☆第十七話 ドレス・コード☆
陽が暮れる頃、三人はクルーザーへと引き返して、忘れ物が無いかを確認。
シャワーで全身の海水を洗い流すと、後はステーションへと帰るだけだ。
「ショタ王子、メモデバイスなどは、お忘れございませんか?」
「はいっ…はぃ…」
観察記録の道具に関してなので元気に振り向いて答えたら、マコトもユキも全裸のままだったので、慌てて下を向いて答え直したり。
「では、ステーションへと上がりましょう」
ユキの操縦で、クルーザーが上昇を開始。
夕焼けで赤く染まる海面では、仲良く遊んだBドルフィンたちが、名残惜しそうに見上げていた。
「じゃあ またね…!」
身を乗り出して手を振る王子は、やはり寂しそう。
「うふふ…みんな可愛い…ハっ!」
少年王子は気づく。
水着の素材は完全自然由来で出来ていて、水に浸けっぱなしだと約九十六時間で溶けきって、プランクトンなどの栄養になる。
二人が、ショタ王子を巡ってイルカたちと水中ラグビーをしている間に、イルカたちによって脱がされたビキニは何処かへと流され、失われてしまっているのだ。
だから二人とも、現在の海上ではヌード。
このままでは、裸のまま、ステーションの職員たちに出迎えられてしまう。
「あ、あのっ…マコトさんもユキさんも…っ! 何かそのっ、水着…いやタオルとかでも…っ!」
と焦り、振り返ったショタ王子の目の前には。
「大丈夫でございます♪」
男性サイズの、しかもかなり大きなTシャツに裸身を包んだ二人が、美しく愛らしく微笑んでいた。
「あ…その シャツは…」
「ショタ王子のシャツも ございます。お召しになりますか?」
と言って、マコトが王子の頭から、少し大きなシャツを被せる。
「あふ…あ、ありがとぅござぃます…」
二人が裸ではなくて安心した事に、かわりはない。
マコトとユキの裸人魚を見るのは恥ずかしかったけれど、とても美しくて心が震えたのも確かだ。
「………」
そして、大きなシャツの下が裸体であると知っているからこそなのか、男性モノの大きなシャツを纏う二人が、なんだかいつもよりドキドキして見えた。
ステーションへ帰るこの時間が、なぜか寂しいと感じてしまう、美少年の王子様。
そんな素直な表情も、女慣れをさせる事も任務である二人は、見逃さない。
「ショタ王子、こちらへ」
「? はい」
助手席のマコトに呼ばれたショタ王子が、マコトの前に立つと。
「失礼いたします」
王子のシャツを脱がせ、自分のシャツを捲り上げて、美少年王子を巻き込む。
「あわわっ–わむっ!」
マコトに抱き寄せられた王子様は、年上ケモ耳美少女の裸身へと身体を密着させられ、シャツの首部から一緒に頭を出した。
「ぁぁあっ、あの…っ!」
ショタ王子は海水パンツ一枚だから、裸の背中には、暖かくて柔らかくてフワフワなマコトの巨乳が、押し付けられている。
しかも同じシャツから頭を出しているなんて、なんだか背徳的にさえ、想えてしまっていた。
「ショタ王子が、万が一にもお風邪を召されてしまっては、ボクたちの責任ですので」
なんだかユキがやりそうな事だね。
と、自分でも思う。
けれどナゼか、この少年王子が相手だと、こうする事にも躊躇いが無いというか、何だか懐かしい気持ちさえしてくる。
(なんだろう…ボクには、弟も妹も いないけれど…?)
