半獣人物語
赤髪のLaëtitia
第1章. パンドラの箱
第1話. 終わりの始まり
『永遠』なんて碌でも無ぇ。
そりゃ死んだらそこで終わりだけどさ、
終わるって事は悪い事でも無ぇぜ。
逃れられぬ苦しみや、
悲しみの連鎖、
この世の地獄や絶望から解放される手段でもあるんだ。
“絶望は死の病”って言うだろ?
……けどよ、本当の絶望は、その『永遠』の中に潜んでやがった。
テクノロジーの進歩ってやつは、とんでも無ぇぜ。
なんせパンドラの箱を開けちまったんだから。
そんで、とーっても頭の良いらしい学者さんが言うには、
“我々は、新たな価値観と可能性を創出した”――とか何とか言っちゃって、
自分達の成果の是々非々を、俺達に委ねやがった。
頭のネジが何本か抜けてるんだろうな。
だってそんなもん、考えりゃ分かる筈だろう?
まず自分で試しやがれってんだ。
けど適性が無いだとか、
良し悪しの判断には時間がかかり過ぎるとか、
より確実に“解る”ためにはもっと数が必要だとか、
なんだかんだ言い訳並べてよー。
それを何とかする為の頭脳だろって。
そこで使わなきゃどーすんだって。
でもよ、あいつら結局そんな大層なもん持ってたって、
その使い方がてんでなって無ぇわけでさ。
だから結局この世界には、わんさかと生み出されちまったんだ。
眠れる神秘を獲得した改造人間、つまり――
オイラみたいな『
けど手にしたそれは、決して都合が良いばかりじゃあなかった。
オイラ達はその
あちらを立てればこちらが立たずってやつだ。
自然ってやつぁ、ほんと上手く出来ていやがる。
自然とバランスが取れる様になってるんだ。
そのバランスを壊すのは何だと思う?
自然が時に猛威を奮うのはきっと、
それを洗い流す為にあるとオイラは思うぜ。
ところが最近じゃ、それを天罰とも反省の糧ともせず、逆に“金”とばかり目を輝かせこう言いやがるんだ。“新たな神秘を、もっと!”ってな。
もはや理性も、自然も、まるでそれには手が付けられ無ぇ感じさ。
だが“人間はそういうものだ”と割り切っちまえば、嫌いにゃなら無ぇのかもな。
だって、そういうもんなんだから仕方無ぇだろ?
ネコがマタタビでゴロゴロすんのと同じさ。
所謂、本能ってやつだ。
宗教だとか哲学だとか、色んな手段で人間は暴走がちなそいつを抑えようと努力した。けど歴史を見る限り、どうも上手くいってねーみてぇだな。
だから仕方の無ぇことを気にするだけ時間の無駄ってもんだぜ。
だが世の中にゃ、そういう人間の“業”ってもんを知ったうえで、平気でそれを逆手にとって利用する、己の利の為どんな事でもしでかすとんでも無ぇ、正真正銘の“バカ野郎”が居たんだぜ。
(続く)
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