第五話 よろしく相棒!恐竜探しを終えて

1-5その1

 恐竜探しが終わりました。観察基地に戻る車の中で、ケンジはケイタに向かって話しかけました。

「恐竜にたくさん会えて、よかったよな!」

ケイタも

「すごかったね!恐竜いっぱい助けられたし。」

と答えました。ミクが話に割り込んできて、

「うちのクラスは、特にたくさん助けられたし、ほんと良かったわ!」

と、鼻高々でした。恐竜がすっかり気に入ったサクラは、まだ物足りないらしく、

「明日帰るなんて、ちょっと残念。もっとたくさん恐竜を見つけてあげられたかもしれないのにね。」

と、少し寂しそうでした。ソウタは

「もっと探せば、まだまだ新しい恐竜が見つかるかも知れないよね。」

先ほどの新種発見の興奮もそのままに、熱く語ると、ユウトは

「オレのパッキーに早く会いたいぜ!」

早くも名前を付けられた、観察基地でお留守番中の相棒に想いを馳せました。

最後に、ミサキも会話に入ってきて、

「恐竜って、もっと怖いかと思ったけど、可愛いのもいたし、楽しかった!」

と、満足そうな笑顔でした。

 恐竜を捕まえられた子も捕まえられなかった子も、三日間の貴重な体験に大満足でした。そして、ついに終わってしまうとなると、寂しい気持ちが込み上げてきました。しかし、そんなことは言ってられません。これからは、大切な恐竜を育てなければならないのです。

「みなさん、恐竜探検はまだ終わってませんからね。恐竜を捕まえた人は恐竜を飼うにあたり準備が必要ですし、恐竜が捕まえられなかった人には譲渡会もありますからね。」

 遠山先生は言いました。まだまだ、寂しがっているひまはなさそうでした。


 観察基地につくと、他の学校の子どもたちはすでに戻ってきていました。ケイタたちのクラスは新種を発見したりして遅れていたので、大急ぎで昼食を食べなければなりませんでした。

 そしてまずは、自分で捕まえた恐竜の健康診断です。

 みんなが捕まえた恐竜は、一時保護室で預かってくれているので、引き取りにいきます。ユウトはゲージに入ったパキケファロサウルスにむかって、

「パッキー元気だったか?」

とさっそく声をかけていました。サクラやソウタ、ミクとケンジも自分の恐竜を引き取り、臨時の恐竜医務室になっている小会議室一に移動しました。ここでは数人の獣医さんが手分けして、身体測定、健康診断、血液検査、予防接種を順番に行います。

 検査では、ソウタのハヤマケラトプスはフリルを振り回し切りつけようとしますし、ユウトのパキケファロサウルスは隙あらば頭突きをかまそうとして、まったく落ち着きがありません。しかし、獣医さんも手慣れたもので、

「あら、元気な子ね!」

などと言いながら、下アゴの付け根とおでこをうまくつかんで口を開けたり、後ろ向きにわきに抱えておしりから採血したり、まさに職人技をつかって上手に検査していきました。

 一方、サクラのトリケラトプスやミクとケンジのハヤマティタンは大人しいもので、素直に従っていました。こちらはこちらで獣医さんは

「素直ないい子ね!」

などと話しかけながらあごの下やおでこをなでながら、検査していました。

 恐竜にも個々の性格があり、反応もいろいろなようです。

 最近は恐竜の病気についてもいろいろわかってきており、ワクチンもできています。恐竜と一口に言っても、本当は哺乳類とほぼ同じぐらいの多様性があります。ですので、種類ごとに異なる予防接種が必要です。最近では獣脚類三種に鳥インフルエンザ感染例が認められ、定期的な予防接種が必須になったりしました。

 ソウタたちの恐竜はみんな、獣医さんに体のすみずみまでみてもらい、血や便も検査し、予防接種もして健康だとお墨付きをもらいました。

「パッキー、痛くなかったか?」

ユウトは相棒のパキケファロサウルスをなでてやりながら話しかけました。

「クゥワー」

さっきまでいろいろいじられて興奮して暴れていたパッキーでしたが、ユウトになでられると、不思議とおとなしくなりました。それを見てソウタは、

「ユウトすごいね!もうなついてるじゃん。」

とびっくりしました。ケンジも

「もう、恐竜と仲良くなっているなんて、うらやましいな。」

と感心していました。ユウトは胸を張り,

「なんてったって、おれはこいつの命の恩人だからな。」

と、自慢げに語りました。それを見てミクは、

「何言ってるのよ。自分で勝手に沼へ突っ込んだんでしょう。危なかったんだから、本当に気をつけないと!」

と、先生みたいなことを言って注意しましたが、ユウトは負けずに、

「しようがないじゃないか。そうしないとパッキーを捕まえられなかったし。結果オーライさ!」

と開き直って言い返し、ミクをあきれさせていました。

 そうはいっても、パッキーはユウトにとてもなついていました。まさに相棒と言っても過言はありませんでした。

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