第2話. 秘境
オイラ達の住むこの世界には、人類未踏の地が幾つか残されていてよー。
科学の進歩と発展は少しずつそれを開拓してきたが、
その傲慢を許さぬ自然の脅威は尚高く、眼中無人と聳え立っているってわけだ。
ところがそんな過酷な環境で、そこが天国と住む生物が居る。
人類は時々、こっち側に来たそれを捕えては、一生懸命研究したんだ。
“自然の神秘”ってやつを解こうとな。
生物の意志や行動ってのは、“欲望”が原動力になっているんだぜ。
人間は他と比べ、そいつがすこぶる高ぇから厄介だ。
そうして生み出されたのが、オイラ達半獣人ってわけだしな。
きっかけはとあるバカ野郎が、その方法をウェブに公開した。
当時は誰でも閲覧出来た。今は規制がかけられてるけどな。
なんせそいつ自身が半獣人になってみせたんだから、信憑性は抜群だ。
でもそりゃー“餌”だったんだ。
世界中がその餌に飛びついた。
そして新たな神秘を獲得しようと躍起になった、オイラ達を使ってな。
欲望って怖いよな。
倫理感なんてその前じゃ、どっかに吹き飛ばされちまったみてぇだぜ。
検査で適性が確認された6才未満の幼児にその手術は施される。
今じゃそれが世界の主流になっている。
それは、半獣人になると生じるある副作用が一因だ。
オイラ達の体は、早くあっちに行かないとうんっと老化が早く進む。
しかも年齢が高い程、その速度はうんっと早くなる。
オイラの国じゃ手術が施された後、こっちで一年間の訓練を受け、
あっちで生き抜く知識や教養、サバイバル術を叩き込まれる。
その間に体も結構デカくなっている。
大人に手術を施すと、老化が進み訓練する時間も取れないってんだからな。
けど、やっぱり精神的にはまだまだ子供だ。
知識や筋肉は一丁前になってもな。
だから母ちゃんと長い間離れて暮らすってのは結構、堪える。
多分、それも狙いにあんだろうな。
会いたきゃ、早く
まったく人間ってやつは……阿漕なやり方をするぜ。
だから半獣人にとっては、あっちの方が過ごしやすい。
それにオイラにはもう一つ、あっちでやらなきゃいけない事がある。
それは人探し。
オイラと同期で半獣人になった幼馴染の<ミミ>。
彼女は、第三次探索隊のA斑メンバーで、
歴代の探索隊の中で唯一、未だ帰還していない班だった。
(続く)
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