第二話 恐竜捕獲!恐竜探し初日

1-2その1

 次の朝、ケイタとソウタはまたまた早起きでした。と言うか、頭は恐竜の事ばかりで、考えているのか夢を見ているのか区別がつかす、寝たのかどうだか定かではありませんでした。男子はみな同じようで、ケンジにいたっては寝るのをあきらめて、すでに洗面所に行き歯を磨いていました。

「起床時間まで、まだ一時間もあるよ。」

「さすがに早すぎたね。」

「じゃあ、恐竜探しの準備でもするか。」

「まず、歯を磨いて着替えなよ。」

「やばい、軍手忘れた!」

「今日はどの恐竜に会えるのかな?」

「オレが一番にみつけてやるぜ!」

まだ朝焼けの時間というのに、男子たちはいつものようにワイワイし始め、次第に声も大きくなっていきました。

 そして、その声はついに女子の部屋にも到達し、学級委員のミクの訴えにより先生に伝えられ、いつものごとく花山先生に怒られました。

「男子、静かにしなさい!まだ寝てる人もいるのですよ!」

 しかし、花山先生も寝ぼけていたのか、ミスをしてしまいました。部屋のドアを開けっぱなしで大声で怒ってしまったのです。花山先生の怒声は廊下に響きわたりました。すると、たまたま通りかかった、夜通しの観察から戻ってきた外国の研究チームの人に、

「センセイモ、シズカニネ。」

と日本語でからかわれしまったのです。

 その結果、男子たちは直ちにロビーに集合させられ、早起きした分だけこってりしぼられる事になってしまいました。


 男子にはいろいろありましたが、時間的には身支度も朝食もちゃんと予定通りにこなすことができました。

 恐竜探しはだいたいクラスごとの単位ぐらいに分かれて行きます。一ヵ所にたくさんの人が行くと恐竜が驚いてしまいますし、遠くへ探しに行く場合は児童が十人くらい乗れる4WDの車でないと行けないからです。ケイタとソウタの学校は県庁所在地のど真ん中にあり、逆に生徒が少なく一クラスしかないので、みんな一緒です。みんなは観察基地の前に整列して、出発の時を待っていました。

「いよいよ、恐竜にあえるね!」

 サクラはミサキに話しかけました。夏休みにトリケラトプスの世話をしてからというもの、恐竜を大好きになったようで、女子の中では、ダントツでわくわくしているようです。しかし、ミサキは

「恐竜が襲ってきたりしないよね?」

やはり、恐竜もジャングルも少しこわいようです。他の女の子でも、ちょっと怖がっている子が多いようでした。

 そこへ、学級委員のミクが話に入ってきました。

「きっと大丈夫よ!子どもなら襲ってこないと思うわ。それに恐竜の保護は大事よ。みんなも頑張りましょう!」

ミクも実は恐竜が得意というわけではありませんでしたが、学級委員という立場上、勇気を出してみんなを励ましました。怖がっていた女子たちも、ちょっとだけ前向きになったようです。

 サクラもミサキに言いました。

「大丈夫よ!ミサキちゃんは「おチビちゃん」と仲良しだったじゃないの!」

ミサキは飼育体験のとき、ストルティオミムスの「おチビちゃん」に懐かれて、最後は抱っこしてあげるぐらいでした。でも、ストルティオミムスは羽毛がありますので、小さなダチョウみたいなものです。しかも、歯もないので、そんなに怖い感じがしません。

「だってあの子は小さかったし、鳥さんみたいだったし・・・」

ミサキはまだそんなことを言っていましたが、サクラは

「ペロちゃんは大きいけどかわいいじゃない!大丈夫よ!仲よくなれば。さあ、行きましょう!」

と励ましました。

 なお、実は男子の中でもジャングルが怖い子はいたようです。しかし、ケイタやソウタをはじめ、ジャングルを怖がるどころか突っ込んでいきかねない子ばかりの中、かっこ悪いところを見せられなかったようです。


 遠山先生が整列した生徒たちを数えて、大きな声で言いました。

「みんな揃いましたね。それでは行きましょう!」

 ついに、恐竜探しに出発です。

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