1-6その3

 記者会見を終えてどっと疲れた四人は、あとかたずけを引き受けてくれた地元の記者さんや交番の方々に恐縮しつつ、おとなしくゲージに戻った古鳥類の子どもと一緒にバスのところまで戻ってきました。花山先生はすごく心配していたようで、

「記者会見どうでしたか?マスコミの人たちに吊るし上げられたりしませんでしたか?」

と、バスから飛び降りて、すぐに聞いてきました。遠山先生は

「和やかに終わりましたよ。いやあ、この子のおかげです。」

そう言って、ゲージの中の古鳥類の子どもを指差して、花山先生にさっき起きた事を手短に話しました。お父さんは、

「その鍵なんとかしなくちゃな。この子には役に立たなそうだ。まあ、逃げそうにもないから問題ないといえば問題ないが。」

と、ケイタに話しました。

 ケイタとソウタは、新種の古鳥があまりウケなかったことが不満でした。

「みんな意外と興味なかったみたいだね。」

ソウタが言うと、ケイタは答えました。

「見た目が地味だからね。恐竜ではないからインパクトにかけたんだろうね。」

「ティラノサウルスみたいなのだったら、よかったのかね。」

とソウタが言うと、ケイタは

「口から火でも吐いたら良かったんじゃないかな。」

と真顔で言って、みんなを笑わせました。


「さて、大分遅れちゃいましたが、学校に帰りましょう!」

花山先生が言いました。お父さんはケイタとソウタに、

「私は遠山さんを観察基地に送ってから帰るから、また後でな。くれぐれも、古鳥を逃がさないようにな!」

と言って、遠山先生と車でトンネルの方へ戻って行きました。

 ケイタとソウタと古鳥類の子どもは花山先生と一緒にバスに戻りました。みんなはケイタとソウタを質問攻めにしました。

「有名人に会えた?」

「テレビに出るってどんな気分?」

「スカウトとかされるかもよ。」

 みんな面白がって聞いてきました。しかし、ケイタもソウタも、

「父さんと遠山先生が、ほとんど話してくれたから、あまりやる事なかったよ。」

とか、

「鳥山くんしかいなかったよ。」

とか、

「古鳥類はあまりウケなかったよ。」

とか、受け答えのテンションが低いので、みんなもなんとなく気分を察しておとなしくなりました。


 バスは学校に向かって順調に走っています。ソウタは少しばかり気持ちが落ち着いてきたので、改めて自分の相棒の名前を考える事にしました。すると、サクラは、

「私のトリケラトプスは、ツンちゃんって呼ぶ事にしたの。角がかわいいからツンちゃん。いいでしょ。」

と、教えてくれました。良い名前です。ソウタもよく考えてみることにしました。

「良い名前だね!そうなると僕のハヤマケラトプスはノコギリ竜だから、ノックってのも良いかな・・・?でもまてよ、苗字が僕と一緒と考えると、名前はケラトプスになるな。となると、やっぱり、ケラってことになるな。よし、決めた!やっぱりお前はケラだ!」

結局は最初に考えた名前で呼ぶ事にしました。サクラは、

「速間さんちのケラちゃんね!かわいい!」

と褒めてくれました。

「ケラよろしくな!」

ソウタはケラに話しかけると、ケラはソウタの方を見て

「フォー。」

と少し鳴きました。どうやらできたようです。

 ミクとケンジはハヤマティタンつける名前を相談していました。ケンジは

「ティタンの英語読みでタイタンなんかどうかな?」

とミクに聞きました。ミクは少し考えて答えました。

「とてもカッコいい名前だけど・・・。」

ケンジはなやみました。すると、ミクが言いました。

「英語っぽい名前なら、ジミーっていうのはどう?恐竜っぽくないけど・・・。」

「いいんじゃない!むしろ恐竜としてはむしろ個性的だよ!どころで、どうしてこの名前なの?」

とケンジが聞くと、ミクは慌てて、

「内緒・・・じゃなくて、思いつきよ!思いつき!」

と答えました。そして、話題を変えるように自分の相棒に声を掛けました。

「よろしくね。ジミー!」

寝ていたジミーは少しだけ首を上げて、眠そうに首を振って答えました。


 さて、ケイタの相棒にも名前を付けたいとこでしたが、こちらはそもそもの学名すらありません。どうしたものかと悩んでいると、ケンジが言いました。

「学名だけど、ニクスが良いと思うよ。ハヤマニクス。」

「ニクスって爪だよね。デイノニクスとかの。」

ケイタはピンと来ていませんでしたが、ケンジの話を聞いてみる事にしました。

「デイノニクスは足の爪から命名されたけど、この子の場合は手の爪、正確には翼の爪からとったんだ。ケイタ言ってただろ。なんか違和感があると思ったら翼に爪があったから新種だと気が付いたって。この爪がなければトロオドンに食べられて発見されなかったかもしれないだろ。だから一番大切なところだと思ってさ。」

ケイタは聞いてなるほどと思いました。それにハヤマニクス。確かに語感が良く、格好も良さそうに聞こえます。

「ありがとう!かっこいい名前だね。理由ももっともだし、ハヤマニクスにするよ!命名者はケンジだね。」

ケイタは学名案を決めることができました。

「今度はこの子の名前を考えなきゃ。」

ケイタは考え始めました。すると、今度はミサキが言いました。

「ソウタくんの相棒が速間さんちのケラちゃんなら、ケイタくんの相棒は、速間さんちのニクちゃんね!」

どうやら、名前も自然に決まってしまったようです。ケイタはゲージの中の相棒に聞いてみました。

「君の名前はニクで良いかい?」

「ア゙ー」

満更でもない。と思われる顔をしています。名前はニクで良さそうです。ケイタは早速名前で呼んでみました。

「よろしくな!ニク!」

「ア゙ー、ア゙ー!」

ニクはどうやら名前を呼んでもらって喜んでいるようでした。


 バスは森を抜け、トイレ休憩のおみやげ屋さんに寄ると、ようやく人の世界に帰ってきた感じがしました。

「もう町に戻ってきたんだね。」

ケイタか言うと、ソウタは答えました。

「ついに恐竜探検が終わっちゃうね・・・」

 またバスは走りだしました。果樹園の前を通ると、島りんこがなっていました。島りんこの季節もそろそろ終わりです。熟れた甘い香りがただよってきました。オルニトミムスやニクだけでなく、草食恐竜が鳴きだしました。

「フォー」

ケラが牛っぽい鳴き声で一度鳴きました。ソウタは、

「そろそろお昼かな?」

ケラに話しかけました。ニクも

「ア゙ーア゙ー!」

と騒いでいるので、ケイタがニクに

「お昼ごはんの時間まで、もう少しの辛抱だぞ。ガマンガマン。」

と話しかけると、残念そうに

「ア゙ー」

と鳴いてシュンとしてしまいました。

 バスは順調に進み、ついに本橋もとばし市に戻ってきました。

「ついに帰ってきたわね。」

サクラが言いました。ミサキは

「なんか疲れたね。」

と言って少し眠そうです。ユウトはいつの間にか寝ていました。みんな興奮がさめてドッと疲れが出てきたようです。花山先生は、

「みんな!あと少しだから、がんばって!」

ミクは、

「おうちの玄関の扉に入るまでが恐竜探検よ!みんな気を引き締めて!」

と言って、みんなを励ましました。


そろろそ、学校につきます。楽しかった恐竜探検もおしまいです。

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