第5話. 試練

「うらぁぁあ!」


 ライリーの声だっ!


 思わず外へ飛び出すと、とんでもなくデケェ黄金のカエルが、長い舌をライリーに伸ばしている。ライリーはそれを戦斧で弾き返していた。

 

「ライリー!無茶すんなっ!」

「ハンッ、これがアタシの生き甲斐さ! 他の二人はやられちまったがなぁ!!」

「その二人はどこだ?」

の腹ん中だよっ!」


 はぁっ?!


 ……ったく、コイツはが無ぇっ!!

 

 エニガエルの体色は普通、沼と同じ泥茶色。

 だからあれがなのは違ぇ無ぇ。

 恐らくは、金のオタマジャクシの成長体。


 すると突如、あの長い舌がその矛先を変えた。


うわあぁぁあっ!!


「「!」」


 その叫び声はあのサソリ女のものだった。

 キンタ……いや、黄金ガエルに飲まれちまった!


「きっとあの光を浴びたのさ」

「光?」

「カエルの体が光ったんだ。それを浴びると体が痺れて動けなくなる。うちの二人もそれでやられた。アタシは一足早く身を隠せた。アンタの指示のお陰さ」


 そうか、沼に浮かんだ魚は光を浴びてああなった。

 すると周囲に雑魚しか居無ぇのは、奴に食べられちまったからか!

 御馳走とばかり飛び込んだ連中は、アイツにゃ飛んで火に入る夏の虫って訳だ。


「ちょっとディ~ディ~どーしよー。コルピィが飲まれちゃったよ~」

「ちょっと許し難いな、許し難いね。力を貸してくれるかい、ミルル」

「え~、じゃあ“愛してる”って言って~」

「“愛してる”よ、ミルル」

「えへ」


 少し離れた場所に居るアイツらの会話も、オイラにゃ筒抜けな訳だが……。

 何やってんだ、アイツら。


「何やってんだー? アイツら」


 ライリーがそう言うのも無理は無ぇ。

 急にDDがミルルをおんぶし、中腰に構えている。 

 そうしてる間に、黄金ガエルがあの長ぇ舌を伸ばしてきたぜ!


「やっほ~。イッケェーディ~ディ~!」

「むんっ!」


 なっ!?

 は、速ぇぇっっ!!


 DDのその一跳びは、舌を擦り抜け、一気に間合いを詰めやがった!


「バキュ~ン!!」


 ギィエエエエェェッッ


 ミルルの右腕は変な衣服で隠れていたが、今は捲って丸見えだ。

 まるでザリガニみてぇなハサミになっている。

 それをどうやらカチカチっと打ち合わせたみてぇだが……。

 ともかくそこから、が飛び出しカエルに直撃したらしい。


 焼け焦げる様な匂いと煙が立ち上る。

 スゲェな……絡繰りは良く判ら無ぇがとんでも無ぇを当てた見てぇだ。


「や……やったか?」

「やだ~……コイツ、しぶとい~」


 へばった声だ、今ので相当体力を消耗したな。

 その時、オイラはまた、あの嫌な気配を感じた。


「光が来るぞっ!」


 ライリーは既にどこかに身を潜めたみてぇだ。

 オイラは急ぎ、DD達の下へ駆けていた。


 ぐぅぅぅっ……背中が痛ぇ。

 ビリビリしやがる。


 黄金の輝きが周囲に満ちていく中、

 オイラは二人に光が当たらぬ様庇いながら、森の奥へと急いだ。



(続く)

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