第4話 帰り道

「あぁ、勿論今すぐ返事が欲しい訳じゃないんだ。ゆっくりと考えてくれればいいよ。ただ、3日後にまでは答えを聞かせてくれないか?話しは以上だな」


「はい…分かりました」


(こっちに不利ってわけでもないから一応かんがえておくかぁ)





 話しを終え外に出ると落ちかける夕日が道を照らす夕方と夜の丁度、間とでも言うべき時間帯になっていた。


(そういえば、ユニークスキルは特別と言われたけど結局、どんな効果なんだろう?)


『スキル保持者のスキル使用の意思が確認されました。スキル機能クエストの実行を開始しますか?』


「ファッ」


 瞬間、一斉に道を歩く人の目がこちらを向く。

 その目に気づいてから自分が大声を上げた事に気づくほどには明は混乱していた。

 当たり前だろう、何故ならいきなり誰かも分からない声が直接脳の中に響いてきたのだ。


(とっ、取り合えず路地裏か何か人目に付かない所へ…)


 混乱しながらも人の目の注目に耐え切れない明は近くの路地裏に逃げ込んだ。


(周りに人はいないな…結局さっきの声はいったい何だったんだ?クエストとか言っていたが…クエストって、あれか?スライムを倒せみたいな目標があってそれを達成すれば報酬が貰えるみたいなやつか?)


『はい。概ねそのような認識で構わないかと』


「あぁ、そうか…そうかぁ?」


『どうしましたか?』


「まてやぁっ!!そもそもお前は誰やぁっ」


『スキル保持者様は私との会話は余り声に出さないことを推奨いたします。私の声はスキル保持者以外には届きませんので。私との会話は念じるだけでできます』


 明は少し唸ってからコツをつかみ、


『そ、そうかこんな感じか?』


『はい。そのような感覚でよろしいかと』


『ありがとう。それで…君は誰なんだい?』


『私はスキル「レスキュー」の機能システムの一つでスキル保持者様を補助する役割を持っています。他にご質問はございますか?』


『…いや、急すぎて何も思いつかない』


『では、クエストは実行いたしますか?』


『待て、そのクエストは今の僕が受けても大丈夫なものなの?』


『はい、全く持って大丈夫でしょう』


(正直、めっちゃ興味あるから実行したいけど…)






『……………よし、実行します』


(仕方ない。僕にはPOWが足りなかったんだ)


『はい。クエストを実行します。

《クエスト》「人助け」を開始します。

 残り時間 47h 59m 59s の間に困っている血縁者以外の人三人を助けなさい。(0/3)

 なお、報酬は新たなスキルです。この情報はいつでも確認できるようになっております』


「スゥー-、一旦落ち着こうじゃァないか。大声は出すべきものじゃぁない」


(何なんだよぉおもおおおおおー--------)


『すまない、もう一度………聞いていいかな?』


『はい』


『家族とか自分に関わりのある人以外の手伝いをしなければいけないんだよね?』


『少し違いますね。家族は対象外ですが友達など関わりがある人でもクエストの対象になります』


『あぁ、そうかい、なら関わりのない人が対象で合っているよ』


『?どういうことでしょうか?』


 そして明は無駄に、本当に無駄に、胸を反らし、


『よく覚えておきたまえ、僕は、トモダチが、いないんだっ!!』


と盛大に宣言した。(脳内ではあるが)


『そう…でしたか…。すみません。予測が足りていませんでした。では、改めてクエストを実行します。

《クエスト》「人助け」を開始します。

 残り時間 45h 56m 08s の間に困っている人を3人助けなさい。(0/3)

 なお、報酬は新たなスキルです。この情報はいつでも確認できるようになっております』


『本当に知らない人の手助けをしないといけないの?僕、コミュニケーション苦手なんだけど…』


『はい。ですが、考えてみてください手助けをすればその以後、その人と関わらなければいいんですよ?』


(確かに…)


『私も手伝いますから、ね?』


『よし!分かった。取り合えずやってみよう』


(帰り道を歩きながら困っている人を探してみるかぁ。まぁ僕ん家ここからまあまあ遠いし電車乗るために駅にも行くし困ってる人も見つかるかな?)







 そうして、帰り道を歩きながら困ってる人を探していると以外にも早く駅に着き、後は電車に乗るだけになってしまった。


(ここで誰か困っている人見つけないとなぁ)


 明が辺りを見回すと丁度、階段の所で荷物を抱え困っていそうなお婆さんがいた。


(あっ、あの人困っていそうだ。こっ声を掛けてみようか…)


『保持者様、チャンスですよ。大丈夫ですよ。きっと上手くいきますって』


 スキルによって勇気付けられた明はお婆さんに近づき声を掛ける。


「あっ、あのぉ?もしよろしければ手伝いましょうか?」


 そう明が声を掛けると老婆は少しポカンとしてから、


「あたしがそんなに老けて見えるのかい!このくらい、あんたの手助けなんか要らないさ!」


 と不機嫌さを隠そうともせず階段を重そうに荷物を抱えながら上がっていってしまった。


「…」


『…隠し条件を達成しました。

 《条件》人の手助けをしようとして断られる

 《報酬》派生スキル 「救難センサー」の獲得

 派生スキル 「救難センサー」を獲得しました』


 少し間を置いてから明は尋ねる。


『…そのスキルはどんな効果なんだ?』


『…はい、このスキルは助けを求める思念を感じ取ることができるものとなっています』


「そうかぁ…」


「よし、今日は帰るか!」






―――——―――

 主人公が恐らくこの作品で最も重要なスキルを手に入れました。

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