第4話(その1) ~春風 椎・椎名町サンロード~
日本一人口密度が高い自治体・豊島区。ここには、かつて椎名町という町名が存在した。
1948年、8歳の男児を含む12名が毒殺された帝銀事件の舞台にもなったのだが、その後の区画整理でその名前は消滅してしまった。
手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄コンビなど、著名な漫画家らが居住していた事で知られるトキワ荘が建っていたのもこの地である。トキワ荘は1982年に解体されたが、2020年に復元され漫画の聖地として、多くの観光客が訪れている。
地図からは消滅してしまった椎名町だったが、公共施設やマンションなどには、その名を今なお残し続けている。
その中の1つである椎名町駅は、西武池袋線の駅だ。ターミナル駅の池袋から同線で1駅の場所にあり、都心へのアクセスが非常に良い。
駅の東側には、椎名林檎の楽曲、「罪と罰」の歌い出しに登場する山手通りが通っている。山手通りを超えると西武池袋線を挟んで、北側が西池袋、南側には目白の住宅街が広がっている。
駅の南側の一帯は南長崎と呼ばれ、先程紹介したトキワ荘漫画ミュージアムは、ここに建っている。
駅の北側の地名は長崎と呼ばれている。南長崎が漫画の街とするならば、長崎は芸術の街だった。
1930年代から1940年年代にかけて、この周辺には100軒を超えるアトリエ付きの貸家が建てられていた。芸術家、詩人、小説家、映画人らが集住し、ある時は狭いアトリエで切磋琢磨しながら、またある時は近場の街で酒に溺れながら、各々の創作活動に没頭した。
詩人の小熊秀雄によって「池袋モンパルナス」と名付けられたこれらのムーブメントは、太平洋戦争時の言論・思想の弾圧で霧散してしまった。
しかし、その残滓は2038年の現代でも所々に残っている。もし、あなたが長崎を訪れたのなら、きっと彼らが生きていた痕跡をその肌で感じる事が出来るだろう。
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