第零話 繧ゅ≧豸医∴縺溘> (Part.4)




▽ 17 ▽




 ジュードの銃撃後、私は急いで自室に戻った。妹の身が心配になったからだ。


 何も知らない椎はベッドの上で、すやすやと眠っていた。


 私は急いで彼女を起こした後、『今から逃げます。私に着いてきて下さい』とだけ告げた。まだ身体に熱を帯びていた妹は何も言い返さず、黙って私の言う事に従ってくれた。きっと、私の尋常じゃない態度に、何かを感じ取ってくれたのだろう。


 とはいえど、私は脱出経路をまるで知らなかった。思い返せば、私の人生は自室と所長室、研究室、食堂、そして図書館を行き来するだけだった。まずは見取り図を確保しなければ。そう考えていた、ちょうどその時だった。


 大きな爆発音が、私達の鼓膜を激しく揺さぶった。


 この時、私は確信する。外に待機していた部隊が、この施設を攻撃している事を。ジュードの皮を被った偽物が指示しているのだろう。マーサがこの世に居ない今、現代兵器を止める術を私達は持っていない。


 私は椎を連れて、部屋を飛び出した。今なら、他の研究者達が脱出しようといるはずだ。彼らに続いていけば、外へ出る事が出来る。予想通り、通路には職員らが我先に逃げ出さんと列を成していた。が、幼い私達の脚では、大人の彼らに追いつくことは出来なかった。


 どんどん広がる距離――――


 誰も私達に振り返らない。途中、椎に暴力を振るったあの女性もいたが、私達の姿を一度認めた後、何も居なかったかのように無視を決め込んだ。無理もない。だって、私達は所詮、実験動物なのだから。


 3分後、前方の曲がり角から、職員らの断末魔と共に、けたたましい銃撃音が聞こえた。私と椎はその場で足を止める。



 偽ジュードは、ここから生存者を1人も出さないつもりだ。自分を偽物であると知っている私の存在が邪魔なのだろう。そして、私の死はウィルスの暴走による全生物の死――すなわち椎の死でもある。それだけは何としても避けなければならない。


 ――そういえば、メンゲレは今、何をしているのだろうか?


 ふと、私の脳裏に疑問が過ぎる。ジュードの部下に尋問されていると聞いたが、まだ生きているのだろうか?


 ――そもそもマーサを射殺したマッカートニー中将の正体が、メンゲレなのでは無いのだろうか?


 何らかの方法で成り代わったとすれば、あの豹変ぶりも合点がいく。秘密裏に変身能力を保有していた可能性はあり得る。


 このまま前に進んでも、命令に従う兵隊の銃撃で死ぬだけだ。もし本物のジュードが生きていて――どこかに幽閉されていたのなら、私達の脱出に協力してくれるはずだ。


 それにメンゲレが黒幕だったとして、屈強な軍人5人を、たった1人で戦闘不能にまで追い詰められるだろうか?つまり、4人の護衛が全滅しているとは考えにくい。その中の誰かがまだ生きていれば、部隊に状況説明をしてくれるだろうし、私達が助かる可能性は激的に上がる。


