☆第十五話 ケモ耳マーメイド☆
ホワイトフロールの捜査官特権ならば、白鳥のままB惑星へ降りる事も、可能である。
しかし、ユキが反対をした。
「私の白鳥が、海水の塩分や有機成分で 汚れてしまいますわ」
着水をして船体にそれらが付着をしても、ステーションのドッグのシャワーで洗浄出来るけれど。メカヲタクなユキは、それでも出来るだけ汚したくないらしい。
なので、三人は惑星ギュルオーンが用意してくれた航行船で、海の惑星へと降りる事にした。
「それではショタ王子、暫し 準備のお時間を、戴きますわ♪」
ユキが白鳥から必要な荷物を持ち出す間、マコトがステーションの職員とショタ王子と一緒に、海洋調査の道具を確認。
「これが、深海観察眼鏡ですか。ああ、これは水中用の高速推進デバイスではないですか! しかも最新式ですね!」
美少年王子様も、初めて目の前で見る道具が多くて、ワクワクと興奮を隠せていなかった。
荷物を積み込んで、貸して貰った航行船へと、三人で搭乗。
「それでは ショタ王子、降下いたします」
ユキの操縦で、航行船がステーションの港から切り離される。
外見は、大昔の白い中型クルーザーに似ているけれど、機能は全くと言って良いほど違う。
そもそも、宇宙での姿勢制御やステーションからの大気圏突入が出来るし、海面へと着水して、そのままステーションへと自力で戻って来る単距離空間航行エンジンも標準搭載されていたりする。
外見がレトロなトレジャー・ボートに似せてあるのは、海好きな人々の浪漫を形にしたものだから、なのだとか。
切り離しから六分ほどで、純白の航行船はB惑星の南半球、気候的には夏といえる赤道付近へと、逆噴射でゆっくりな着水をした。
「到着いたしましたわ♪」
「はい! わあぁ…」
窓からの景色は、周囲三六〇度の全てが海。
空は青く晴れ渡り、水平線には盛り上がる入道雲が見えて、風も穏やか。
まさしく、このうえない海水浴日和り。
海は限りなく透明で、あまり深度の無い海底が、淀みなく見渡せていた。
「それでは ショタ王子、お召し替えを」
「え、あ、はぃ…」
麗しい美少女お姉様たちに手伝われて、十歳の美少年王子様が、水着へと着替える。
最新の水着は男女とも、見た目的には普通だけど、救難の機能が施されていた。
ショタ王子も、いつもなら海水パンツに上着などを羽織った上品な姿だけど、人目の無い今は、せめて普通の男の子のような海パン一枚の姿をご所望。
なので、膝丈で余裕のある海水パンツ姿である。
ちなみに、海上にいる現在の備品の中で、三人の水着だけは、ユキがピカランジェロで購入をしていた。
理由は、ギュルオーン製の水着は殆ど、海洋調査用の全身タイツ型なゴツい潜水服であると、解っていたから。
首と手首と足首には極細リングが装着されて、これは水着とのセットである。
心拍数や息などで、装着者が溺れたと判断された場合、圧縮空気で膨らんで海面へと浮かび上がるのだ。
「それでは、ボクたちも 着替えをさせて頂きます」
と言いながら、二人は少年の目の前で着替える。
のかと思ったら、クルーズ船の小部屋へと引っ込んでしまった。
「………」
目の前で着替えられたら恥ずかしいのに、そうではないとなると、何だか残念な気がするショタ王子様。
「…ハっ–ぼ僕はっ、何を…っ!」
二人の恥ずかしい姿を見たいなんて、紳士として礼を失する心構えだ。
と、真面目な少年王子は自己反省をしていた。
そんなショタ王子の様子は、見なくても自信があるらしいユキ。
「ユキの事だから、てっきり王子様の前で着替えさせられるのかと、想っていたよ」
「まあ、それも素敵なアイディアなのですけれど♪ 鍛錬には、緩急も必要なのですわ♪」
メカビキニを脱いだ二人は、用意した水着へと着替える。
サイズはピッタリだけれど、柔らかい巨乳をトップに押し込んだり、大きな丸いヒップをボトムに通したりと、紐ではないビキニの着づらさは、現代でも改善されてなどいなかった。
「お待たせを致しました♪」
「あ、いぇ…ぁ…」
二人のビキニ姿に、王子は恥ずかしそうに耳まで真っ赤に染めながら、視線を奪われている。
雨に濡れた昨日のワンピース姿や、昨夜の入浴やベッドで二人のヌードは見ているけれど、いつものメカビキニとも違う露出衣装もまた、違う魅力を魅せ付けている。
首や手足のリングが黒色で、何気に背徳感を演出している。
ビキニの色は、ユキが赤色で、マコトが濃紺色。
愛らしいお姫様がちょっと大胆なビキニに挑戦しているようなユキと、中性的な美しい王子様がHで凛々しいビキニを纏っているようなマコトの、二人の水着姿。
