第5話. 蛇の王
ふふ……良~い緊張感だ。
視えてるんだろ? てめぇにも、アタシみたいに。
周りとは温度の違う姿がなぁ。
最近目覚めた能力だ。
アタシは本当に、この体に生かされている。
◇
アタシの家は、貧乏だった。
その上、子だくさんでアタシは長女、5人姉妹弟だ。
でも両親は明るく優しかったし、アタシは幸せだった。
貧乏ってさ、買える物は少ないけれどその分、家族の絆は深まる気がするんだ。
アタシに適正があると判ったら、両親とも少し困ってた。
結局アタシは半獣人になり、家は月並みな生活が送れる様になった。
ただ、アタシと家族は離れ離れになった。
幸せってさ、自然と同じで、どっかで釣り合いが取れてんのかもな。
だからアタシは、今の自分を目一杯エンジョイする事にした。
この体の特性を目一杯利用して。
「君の体には、素晴らしい“血”が混じってる。うまく目覚めると良いなぁ」
そんな事言ってたのは、はっちゃん。
アタシの手術に携わった科学技士の兄ちゃんだ。
実際、訓練後の身体検査じゃ「獣化遺伝子の発現連鎖 特A。適合度 特A。ランク 特A」と診断された。
因みに“特A”なんて基準はそれまで無かった。
だから検査官はアタシを“天からの授かり物”と評してた。
アタシがエンジョイ出来るのは、この体のお陰。
だから偶然とは言え、はっちゃんには感謝している。
けれど、本当に凄い“血”を自覚したのは、つい最近の事だった。
◇
漸く姿を現わした奴は、鎌首を
体温から大きさは察していたが、間近で見ると迫力が違う。
面白ぇ!
戦斧を握る手に力が入る。
体が熱い。燃えているみてーだ!
大蛇はアタシをジッと睨んでいた。
すると、
Shiiisyasshii Syahaaa!
ノイズの様なその不気味な響き、驚く事にアタシの頭はそれを言葉と理解した。
Shuhuuou Syahaaah!(効くかよっ、んなもん!)
アタシは“蛇語”で返していた。
すると続けて奴はアタシに話しかけて来たんだ。
「驚いた……主ぁセルペンティシュを使えるのかえ? わっちの催眠も効かぬとは、おかしおかし、いとおかしじゃ」
奴の視線がふとずれた。
だがそれは体を大きく捻り、鋭く
ビュオォォッ!
しゃらくせえっっ!!
アタシは両手で握った戦斧を頭上より、唐竹割に振り落とす。
「うりゃあぁぁーーっ!!」
燃える様な体の灼熱が、握りを伝いその刃先を、焼け付く炎と化していた。
ズバッ! ジュウゥゥゥ……
別断れたその切り口は黒く焼け焦げた面となり、尻尾がまるで生きてる様に苦し気に大地の上をくねらせていた。
「クフフフ、主の強さ正に“伝説級”。主ぁ憎き“血”を持っとるのぅ。許し難き
「けっ!王だか何だか知らねーが、一昨日来やがれっ!!」
「わっちの下へ早う来い。標は付けようぞ。寄り道するなよ? 主らを襲う奴など居るまいて」
そう言って、奴は静かに退いていった。
どうやらアイツはアタシの血の主を知ってるらしい。
しかもどうやらその主と因縁もある様だ。
面白れぇ。
アタシは目の前に現れる敵をぶっ潰すだけ。
だってそれが、アタシの生き甲斐だからな。
(続く)
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