 確かめる価値はある。メンゲレと護衛達の所在を確かめねば。


 私は踵を返し、所長室へ戻る事に決めた。




▽ 18 ▽




 移動中、異常事態が発生した。アフィリア軍が研究施設に炎を放ったのだ。


 地球上の全生物を滅亡させるウィルスにも、たった1つだけ弱点があった。それが高温に弱い事だ。私が焼死した場合のみ、死後のウィルス拡散は発生しない。


 私達が目的地に着いた時には、もう所長室にも火の手が上がっていた。この時、自分のミスに気が付く。


 気が動転していた私は、メンゲレがいつもの様に所長室に居るものだと錯覚していた。そこには先ほど殺されたマーサと若い兵士2人の亡骸が横たわっているだけだ。


 ――馬鹿ッ。さっきまでこの部屋に居たのに、なんでそんな簡単な事に気が付けない。





 私はその場に情けなく座り込んだ。


 いろんな事が起こり過ぎて、思考が追い付かない。


 家出した冷静さ。


 燃え上がる本棚。


 鳴り止まない銃撃。


 耳にこびり付く大きな心拍音。






 きっと私達はこのまま身を業火に焼かれて死んでしまうのだろう。


 ごめんなさい、マーサ。あなたのスマートフォンを守る事は出来ない。


 ごめんなさい、椎。あなたを外に連れ出すことは出来ない――






 この時、私のメンタルはもう崩壊していた。助けを求めようにも、部屋に居る大人達はみんな死体だ。小さな子ども2人で、一体どうすればいい?







 窮地を救ったのは椎だった。彼女は机の後ろに設置されていた本棚を指差す。


『お姉ちゃん、あそこ見て』


 ジュードがマーサを撃った時に居た場所だ。気が動転している私には、それは何の変哲もない普通の本棚にしか見えなかった。しかし、この子には別の物が見えているに違いない。私は妹の機敏な頭脳に縋りつく。


『椎……何が見えていますか?』


『あそこだけ、本の並べ方おかしいの。他の所はキレイに並べられているのにへんだよね?』


 私は椎が指差した部分に向かった。上から数えて4段目の右側。確かに他の本はきちんと整理されているの中で、その部分だけ収納の仕方が乱雑である。急いで本を詰めたみたいだ。


 私はその部分の本を全て棚から出した。その列には背板が無く、奥は剝き出しの壁となっている。棚の右端に視線を移すと、そこには小さなスイッチが壁に埋め込まれていた。


 隠されたスイッチを、私は恐る恐る押す。すると、右側から「ゴッ……ゴッ……ゴッ……」という鈍い歯車の音が聞こえた。音のする方向に振り向くと、2mほど離れた部分の壁が下に沈んでいるのが見えた。歯車の音が鳴り止むと、洞穴に光が灯る。それは別の部屋へ続く通路だった。


 これが秘密の逃走経路で、ここを通れば外に逃げ出すことが出来るかも知れない。だが、行きつく先はただの袋小路の可能性だってある。


 来た道を引き返すのはどうだろうか?いや、後ろに逃げても兵隊や炎が待っている。前進しなきゃ……椎はここで死んでしまう。


 隠し通路を進むを決心した私は、マーサの眠るソファの前へ移動する。そして、跪いて彼女の美しい頬へ接吻する。


 ――私の親友。初めての友達。待っていてください。いつになるのかはわかりませんが、あなたの願いは……必ず叶えます。


 その後、妹の手を取り、未知の世界へ足を踏み入れた。




▽ 19 ▽




 長い石造りのトンネルは、爆撃の影響なのか壁材に使われている岩が、床の至る所に転がっていた。気を付けて歩かないと転んでしまう。


 100mほど進んだ先にあったのは、広い資料室だった。部屋に入った私は、そこに広がる光景を目撃して、血の気が引いた、




 炎が燃え上がる部屋には、5人の男性の死体が放置されていた。




 その中の4人は、服装から見てもおそらくジュード護衛の任に当たっていた兵士だろう。入り口から一番近い所で、仰向けに死んでいる兵士の顔は、どことなく見覚えがあった。


 兵士達は全員、首の頸動脈を切り裂かれて殺害されていた。身体に銃創がある者は2名。顔をよく見てみると、みな顎が外れんばかりに口を大きく開いた状態で息絶えていた。


 5人目の遺体は――グレゴール・メンゲレだった。


 彼の遺体の損壊は特に酷い。腹部は横方向に切り裂かれ、そこから腸がはみ出している。彼も他の死体と同様に口を大きく開いた状態で絶命している。ただ、彼の死体だけ喉への裂傷が無かった。


 床に倒れる5人の屍が視界に入った瞬間、その中には本物のジュードが混じっていると思った。だが、ここで死んでいるメンゲレは、紛れもなく本物のグレゴール・メンゲレだった。


 ここに来るまでに抱いていた予想――メンゲレが変身能力者で、その能力を使ってジュードに成り代わっている説は、この時点で間違っていた事が立証された。


 マッカートニー中将の死体はここにはない。つまり、所長室で娘を撃った彼は――少なくとも肉体的には――本人だった可能性が高い。人が1時間足らずにあそこまで急変することなんてあるのだろうか?


