見かけだけはとても非力そうな姿をしているのです。逆に言えば私達魔物が戦闘を行う時は一見すると弱そうに見える者だけ警戒しておけば良いので非常に助かりますが」
……何だか聞いた方がバカらしくなるような質問だったような気がする。
考えてみればこちらの世界は元いた世界と比べて文明の発展が乏しいように思えた。と言う事は肉体を使ってやらねばならない事もまだまだ多いはず……それでアルマやゲドン、ヨルムやガンドのように人々は皆背丈も、筋肉も転生者より発達するのだろう。
そんな彼等よりも『一度死んだ』と言うだけで強くなる転生者に、新田は少し罪悪感を覚えた。
「さて、質問の答えも出た所ですしそろそろ始めましょうか」
シャズ・レクドがそう言うと、新田の視界は前回と同じく、暗転した。
光が戻ってきた。ターン制バトルが始まったらしい。
……が、目の前には大きなタンスのような物があり、正面が全く見えない。
それどころか左側にはクローゼット、右はドレッサー、そして背後にはこれまた大きなキャビネットがある……これでは攻撃すら出来ないではないか。
「おりゃあ!」
新田は我流の回転斬りを放った。すると周囲の家具は全て吹き飛び、残骸となった。
今までまともに攻撃すらした事がなかったが、やはり自分は非常に高いステータスを間違いなく持ってはいるのだ。そう確信し、戦闘中にも関わらず新田は安堵の表情を浮かべる。
「おい!これは……一体……」
シャズ・レクドに抗議するべく声を荒げた新田であったが、自らの手によって切り開かれた先にあった光景を目の当たりにし、言葉を失った。
周囲には夥しい量の家具が散乱していたのだ。
そして最早家具の山と形容するしかないものの頂きにはシャズ・レクドがおり、今もなお虚空から家具を引っ張り出しては山の増築を続けている。
「お、おい!一体なんなんだこれは!」
「おやおや〝出てこられてしまった〟のですね。ならば私の勝利は確実……死ぬ前に教えて差し上げましょう。私は今『アイテムボックス』から家具を引き出している、ただそれだけの事ですよ。ま、少々散らかしてしまいましたがね…………」
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