1-3その2

 ヤンチャなユウトに頭突きの得意な堅頭竜、なかなかお似合いのコンビです。


 大変な事件(事故?)がありましたので、パキケファロサウルス探しの時間はあっという間に過ぎてしまいました。

 遠山先生は

「時間が押しているので、次のコロニーに行きましょう!ここから少し歩きますよ!」

と言ってみんなの先頭に立ち歩き始めました。

 道は湿地の真ん中を抜けており、所々に沼があります。途中の沼のふち歩いているとき、ケイタは白く丸いものが落ちているのを見つけました。よく見るとたまごのようです。

「先生、たまごが落ちてます!」

「おやおや、これは迷子の恐竜のたまごですかね。」

遠山先生は答えてくれました。

「何の恐竜のたまごですか?」

ケイタがたずねると、遠山先生は首をひねりながら、

「きょうりゅう島の恐竜のたまごはみんなよく似てるので、パッと見ただけでは意外と分からないのですよ。化石では恐竜の種類によってそれなりに違いがあるのですが、この島の恐竜の卵はなぜかみんな、白くて細長いのです。しかも、この島ではワニのたまごまで、若干小さいですが、何となく似ているのです。」

「持って帰れば、恐竜が生まれるんじゃないですか?ワニかもしれないけど。」

ケイタが提案すると、遠山先生も

「一応持ち帰ってみましょうか。明らかに巣の中にはないので、法的にも問題ないでしょう。でも、今の時期まで孵化しないということは、ちょっと難しいかもしれませんね。」

そういって、たまごをバッグの中へ大事にしまいました。きょうりゅう島では、恐竜のたまごを巣から許可なく取ることは法律で禁じられているので、こういった場合でも細心の注意が必要です。

 そこへ、今度はミサキが質問しました。

「何でこんなところに落ちてたのですか?」

すると、ユウトが割り込んで勝手に答えました。

「きっと、たまご泥棒が盗んできたんだよ。」

遠山先生は笑いながら、

「いい線いってますよ!大方、肉食恐竜が食べようとして、他の恐竜の巣から盗んだのでしょうね。」

 ユウトは、今日、調子が良いようです。

 遠山先生はさらに続けて話しました。

「でも、ひょっとしたら、絶滅したテスケロサウルスのたまごかもしれませんね。」

「テスケロサウルス?聞いた事ない恐竜だわ。」

ミサキは考えながら言いました。

「テスケロサウルスは、これといった特徴が少ない、比較的原始的な姿を残した小型の鳥盤類で、水辺に多く住んでいました。ちょっと昔には、この沼地のまわりにテスケロサウルスの巣がたくさんあったんですよ。」

遠山先生はちょっと悲しそうに話を続けました。

「このテスケロサウルスや同じように比較的原始的な角竜のレプトケラトプスといった小型の恐竜は、ジャングルのいたるところにいました。しかし、人がこの島に来て以来すごい勢いで減ってしまい、今では恐竜園にしかいなくなってしまったのですよ。」

「人間が捕まえちゃったの?」

ミサキは聞きました。

「いえ、人間と一緒に来たネズミのせいと考えられています。獲物としてちょうどよかったのでしょう。今では入れ替わるようにネズミがジャングルのいたるところにいますね。生態系の一部が、ごっそり入れ替わってしまいました。」

 みんなが歩く先々で、よくカサカサッと音がしました。それは多分、ネズミが逃げる音なのでしょう。


 程なく、

「ブワォー、ブワォー」

と鳴き声が聞こえてきました。その声は進むほどにどんどん大きくなります。

「ブワォー、ブワォー、ブワォー!」

「ひゃー、大きな鳴き声!」

「エドモントサウルスの鳴き声に似てるけど、声が大きい!」

 おなかにひびく鳴き声に、みんなびっくりしています。

 遠山先生はみんなに聞こえるように大声で話しました。

「今度の恐竜はヒパクロサウルスです!エドモントサウルスと同じ鳥脚類ですが、大きなトサカがあります!トサカの中で反響させるので大きな鳴き声が出せるのです!」

 まずは、他の恐竜と同じようにコロニーを観察です。エドモントサウルスとよく似ていますが、頭にウルトラマンのようなとさかがありました。チョロチョロ遊んでいるあかちゃん恐竜の頭にも小ぶりながら、ちゃんとついていました。そのせいかあかちゃんの鳴き声も心なしか大きく聞こえました。

「あかちゃんも騒がしいのね。」

ミクはポツリとつぶやきました。

 さて、ヒパクロサウルス探しの開始です。ユウトはソウタに対抗するため、二頭目をねらい気合いを入れて探しました。手慣れた感じで、姿勢を低くして草かげを一ヵ所ずつていねいにのぞいていると、いました、ヒパクロサウルスのあかちゃんです。あの大きな声がウソのような、小さなあかちゃんがブルブルふるえていました。

「よっしゃ!ニ匹目ゲットだぜ!」

ユウトは今日二頭目の恐竜を捕まえて、ノリに乗っていました。

「誰かほしい人!」

ユウトが大声をあげると、

「僕にちょうだい!」

「俺にくれ!」

「私も!」

何人か名乗りをあげました。

そこで、花山先生が

「ジャンケンで決めましょう!ほら、欲しい人は丸くなって!」

と仕切ってくれました。

「ジャンケンポン!」

勝ったクラスメイトにユウトは、

「俺が捕まえたヒパクロサウルス、大切に育ててくれよな!」

と、得意満面の笑顔でヒパクロサウルスを渡しました。

 ヒパクロサウルスを探し終わったら、車が止めてある所まで歩いて戻り、昼食のため一旦、観察基地に戻りました。

「恐竜探し名人のユウト様が、午後も捕まえてやるぜ!」

ユウトは行きとはうって変わってテンション高く、帰りの車の中ではずっとしゃべっていました。しかし、花山先生に

「今後は、絶対ロープの外に出ちゃダメよ!」

と釘を刺されると、さすがにしゅんとなっていまいました。

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