 その答えを今の私には出すことは出来ない。頭の回転が早いマーサならわかったのかもしれないが、自分の無能さを嘆いた所で状況は変化しない。私は今出来る事を挑戦してみる事にした。椎と2人で生き残るために……。


 メンゲレ所長が死んでいる以上、彼から抜け道を聞くことは出来ない。仕方がないので、彼の持ち物を調べてみる事にした。カードキーなどを携帯している可能性だってある。


 私は彼の遺体の横に座ると、服のポケットをまさぐった。衣服に触れているだけなのに、死体そのものを辱めている様な不快感に襲われる。


 その様子を見ながら、椎が心配そうな声色で私に声を掛けてきた。


『お姉ちゃん、そんなことして……メンゲレ博士におこられないの?』


『怒られません。彼はもう死んでいますので』

 胸ポケットを調べながら、私は返答する。


『死んでいるってどういうこと?』


『もう二度と動かないということです。だから、彼から怒られることはもうありません』


『へぇ~』

 と椎が返事をしたその瞬間だった。


 妹は思いっ切りメンゲレの頭部を蹴飛ばした。私は驚いて妹を見上げる。彼女は無表情で亡骸を見下ろしている。


『なっ、なっ、何をしているんですか!?』


『もううごかないって事は、何をしてもいいって事でしょ?だから「いままでされてきた酷い実験の仕返しをしなきゃ」って思ったの』


『気持ちはわかりますが、そんな事をしてはいけません』


『なんで?お姉ちゃんだって、博士にイタズラしてるじゃん』


『これはイタズラでは……』


 私が言葉を言い終える前に、椎は先程通ってきた隠し通路の方へ、テクテク歩いて向かった。床にしゃがみ込むと、そこに転がる小さな岩を1つ抱えて、こちらの方に戻ってきた。


 私はメンゲレの遺体から飛びのいた。この後、何が起こるのか……わかってしまったからだ。止めるべきだと思ったが、これまでの疲労感と妹への恐怖で身がすくんでしまった。


 椎はメンゲレの胸の上に跨ると、持って来た岩を彼の顔面へ無慈悲に叩き付ける。今まで溜め込んだ鬱憤うっぷん憤怒ふんぬ怨恨えんこん――それらの激情を全てぶつける様に。


 その行為は何度も何度も繰り返された。最初こそ無表情だったが、返り血で顔が真っ赤に染まるにつれて、その顔に笑みが広がっていった。多分、笑った時点で椎の目的は復讐から快楽へと切り変わっていたのだろう。


 子羊の様にガタガタ震える私は、眼前の地獄を黙って見届ける事しか出来なかった。




▽ 20 ▽




 椎の暴虐を止めたのは、敵であるはずのアフィリア軍だった。


『お姉ちゃん、誰か来たよ。どうする?』


 先に彼らの接近に気が付いた椎が、動きを止めて私に小声で言った。


 私は周囲を見回すと、子ども2人が隠れられそうなロッカーを発見した。


『一旦、ロッカーに隠れましょう』


 椎を避難場所へ移動させている間に、私はデッドアップルで死体に殺人ウィルスを保有させた。が、感染対象はあくまでも死体だけに留めた。これはあくまでも保険だ。


 私達がロッカーに隠れた後、1個分隊――10名の軍人が部屋に入ってきた。隙間から確認すると、その中にはジュードは居なかった。彼らは銃を構えながら、厳かに会話する。


『確かに中将が言った通りだ』


『分隊長。この……メンゲレの遺体の損傷、報告とだいぶ違いませんか?まるで獣にやられたみたいだ』


『確かにそうだな。ここは動物実験施設。どっかにヤバい化物が潜んでいるかも知れん。警戒を緩めるな』


 私は彼らの会話を聞きながら、ただひたすらに祈った。この資料室をそのまま素通りして欲しいと。彼らも死にたくは無いだろうし、故郷に帰ればきっと愛する家族や恋人、友人だって居るはずだ。私は……彼らを殺したくない。


 私はこれまでの人生で、意図的に殺人――いや動物を殺した事すら、ただの1度も無かった。体内のウィルスが暴走して多くの人が死んだ事故はあったものの、それは物心が付く前の出来事。能力の内容――有効範囲や熱に弱い特徴などはその時の事故や、その後のシミュレーション結果で判明したものだ。


『で、どうします?この部屋も調べときます?』


『もちろんだ!死体から棚まで全て調べ上げろ!生存者は絶対に逃がすな。殺せ!』


『了解!』


 私は絶望した。兵隊らは私達を殺害しようとしている。つまり……椎を生き残らせる唯一の方法は、もう彼らを殺すしかない。


 生まれて初めての殺人行為を企む私は、極度の緊張の為なのか、炎天下の中、無理矢理散歩させられている長毛種の犬みたいに呼吸が荒くなる。大きくなる呼吸音を外に漏らさない為、両手で口を塞ぐ。


 周囲は炎に包まれているのに、脇の下に冷たい汗がたくさん流れ落ちる。強過ぎる感情の負荷に脳が耐えられなくなり、瞳から大量の涙がボタボタと滴り落ちる。


 故障した心臓から腐乱した体液が惰性的に送り出され、それが血管を巡り、全身の肉という肉、細胞という細胞が腐り落ちて、身体中の至る所がドロドロに溶解していく気分だ。








 ――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


 誰も殺したくない。


 でも、椎も殺されたくない。


 どうすればいい?


 何が正解なの?


 わからない!


 もう何もわからない!


 助けて助けて助けて助けて助けて……


 ……お願い、誰か私達を助けてください。








 私のパニックが最高潮に達した時、身体を密着させていた椎が、微笑みながら血塗れの手で私の頭を撫でてくれた。無言の仕草に込められた、私だけに伝わる秘密のメッセージ。




 ――無理しないで、お姉ちゃん。今までありがとう。愛してる。




 私は口を抑えていた両手を離し、涙交じりの瞳で妹の顔をまじまじと見つめる。




 ――そうだ……。私はどうなってもいい。この子だけは死んでも守らなきゃ……。




 小さな深呼吸の後、大きな覚悟を決め、そっと力強く呟く。




『デッドアップル……対象、春風椎以外』




▽ 21 ▽




 最初の被害者は、メンゲレの亡骸を調査していた若い兵士だった。


 何の前触れも無く、彼は口から吐血した。何が起こったのかわからなかったのだろう。床に落ちた血をほんの数秒眺めた。きっと『敵襲だッ』と叫びたかったのだろう。冷静になった彼は、後ろを振り返り大声で叫ぼうと大きく口を開いた。


 が、兵士の口から飛び出したのは、味方への注意喚起ではなく、真っ赤な大量の血液だった。あまりに血の量が多かったのか、喋ろうとするも『ごぼぼぼぼぼぼ』という不気味な音が響くだけ。


 そのまま床に倒れ込んだ兵士は、右へ左へと激しくのたうち回った。その姿は生きたまま高温の鉄板の上へ乗せられた、世界一不幸な食用ネズミを連想させた。


 呼吸不全に陥り、喉周りを何度も引っ掻き回す。最期の瞬間、若い兵隊は右手を天に伸ばし何かを掴もうとした。だが、その手に掴んだのは虚無……。






 殺人ウィルスの有効範囲2mとは、感染者からの距離である。すなわち、1人が感染するとその人間から2m以内に居る者にもウィルスが感染する。今回、部屋に突入した兵隊らは、それぞれ2mも離れていなかった。





