第8話. 異変
ここは秘境にある半獣人特設コロニー。
いわゆる半獣人用の居住スペースだ。
名前は大層立派だが、簡素なテントや木小屋が拵えられただけのキャンプ地だ。
あっちじゃオイラ達はどんどん
そのうちここももっとデカくなる。
母ちゃんが居ないだけでここも住めば都さ。
因みに人間の体にゃ秘境はまだまだ過酷だ。
色々理由は判っちゃきてるが、不明な点も多い。
ま、互い様の状況は続いているってこった。
オイラは部屋で寝転びながら、手帳のページをパラパラ捲って眺めていた。そこには手書きのヘンテコな“絵”や、見た事無ぇ“文字”がびっしりと書かれていたんだ。
するとそこに、気になる描写を見つけた。
「あれ? コイツはひょっとして……キンエニガエルか?」
そのページには読める字で『キュステンジルの天空墓墳?』と書かれていた。
聞いた事がある。
この国の北方、キュステンジル地方には昔から霊峰と崇められる山がある。
その山の頂には、誰が、どうやって造ったのか未だ謎の石造建築物がある。
調査の結果、石の棺が見つかったのでどうやら墓だと結論付けていた。
だが、棺の中は空っぽだったんだってよ。
それじゃあ墓かどうか分からねぇとオイラは思う。
八ちゃんもそう思ったに違ぇ無ぇ。
どうやらこの手帳には色んな遺跡の壁画が模写されてるみてぇだな。
んで、コイツはその『キュステンジルの天空墓墳?』に描かれていたって訳だ。
沼が描かれている。
その沼の奥底にデッケェ扉があって、その扉の脇にキンエニガエルが立っている。
まるで……門番だな。
そしてその扉の向こうには何やら手も足もない、顔すらあるのかよく判ら無ぇ……いやそもそも生物なのかも察し難い、変な物体がたくさん描かれていた。
うぅむ、だがよぅ……これが確かなら八ちゃんの言ってる事は合ってるかもしれねぇ。少なくとも古代人は秘境を旅した連中ってこった。
そん時だ。
ウィーーン
ウィーーン
ウィーーン
緊急招集のサイレン!
オイラは手帳を上着の胸ポケットにしまい、急いで外に飛び出した。
◇
「緊急事態だ! 未確認生物が広範囲に渡り秘境生物を食い荒らしている!」
コロニー長の、緊張した面持ちがハッキリ判る。
どうやら偵察に向かった同胞も既に何名かやられているみてぇだ。
なんでも、エニ沼の方角から大量にそれが確認されているらしい。
「このままだと数時間後には人間居住エリアに出脱しかねん! その前に何としても喰い止めろっ!!」
おかしいな。
オイラが未だ何の気配も感じ取れ無ぇだなんて……。
それにエニ沼からってぇのも気になる。
主は倒したんだ。
だったら普通、沼に向かって強い奴らが集まるんじゃ無ぇのか?
とにかくこうしちゃられねぇ、早く止めなきゃ!
そん時だ。
「お! 居た居た。ラディッツー! 組もうぜーアタシらと」
後ろから声をかけて来たのはあのライリーだった。
ライリーの後ろにはもう一人、まだ幼い感じのガキンチョが連いていた。
(続く)
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