第3話. 合流
その日届いた指令を見て、思わず身震いしたぜ。
遂に来たんだ、あの場所に向かう日が。
『エニ沼』だ。
そこは、ミミたちが失踪した場所。
エニ沼は隣国『ドルク共和国』からも同じくらいの距離にある。
だからミミ達の消息は、ドルクの奴等が絡んでるって、きな臭ぇ話もある。
今回はそのドルクの奴らと合同って話になったみてぇだ。
こいつは、ただの探索だけじゃあ済みそうに無ぇな。
◇
「アタシさぁ、前にここ来た事あんだけど、消息を絶つ要素、無いんだよなぁ」
オイラ達はエニ沼の畔まで来ていた。
このライリーはエニ沼探索の経験者で、周辺の生息環境について詳しい。
今は、エニガエルの卵が孵化する時期だそうだ。
だから沼には巨大で真っ黒なオタマジャクシがうじゃうじゃ居る。
「もし、キンタマジャクシが居たら捕まえましょ」
「オメェ……もちっとデリカシーってもんは無ぇのかよ……」
エニガエルは卵から成体まで、どの生育段階でもとてつもなく栄養価が高い。
稀に金のオタマジャクシが生まれ、そいつは格別だと考えられている。
だが、まだ捕まえた事は無ぇんだとさ。
だろうな。
ちょっと考えりゃ分かる。
栄養価が高いって事は、それを捕食する生物もすこぶる多いってこった。
中でも、“金のやつ”は格好の餌食ってわけだ。
当然喰われる方だってそれなり防御手段を備えてるだろう。
だが今回はひょっとすると……お目にかかれるかもしれねぇな。
そん時だ。
オイラは、僅かな足音と息遣いを察知した。
警戒と用心、そして敵意を含んだ如何にもって気配だ。
「あちらさんも来たようだぜ。こっちと、そっちだ」
「へぇ……二手に分かれてねぇ」
ライリーがオイラ達の前にズイと歩み出る。
訝しむ声音と裏腹に、顔はニヤリとしてやがる。
大した玉だぜ……女だが。
残りのメンバー二人がオイラを守る様にして立った。
と、暗殺の香りを帯びた、空気をヒュンと伝う音。
「来るぜ、両方からだ! 毒に気を付けろっ!」
「任せときな!」
ライリーは一方から放たれた矢をバトルアクスで見事叩き落としていた。
凄ぇ反射神経だぜ。
だがもう一方には間に合わ無ぇ!
視覚じゃ確認出来無ぇが恐らく小さな針。
相手の能力だろうな。そしてそれは十中八九“毒針”だ。
「
この音は……刺さって無ぇっ?
どうやら針は弾かれたみたいだった。
……オイオイ、コイツの体どうなってんだ?
ライリーは毒針の放たれた方へ猛突進していた。
茂みから飛び出す人影、けどライリーは既に狙いを済ましている。
「うらあぁぁっっ!!」
「…っ!」
ライリーの一撃を紙一重で躱した人影は、サソリ見てぇな尻尾を膨らませ毒針を向けた。
カウンターとしてはピッタリだ、これじゃあ避けようが無ぇ!
「…………!」
なんだって?!
至近距離で射出されたその毒針は、やはりライリーの体には刺さらず弾かれ、
逆にその尻尾を掴まれていた。
「終いだっ!」
「ライリーーっ! 待てっっ!!」
ギロチンみてぇなその斧刃が下りるのを、オイラはあらん限りの声で制止した。
気になったんだ。
あの時、アイツが呟いたその意味が。
オイラは二人の下に駆け出した。
(続く)
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