 つまり、全員死んだ。私が殺した。





 部隊の壊滅を確認すると、私達はロッカーの外へ出た。能力発動後、1分も掛かっていない。あっという間の出来事。


 生まれて初めての殺人。私は自分が命を奪った兵士の顔を1人1人見た。みな若い男達。そのほとんどが20代前半だ。分隊長もせいぜい30手前だろう。


 彼らがこれから歩むはずだった輝きに満ちた50年の未来を、たった今、この私が摘んだのだ。彼らの帰りを待つ人々の希望を、たった今、この私が消失させたのだ。


 それは2度と戻すことが出来ない。だって、死は不可逆的だから。死んだ人間は生き返らない。壊れた物を修理するのとは訳が違う。後悔しても、もう遅いのはわかっている。


 罪悪感は、私の心を何度も強く踏み潰した。先程、妹の死体損壊を咎めたばかりなのに、私の方が殺人という、より重い罪を犯してしまった。


 全員の死亡を確認した後、腹部の筋肉が痙攣しだした。再び込み上げる嘔吐感。我慢しようにも、その暴力的な吐き気に抗えず、私は口を開く。今度は生暖かい胃酸だけが出て来た。喉と口内が濃塩酸で灼ける。舌の上に酸っぱい味が広がる。胃の中が空っぽになり、もう何も出てこないはずなのに、えずきは止まらない。いや、違う。これはきっと、良心を吐き出しているのだろう。


 嘔吐感が収まると、私はその場にだらしなく座り込んで、しくしくと涙を流した。泣いた所でどうにかなる訳じゃない事はわかっている。でも、自分の犯した罪――10人もの命を奪った責任を、7歳の幼い精神では受け止め切れなかった。


 きっと私が生きている限り、また同じように多くの人命を奪うのだろう、こんな風に。そう考えるだけで寒気が止まらない。




 ――なんで、こんな能力を持って産まれてしまったのだろう?もういっそのこと、人魚姫の様に泡と化して、この世界から消えてしまいたい。




『ぎゅー--。よしよし、お姉ちゃんは、なぁんにも悪くないよ』


 泣いている私を心配してくれた椎が、優しく抱きしめてくれた。


『あぁ……椎……椎……。私、たくさん……たくさん人を……殺してしまいました……』


『さっき、あの人達を殺さないと私たちが死んでた。だから、しょうがないよ。この世界はざんこくだもん。お姉ちゃんは、あの人達じゃなくて私を選んでくれた。私、とってもうれしい』


 椎の言葉を聞いて、私は救われた。


 まるでトロッコ問題だ。椎か彼ら、あの場でどちらかが殺害される運命は不可避だった。そして、私は椎を選んだ。その事に後悔はない。


 もちろん、大量殺人の罪悪感が無くなった訳では無いが、今、自分が生きている理由を再確認する事が出来た。春風林檎の存在理由は、春風椎を外の世界へ連れ出す事なのだ。全てを嘆き、死者や家族に懺悔するのは……私達がこの地獄から脱出した後にしよう。


『そういえば、お姉ちゃん。あれ、なぁに?』


 私を抱き締めながら、椎は天井に刺さった機械を指差した。生命の危機はまだ続いているのに、彼女は平常心を保っている様に見えた。


『あれは……監視カメラですね……ぐすっ。動画を……録画する事が……出来ます』


 私は椎が指差す方向を見ながら、涙ぐみつつ質問に答えた。


『つまり、ここでのできごとが全部残ってるのか。ふぅん』


 妹は意味ありげに呟いた後、口角を鋭く上げ、不気味に笑った。何かを閃いたのか、はたまた何かを企んだのか?その時、椎が浮かべた表情は、偽ジュードが所長室で見せたそれにとてもよく似ていた。

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SPECIAL ANIMALS(スペシャル アニマルズ) 日高 隆治(ひだりゅー) @r-hidaka

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