第4話. エニ沼の主
「“ミナイの仇”ってどういう事だ?」
毒針を放つその瞬間、呟いたその言葉が気になったんだ。
「とぼけるなっ! お前達がやったのだろう!」
その返答で、どうやらライリーにも状況が見えて来たみてぇだぜ。
サソリ女の尻尾を離し腕組みしながら、
「何、言ってんだお前? んなわけねぇだろ」
「なんだと!? 嘘つけっ!!」
「大体、うちらはお前らに仲間をやられたって疑ってんだ。お前こそとぼけんな!」
「な、何を言っている?」
訳が分から無ぇといった表情のソイツを見て、ライリーはやれやれと肩をすくめた。
どうやら振り出しに戻ったみてぇだな。
するとあちらの方からも人影がぞろぞろと現れ出した。
「流石、“最強の鎧”ライリー。思ったよりずっとふくよかで可愛いな。どうだい? 僕に抱かれてみては?」
「ハッ、“たらし”のDDたぁ、てめえか。良い度胸だなー。アタシを抱きたきゃ力づくでやってみやがれ!」
「ちょっとディ~ディ~。さっきまでミルルしか愛さないって言ってたじゃーん!」
「その通りさ、ミルル。こっちはほんの冗談だよwww」
「て、てんめえ……」
おいおいライリー……目つきが変わったぜ?
いつもは丸っこくて可愛い瞳が、急に縦長のネコ科のそれになりやがった。
何ムキになってんだ!
実は本気だったとか? ……勘弁してくれ。
◇
どうやら相手も同じ事情だったらしい。
やはりこのエニ沼には、オイラ達の未知らぬ何かが居るみてぇだな。
「ミルルが思うにぃ~、この辺の生き物ってぇ~、ざこざこじゃん? どゆこと?」
「それを確かめに来たんだろーが。だが……判らねー」
「な~んだ。じゃあ、同じじゃん?」
「るせぇ!」
確かにな。
エニガエルはスーパーフード、だから捕食者も多いはず。
それなり強ぇ奴がもっと集まっていて不思議じゃ無ぇ。
だのに道中、逆にエニガエルに捕食されんじゃ無ぇかって奴ばっかりだった。
だから今回はオイラ達に、ひょっとして幻の黄金オタマジャクシが捕まえられるんじゃあって思ったんだが……。
そん時だ。
ゴボッ
ゴボボッ
ゴボボボッ
!!
なんだ? この威圧感……。
「オイ! なんかヤベェ!! 沼から離れろーーっ!!」
音を聞けば判る。
用心なんて微塵も感じさせ無ぇ自信、それに殺意もうっすら滲ませてやがる。
間違い無ぇ、こいつは……圧倒的捕食者のそれだっ!
沼が泡立ち、水面には次から次へと魚らしきが浮き上がってきやがった。
そして泥沼の奥深くからはピカピカと金色に輝く何かが、段々と浮上していた。
なんだ? 毒か?
オイラは近くの森に逃げ込んだ。
周囲の小動物は皆、穴の中へと逃げていた。小鳥でさえ空を飛ばずにだ!
「みんなーーっ! どこかに身を隠せーーっ!!」
なんとなくそうした方がいいって気がしたんだ。
オイラはアナウサギの巣穴へと急ぎ潜り込んだ
ギィエロォォォォォーーーッッ!!
暗い穴の外から森を震わせ聞こえて来たのは、今まで聞いた事の無ぇ、
恐らく滅茶苦茶デケェだろう、“カエル”の鳴き声だった。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます