1-1その4

 そして、夏休みがあけた秋、ついにジャングルまで恐竜を探しに、つまり恐竜探検に行けるのです。恐竜はほとんどが春から夏にかけてたまごをうむので、秋にはうまれたてで弱い恐竜のあかちゃんがたくさんいます。迷子のあかちゃん恐竜を助けてあげるにはちょうどよい時期でもあります。

 ケイタとソウタは学校に着くと、すぐに集合場所の校庭に行きました。

「おはよう!」

近所に住む幼馴染のサクラやミサキは、もう来ていました。

「おはよう!いよいよ、恐竜探検ね。」

「おはよう、今日は早いね。眠れなかったんでしょ。」

ソウタは、

「ヘヘヘッ」

ケイタも、

「まあね。」

図星だったので、照れ笑いをしてごまかしました。

 みんなぞくぞくと登校し、校庭に集まってきました。活発なソウタに何かと張り合ってくるユウトが、さっそくちょっかいを出して来ました。

「恐竜、絶対お前たちより先に見つけるからな!」

「おう。がんばれよ。」

「ティラノとか、バンバン見つけるからな!」

「発見されてないし。」

ソウタが適当にあしらっていると、今度は勉強が得意なケイタと気が合う、ケンジが話しかけてきました。

「やっと野生の恐竜に会えるんだぜ、ワクワクするよな。」

ケンジは恐竜が大好きで、恐竜の授業ではなんでも率先してこなしていました。しかし、今日はケンジはちょっと元気がありませんでした。心配になったケイタはケンジに聞きました。

「なんか、元気ないね。熱でもあるの?」

「ケイタんちはいいよな。恐竜、飼えるから。」

「どうしたんだよ。急に。」

「うちは親に「マンションだから無理」って言われちゃったよ。」

ケンジは心底残念そうに言いました。どうしても恐竜を飼いたいケンジはずっと親を説得していたのですが、ついに結論が出てしまったようです。

「そうか、残念だね。。。でも、いつもみたいに、うちに遊びに来なよ。ソウタのもいるから、二種類の恐竜に会えるよ!」

「ありがとう。何を飼うのか決めたのか?」

「まだ決めてないんだ。ソウタは角竜らしい。」

「じゃあ、トリケラとハヤマで、対決させようぜ!」

「それいいね!って、恐竜虐待でつかまるよ。」

ケンジもケイタと話して、少し元気が出てきたようです。

 男子はみんな、恐竜探検を前に興奮気味で、わいわい騒いでいました。

「男子、いつまでも騒いでいないで、ちゃんとならびなさいよ!」

学級委員長のミクが注意をしました。女子はすでにちゃんとならんでいました。最初はケイタやソウタの話を聞いていたミサキやサクラもいつのまにかちゃんと列にいました。恐竜探検係で責任感の強いケンジはすぐに、

「男子もちゃんとならぶぞ!」

と、みんなに声をかけ始めました。ミクもケンジといっしょに男子を注意してまわりましたが、ぜんぜんまとまりません。しかも、ユウトとソウタは

「おまえ、先に見つけるなよな!」

「知らないよ。ユウトがちゃんと先に見つければ良いじゃん。」

とかなんとか、まだ言い合っていました。

ここで、さすがに、担任の花山幸子先生がきつく注意しました。

「コラ、男子!ちゃんとならびなさい!恐竜探検に行けなくなるわよ!」

先生に怒られて、ようやく男子たちもあわててならびはじめました。困った男子たちです。

 四年生全員が整列したので、ようやく出発の会が始まりました。ケンジは恐竜探検係なので、司会です。

「恐竜探検出発の会を始めます。最初は校長先生からの見送りの言葉です。」

ケンジは大きな声で話しました。校長先生が朝礼台に立つと、

「気をつけ!礼!」

ケンジは号令をかけました。

「おはようございます。みなさん、ちゃんと朝ご飯はたべましたか?今日はついに恐竜探検に出発する日です。忘れ物はありませんか?恐竜探検の歴史を紐解くと、島に恐竜が見つかって以来・・・・」

校長先生の話は、(どこでもそうかと思いますが)とても長かったですが、楽しんできてほしい事と安全に帰ってきてほしいという気持ちは、とても伝わってきました。

続いて、花山先生が朝礼台に立ち、あいさつの後、今日の予定と注意事項を発表しました。実は花山先生は新卒でしかもきょうりゅう島出身ではないので、恐竜探検は初めてです。実は、ジャングルも野生の恐竜もちょっと怖いのですが、そこは生徒にバレずにすんだようでした。


 出発の会は無事終了しました。いよいよ出発です。みんなは期待を胸に、バスへ乗りこみ、恐竜のいるジャングルに向かいました。

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