第7話. 解き放たれし暗獣

 わたくしの名は、<ベルナドット=ベルフォージュ=マンドレル>。


 この国の……いえ、歴史に名を刻む男です。


 これまでの実績からでも十分とは思うのですがね。

 何せ“最強の鎧”ライリーを生み出したのは、このなのですから。


「ベルベルマン、コイツを組み込めば良いか?」

「えぇその通りです。“うっかり”なんて無い様に、くれぐれも頼みますよ?」

「わーってるって。八鋤なんぞと一緒にすんない!」

「その意気です」


 どうもわたくしの手柄を、あの“八公”のに拠る偶然だとか、

 最近じゃあ、だなんて囁く輩も噂に聞く。

 

 許せませんね~。


 だからわたくしは、

 今回、“最高傑作”を造る予定でしてね。

 しかもコイツに、然るべきと、

 ある重要な任務を遂行させるつもりなのですよ。


 キヒヒヒヒヒヒ……! 

 笑いが止まりませんね~!!


 なぜ最初からこんな簡単な事に気付けなかったのでしょうか?!


 何も膨大な期待と時間を偶然と言う運に費やす必要など無かった!

 神秘の獲得ならもっと身近で、より効率的に得る事が出来るのだからっ!


 もう“偶然”の産物だとか八公に拠る“必然”だとか、不毛な議論は必要ない。

 この粛清で、わたくしがやったという“事実”だけが残る。

 なんなら、わたくしの血を継がせればよい――あぁ!それは良い!

 

 キヒヒヒヒヒヒ!

  楽しみです!!


 早く会いたいよ、ライリー、愛しのライリー。

 わたくしは君の写真をこうして肌身離さず持っているのですよ。

 これを見る度にわたくしは、わたくしは……高まる興奮を抑えられないっ! 


 ああライリー!

 ライリーライリーライリーライリーっ! 

 ああああああああーーーっっ!!


 あふぅ……。


「おいベルベルマン! な、何なんだコイツぁ……」

「どうされました?」

「どうしたもこうしたもねぇ! コイツを見やがれっ!!」


 そこには、頭に双角を生やす男の子が居ました。

 まぁ、そうでしょう。


 ですが、皮膚の色は闇の様に深く、それでいて金属光沢もある。

 蝙蝠に似た翼、サソリの様な尾、爪も恐ろしく鋭い。


「コイツは、コイツは、まるで“サタン”だ! いやサタンそのものに違いねぇ! アンタ……なんてものを組み込んじまったんだ!?」


 なんてもの?

 さぁ……わたくしにも判りません。


 だってそれ、八公の部屋にあったものですから。


 わたくしはあの標本棚を見た時、正直深い嫉妬に駆られました。


 瓶には一つ一つきちんと名札が貼られ、そこにはこの国では未確認の生物検体まで管理されてました。しかもなぜか、保存状態がどれも素晴らしい。


 なんであんな奴がっ!

 このわたくしが、ストックや才能で劣るなど、


 だから決意したのです。

 ここにある全ての標本とイリドアリナメクジを合わせれば、奴の上を行くはずだ。


 ただ、あの標本にはたった一つだけ、名札が無いものがありました。 

 とても気味が悪く、瓶に触れる事さえ怖かった。

 あぁ、今思い出すだけでも反吐が出そうだ。


 ですがね、私は負けたくなかったのですよ、あんな八公などに。

 そう、だからこれは言わば、わたくしの欲望の火から産まれた魔神。

 そして忠実なる僕……。


「やれ」


グシャ


 そう、この子の秘密は守らねばならない。


「良い子ですねー。良ーく弁えている。良いでしょう、次の標的は……」



(続く)


 


 

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