ビキニの面積は通常のようだけれど、何と言っても銀河で指折りなプロポーションの二人である。
トップは、暖かそうな谷間も外側も、柔らかそうな下もはみ出していて、乳房の存在を必要以上にアピールしている。
ボトムも、メカビキニより角度の鋭いフロントに、バックの生地は王子様の指よりも細い感じで、お尻もほぼ完全露出。
黒いネコ尻尾も白いウサ尻尾も、裸のお尻をより魅惑的に魅せ付けるアクセサリーのようだった。
「王子様、いかがですか?」
高貴な男性としての職務、女性の衣装を称賛する場面だ。
「は、はぃ…とても、魅力的…です…」
少年王子が言葉のお終いで小声になってしまったのは、二人の美顔から視線を降ろしたものの大胆なビキニに浮かぶ肌の筋や艶に、恥ずかしくなってしまったからだ。
「ありがとうございます。ショタ王子」
美しく微笑むマコトたちの笑顔に、また視線が奪われる、美少年王子様だった。
首に巻かれた救命用のリングより頭へ近い位置に、赤いリボンを巻き付けて、手足にもリボンを装着。
クルーザーの上で日焼け止めスプレーを塗布して、少し汗ばむ程にまで柔軟体操をすると、いよいよ海へ。
「ではショタ王子、ヘルメットを」
マコトが見本となって、首のリボンの後ろを指先でタッチ。
すると一瞬で。リボンから出現をした透明な球体に、頭を包まれた。
展開式の水中ヘルメットで、全方位がクリアに見えて、透明な外殻には様々な情報も表示される。
ヘルメットは、装着者に合わせて柔軟に形を変える、柔らか素材でもあった。
さらに、リボンが水中の酸素を取り出してヘルメット内の二酸化炭素を排出してくれるので、酸素ボンベも必要なし。
ショタ王子も、その操作自体は知っているようだ。
三人が透明なヘルメットを装着し終えると、クルーザーから海へ、ザブんっと白い波を立てつつダイブ。
海中の景色に、王子様の心が奪われる。
「わあぁ…」
透明で碧い世界は、あまり深くない場所であり、日差しを受ける海底の砂地や岩、波に揺れる海藻類などが、実に色鮮やかだ。
太陽光を受ける海草類は、緑やブラウンで色付いていて、繁茂するその根本には、小さな魚たちが隠れていた。
中型や少し大きな魚も、人間を特に気にせず、それでも少し離れた目の前を、優雅に通り過ぎたりする。
「なんて…美しい海中世界…」
ショタ王子は、ヘルメットの補助機能であるカメラではなく、自前の小型カメラを持ちだして、魚たちを観察しながら撮影をする。
両脚のリボン同士を二回、ピタピタと合わせると、リボンが展開をした脚ヒレへと変形をした。
「あれは、Bマグロですね! あ、海底にはギュルオーン・ロブスターがいますっ! ぁあっ、海鳥の影がっ!」
海中を自由に泳ぎ回りながら、魚だけでなく甲殻類や水生植物、小さなプランクトンや、海面から見上げられる海鳥まで、見る物全てを記録してゆく王子様だ。
「ふふ…無邪気ですわ♪」
「本当に 生物観察が好きなんだね」
と、保護者の気分で警護をしていた二人は、背後からの急接近に、後れを取った。
「きゃっ!」
「あ!」
ヘルメットの通信機能で、ショタ王子にも二人の悲鳴が聞こえる。
「! どうしました!」
もしやサメでも来たのたろうか。
慌てて二人の許へと泳ぎ着いた王子様が、見たのは。
「もう」
「イタズラな イルカたちだね」
イルカの遊びで、ビキニの上下を奪われたマコトとユキの、水中ヌード姿であった。
「ビっ、Bドルフィン…っ!」
反射的にイルカの種類を判別しながら、ショタ王子はつい、二人の海中裸身を見つめてしまう。
二人は、脚のリボンを左右一体型のヒレ状へと変形させていて、両脚は膝から下が薄いピンクのヒレパーツで覆われている。
透明なヘルメットは海中でもほぼ視認できず、素潜りにも見えた。
美しい中性的な王子様の如きネコ耳ネコ尻尾の人魚姫と、無垢なお姫様のように愛らしいウサ耳ウサ尻尾の人魚姫。
二人のマーメイド裸身が、太陽の光を受けて、魅惑的で誘惑的なグラデーションに飾られていた。
水の抵抗は空気の七~八倍ほどなので、泳ぐマコトの巨乳やユキのパツパツヒップが、少しゆっくりと揺れたり弾んだり。
「………ハっ!」
つい見惚れてしまっていた王子様に気づいた二人は、無邪気なイルカの悪戯を受け入れて、王子と三人で、澄んだ海を泳いで回る。
「ショタ王子、ご気分は 如何でしょうか♪」
「ボクたちに 掴まっていて下さいね」
左右から両掌を取られて泳ぐショタ王子は、裸の美しいマーメイドたちへの視線に自分が戸惑いながら、広く透明な大海を生物観察していた。
~第十五話 終わり~
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