とか、目の前の王子の髪に僅か付着している乾いた塩分を見ながら、考えたり。
「あら、マコトってば ショタ王子を独り占めしてしまいましたわ」
ユキが、冗談っぽくも少しヤキモチが混ざって言っているのは、ビークルの操縦席から離れられないからだ。
ステーションまで自動操縦とはいえ、やはり席を離れるワケには行かない。
職員との通信は、マコトでも構わないので。
「ショタ王子。クルーザーがステーションにドッキングをして 下船の許可が下りるまでの間、今度はユキに温めさせていただいて、よろしいですか?」
「えっ、ぁ…は、はぃ…」
マコトはユキの為のタイミングを、美少年王子様から頂いた。
ステーションへと帰り着いて、下船許可を貰って、三人はステーションのゲートに隣接しているシャワールームへと進む。
B惑星の海洋微生物が惑星外へと流出しないように、暖かい湯で潮を洗い流すだけではなく、殺菌光線で完全殺菌をするのである。
「こればっかりは、男女別だからね」
「くすくす 残念ですわ♪」
一人で浴びるショタ王子様も、実はそう感じている自分に、軽く戸惑っていた。
スケジュール的には、あとは惑星サンサー・ラランドへと帰るだけ。
正装を纏った三人が、ステーションに停泊している白鳥の許へとやってくると、外交長官がお見送りに来ていた。
「おおお、アレンショターリュ王子様…。一夜も過ごさず、お発ちになられるとは…っ!」
長官はよほど寂しいのか、涙がダダ漏れ状態である。
「ありがとうございます、アルガンゼル外交長官殿。ギュルオーンB惑星の海洋生物たちは、とても興味深い生物たちばかりでした。ぜひまた、あらためて勉強をさせて頂きたく、強く想いますっ!」
と、和装の少年美王子が、感謝と献上の意を込めた握手を差し出す。
「おおぉ…なんとご立派な…ぅおおおっ!」
ヒゲの強面長官は、少年の掌を優しく丁寧に戴きながら、力いっぱい叫ぶほどに感涙していた。
外交長官たちに見送られて、艶真珠色の白鳥型航宙船ホワイト・フロール号が、惑星ギュルオーンを出発。
船内は重力制御がされているけれど、ブリッジはあえて無重力のセッティングで、王子たちはブーツに仕込まれている吸着システムで、床へと立ったりしていた。
ユキがパイロットシートへ、マコトがコ・パイロットシートへ、ショタ王子は後ろのゲストシートへと着座。
「ショタ王子様。これより 惑星サンサー・ラランドへ到着いたしますまでは、通常の高速航行にて、航宙をいたします」
「はい」
白鳥がステーションから切り離され、眩い閃光を発しながら、漆黒の宇宙へと発進をした。
ユキの報告に、マコトが続ける。
「到着予定は、三十八時間と二十七分です」
つまり一日半、三人は宇宙船の中であり。
「それは、ぁの…」
「はい♪ 到着までは 私たち三人だけ、で ございます♪」
美しい年上りケモ耳お姉様たちと、三人きり。
しかも少年王子様は、マコトとユキの裸を幾度と見て、素肌で抱きしめられていたりもする。
「そ、そぅ…ですか…」
これも兄たちからの命令なのだろうと、ショタ王子も既に心得ている。
「それでは、ショタ王子。先ほどのB惑星での生物観察を、お纏めになりますか?」
「あ、はい!」
セクシー過ぎる二人と一緒という環境で忘れていたけれど、ショタ王子の公務として、生物研究の纏めは必須である。
二人の女性慣れ訓練があるのでは。
と恥ずかしい想像をしていたショタ王子は、ホっとした半面、なんだか残念な気がしてしまった。
「ハっ–ぼ、ぼくは一体…っ! 今は、観察させていただいた海洋生物のっ、纏めを…っ!」
と、ブリッジのゲストシートでテーブルを展開して、映像の記録を再生し始める。
「まずは、Bマグロ…」
画面に集中をし始めたら、ユキが声をかけてくる。
「ショタ王子様、失礼をいたします」
「はい…? わわっ!」
呼ばれた王子が振り向くと、ユキもマコトも、メカビキニを全て脱いだ、フルヌードな姿だった。
「あっあのっ–ぃぃ一体っ、どどっ、どうなされたのですかっ!?」
ブリッジという空間では全く想像していなかった、美女二人の裸姿。
ユキの大きな双乳が無重力で泳ぎ、マコトの白い巨尻がフル…と揺れる。
裸身の二人に前後から挟まれて、王子様はテキパキと、脱衣をさせられてしまう。
「あ、あのっ、あむむっ! い、一体あの…?」
なぜ脱がされたのか、全く解らない。
「ショタ王子様。現在、このお船のドレス・コードは」
「ネイキッド でございます」
と、任務ではトップレスかメカビキニだけを脱いだ半裸だったけれどユキが言い出したドレス・コードを、マコトが口にしていた。
「ド、ドレスコードが…は、裸…」
「はい♪」
と、真っ赤になって身を縮こませる美少年王子様へ、愛らしいお姫様のように無垢な微笑みを捧げるユキと、中性的な王子様の如き美しい微笑みを捧げるマコトだ。
「そ、そぅ…ですか…」
これも兄からの依頼で、お二人も、恥ずかしさに耐えていらっしゃるのだろう。
と、王子は推察。
「………っ!」
裸が恥ずかしい王子様はしかし、任務とはいえ二人はもっと恥ずかしいに違いないと感じて、思い切って立ち上がった。
二人の目の前で、美しい少年王子が、裸体で耐える。
「ショタ王子様♪」
「ご立派でございます」
それは、比喩ではなく、二人の本心であった。
~第十七話 終わり~
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