第一章 恐竜探検の巻
第一話 さあ、出発!恐竜探検
1-1その1
ケイタとソウタはきょうりゅう島にすむ、小学四年生のふたごの兄弟です。
二学期が始まってしばらくたった月曜日の朝。普段よりずいぶん早く目覚めたソウタは、
「いよいよ今日は恐竜探検だ!」
朝から大きな声で叫びました。ケイタもそれに答えて
「ついに出発の日が来たぞ!」
とこれまた、朝から大きな声で叫びました。
今日は待ちに待った、恐竜探検にいく日です。二人は飛び起きて、パジャマを脱ぎ捨てシャツとズボンを間違えそうなぐらいすごい勢いで着て、子供部屋から飛び出し、バタバタと階段を下って、一階のダイニングに向かいました。
恐竜探検とは、ジャングルの中の宿泊施設に泊まり込み、迷子のあかちゃん恐竜を保護する活動で、島の四年生なら全員参加する学校行事です。普通の小学校でも四年生や五年生になるといわゆる移動教室とか林間学校みたいなものに行くと思いますが、きょうりゅう島の小学校では恐竜探検が、それにあたります。
「あら、二人とも今日は早いわね!」
お母さんは二人の早起きにびっくりして言いました。
「今日はなんで言ったって、特別な日だからね!」
「恐竜探検の日だよ!早く学校に行かなきゃ!」
二人は朝からテンションがとてつもなく上がっていました。
「ちょっと落ち着きなさい。」
お母さんは心配しながら言いました。
「朝から騒がないの。顔洗ってらっしゃい。朝ごはんできてるわよ。」
お母さんはいつもよりも早起きにもかかわらず、いつもと同じように朝ごはんを用意してくれていました。二人ともいつもはギリギリまで寝ているので食べる時間はほとんどありませんが、今日は時間がたっぷりあります。ゆっくり食べても良いはずですが、二人はいてもたってもいられず、朝ごはんをすごい勢いでかきこんでいました。
お父さんは新聞を読みながら、
「おいおい、早起きした時ぐらい、ゆっくり食べたら良いのに・・・」
と、あきれていましたが、二人は聞こえているのかいないのか、朝ごはんを速攻で食べ終えると、大きなリュックを背負って、
「父さん、母さん、行ってきます!」
と同時にさけび、二人で競うように家を飛び出していきました。
お母さんが、
「忘れ物、大丈夫?」
と聞いた時は、もう、玄関の扉はバタン!と閉まり、二人はお母さんの声が聞こえないぐらい遠くまで行ってしまいました。
早起きは三文の徳と言います。恐竜探検ではなんか良いことあるかもしれません。
ケイタとソウタは小走りで学校に向かいながら、恐竜探検のことばかり話していました。
「ソウタはどんな恐竜が飼いたいの?」
「そうだな、父さんが発見したハヤマケラトプスがいいかな、トリケラトプスもいいし・・・でも角竜にするのは決めているよ。ケイタは?」
「まだ決めてない。だれも飼ったことがない恐竜とか、あこがれるなぁ。」
「ティラノサウルスとか発見したりして!」
「見つけたら大発見だね!でも、ティラノサウルスはちょっと怖すぎる。。。」
そんな話をしながら、足早に学校へむかいました。
恐竜探検は、恐竜を保護、飼育していく過程の第一歩です。今後、大切な恐竜を扱うことになりますので、その準備はこの日を目標に学校の授業を通じて十分と行われています。ケイタとソウタたちも学校で恐竜についていろいろ勉強をしてきました。
まず、恐竜を育てるには、恐竜のくらしぶりを勉強しなければなりません。ですので、ケイタとソウタたちは、三年生の時から週に二時間ある恐竜の授業で、恐竜の生活についてみっちりと勉強しました。餌の種類や好きな食べ物、餌やりの時間や寝る時間、糞の世話や清潔の保ち方、さらに運動のさせ方や野生に戻るための練習方法など、育てるにあたって必要なことを一から十までみっちり教わりました。なお、島にいる恐竜は一種類ではありません。餌も肉食、草食、雑食では全く異なります。さらに体つきも種類によって全然違ってきます。ですので、種類ごとに違うことは全部覚えなければなりません。しかも、理不尽なことに時々筆記のテストまでありました。恐竜に触れることなく、勉強ばかりしなければならないので、ソウタなどはこの一年間で危うく恐竜のことが嫌いになりかけそうでした。
四年生になると、いよいよ恐竜探検が近づいてきますので、より深い知識を学びます。まずは、恐竜の体の構造について学びました。恐竜の体は哺乳類とかなり異なるので、イヌやネコそして近親な生き物である鳥などと比較しながら恐竜ならではの体のしくみを学びました。また、恐竜を飼育するのにより実践的な知識として、かかりやすい病気やおこしやすいケガなどの体調管理について教わりました。これが一学期の間、続きました。
夏休みに入ると、いよいよ本物の恐竜の世話を練習できるチャンスがあります。夏休みの三日間、恐竜センターに通って恐竜飼育員さんの手伝いができるのです。夏休みのイベントなので希望者のみの参加なのですが、貴重な体験なので四年生のほとんどは参加しています。
もちろん、ケイタとソウタもクラスメイトと一緒に参加しました。
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