第6話. 灯を守る
「ライリー! ラディッツ!、ゴールディーエルレオン! この3名は居るかーっ!」
コロニー所長、<エドワード=ヴァン>は声を荒げた。
彼は人手を必要としていた。
緊急の任務、乃ち『救世の14使徒』たちの住居を準備する為である。
現在コロニーはエニナメ襲撃の影響で人員が少ない。
その為、コロニー住民全員で取り組む必要があるのだが、この3名だけ行方が分からなくなっていた。
(エルレオンはともかく、アイツら二人はフラッとあっちに戻るからな。エルにもそれが
エドワードはエルの教官をライリーに委ねた事に後悔しつつ、半獣人管理庁本部へ連絡を取り、至急3名の確認と帰還を要請した。
◇
「ライリー、ラディッツ、ゴールディーエルレオンの3名ですが、こちらに戻った形跡はありません」
「他に何か手掛かりは? 彼らが共にどこかへ行く情報は、家族から得られ無いか?」
「いいえ。ただ……関係があるか定かでは無いのですが、ラディッツの父親が行方不明になっています。それと八鋤科学技士も」
「何?」
「実は、こちら二人の失踪には様々な憶測が出てまして……ここだけの話ですが、一部の科学者達から、その3名の遺伝子を採取する話が出ています。場合によっては強硬な手段を使う事も辞さない構えでして……」
「つまり……彼らを捕らえる半獣人を送り込む、と?」
「えぇ、しかも特別なやつを」
エドワードはピンと来た。
それは十中八九、“エニナメ形質”を獲得した半獣人だろう。
ステルス性能は抜群だ。
だが気になる事はもう一つの方、
「彼ら3名の手術には全て、八鋤科学技士が執刀しているな」
「……」
科学の大発見や、天才の誕生というものにはよく、“偶然”という言葉が使われる。
なぜなら、失敗と思ってた事が新たな発見に繋がったり、ごく平凡またはそれ以下の家庭や環境から神童が生まれたりするからだ。
ライリーやラディッツも当初はその類と考えられていた。
しかし今では、その3名はむしろ“必然”と視る者も居る。
ではその目的は何か?
八鋤の考えている事はエドワードにも判らない。
しかし、今はそれより、と頭を切り替えた。
「……ライリー達の行方だが私には心当たりがある。もし彼らの探索隊が準備されたら、私から直接話をするから上層部にはそう伝えてくれ。あと、出来れば
住居建築に必要な人員を優先して欲しいともな」
「りょ、了解しました! 何か書置きでもあったのですか?」
「いいや。だが彼らの、いや、半獣人の矜持というものを考えれば自然と判る」
「そ、そうですか……では上層部にはその様に伝えます」
「あぁ、そうしてくれ」
通話を切るとエドワードは、“ふぅ”と溜息を吐いた。
恐らく上層部、いや人間には、“半獣人の矜持”など理解出来まいと、そう考えていた。と同時に、上からの指示も無しに、自発的に行動に出たライリー達を誇りにも思っていたのだ。
(アイツらの行き先? そんなの決まってる。行方不明になっている仲間の探索以外考えられん。そうだろう、ラディッツ)
エニ沼の方角を眺めるエドワードの口元は、自然と緩んでいた。
(さて、アイツらの尻拭いは私がきっちりしておかねばな。無事、戻って来いよ。いや或いは……生き延びてくれさえいれば、それで良い)
エドワードは右の拳を胸に当て、暫し夢想する。
ラディ達が無事ミミらを発見し、この秘境で自由に幸せに暮らしている風景。
パッと目を見開いたエドワードは、頬を両手でバチンと叩いた。
「こっちの事は任せとけ。お前らもしっかりやるんだぞ!」
(続く)
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