☆第十話 雨の誘惑☆
「それでは、外出の仕度を お手伝いさせていただきます」
王子様の着替えを手伝った後、マコトたちは隣の接客室へと姿を消す。
「ごゆっくりどうぞ。女性の身支度に時間を要する事は、承知しておりますので」
と、笑顔で見送った愛王子だ。
若干十歳で、この物分かりの良さなのだから、もし女性慣れをしてお年頃になったらと思うと、末恐ろしいというか。
というマコトの、ちょっとした考察を気にする風もなく、ユキは嬉しそうに届け物の包みを開封。
「うふふ♪」
包みの中は、かなり上質なワンピースが二着、畳まれていた。
国営ホテルでは当たり前のサービスで、客室から様々な買い物が出来るのだ。
オニギリ一つから宇宙用のクルーズボートまで、注文出来ない一般商品は、ほとんど無いと言える。
ユキが朝食と共に注文を促した、純白と薄いピンクのワンピース二着も、かなりの高級品であった。
「こんな高級? ワンピース。勝手に注文して 良かったの?」
と、脱衣をしながら憂いの美顔で問うマコトに、ユキは無垢で愛らしいホクホクの笑顔である。
「王子様の護衛なのですから、貧相な服装では 王子様の名誉にかかわりますもの♪」
昨日は、露出過多なヘソ出しピチピチ衣装で、美術館などのお供をしたけれど。
「それにこれは、必要経費で 落とせますもの♪」
あ、それが本音だ。
と、マコトは今更ながら、パートナーの悦びの正体が解った。
浴衣を脱ぐと、二人ともユキの進言で、下着を着けていない裸身となる。
マコトの丸くて大きなバストがプルんっと跳ねて、ユキのスベスベで安産型なヒップがタプっと揺れた。
ヌードになって、購入したワンピースへと、袖を通す。
マコトが純白を着て、ユキが薄ピンクを着用である。
袖なしのうえ超ミニなワンピースは、肌触りも滑らかで着心地も軽く心地良くて、素材も柔らかくて伸縮性がある。
二人の起伏に恵まれたボディーラインを、ほぼ隙間なくピッタリフィットして、括れや巨乳の谷間だけでなく、縦長の臍やお尻の谷間まで、窪んで浮かせていた。
素材も極薄でボディーペイントみたいだけれど、どれほど伸びても透ける様子はなく、巨乳の先端も形が浮いているだけで、色味は透けていない。
ワンピースのお尻に尻尾を出す穴が形作られていて、尻尾は出せるけれど。
「…あんまり尻尾は 上げちゃダメだね」
ユキのノーパンヒップがチラと覗けた。
「それにしても、このワンピース 大胆過ぎない? しかも下着無し だよね?」
と、マコトはパートナーの全身を見て、素直に思う。
「これも全て、ショタ王子様の為ですわ♪」
なんて、かこつけているけれど、ユキが一番楽しんでいる。
とか、いつもどおり、マコトは見抜いていた。
とにかく、ユキが良いならかまわないのが、マコトである。
二人は更に、それぞれのワンピースに対応したアクセサリーを留め付けてハイヒールを着用すると、必要な警備用具をハンドバッグへ詰めて、準備完了。
扉を開けて、ショタ王子の待つリビングへ。
「ショタ王子」
「お待たせいたしました♪」
「はい…あ…!」
笑顔で振り返った年下の王子様が、二人のぴったりワンピース姿を見て、一瞬だけ視線が釘付けとなり、そして真っ赤になって背中を向けて、俯いた。
窓ガラスに映った王子様の愛顔は、恥ずかしさに染まっているけれど、目を閉じてはいない。
(昨夜より 少しずつだけれど、慣れてきていらっしゃる感じかな)
王子様の決心は本物なのだと、マコトもユキも、あらためて感心をする。
恥ずかしがる少年王子に、ユキが視線を促した。
「ショタ王子様。私どもの姿は 如何でしょう?」
「…ハっ!」
女性に対する礼義として、着飾った姿を称賛する。
という、上流階級の習わしに促されて、王子も思い当った。
「は、はぃ…」
まるで錆び付いた旧世紀の金属ドロイドのように、震えながらも二人へと振り返る、ショタ王子。
頷いた愛顔を、数秒とかけて懸命に正面へと向けて、二人のワンピース姿を恥ずかしがりながらも頑張って直視する。
「え、あの…と、とても…お似合いで、その…うぅ、美しく、感じます…っ!」
魅惑のシルエットを魅せ付けるマコトとユキのボディーラインを、精いっぱいの決意で見つめ、それでもバストやウエストやヒップを意識しすぎないように、しかし慌てて視線を通しながら、上流男性としての責務を果たした。
「光栄でございます。王子様」
「幸せに存じます♡」
「………」
中性的な王子様のようで美しいマコトと、無垢なお姫様のように愛らしいユキの礼に、王子様はまた、恥ずかしさで真っ赤になった。
雨はシトシトと静かに都市部を覆い、外出している人も少ない。
傘をさして、左右から挟んで警護をする美少女二人の広い腰が左右から腕へと触れて、王子は恥ずかしさに耐えながらの散歩である。
惑星の自然環境は高度に維持されていて、雨などには有毒な成分など、全く含まれていなかった。
公園へ到着をすると、恥ずかしがっていた少年王子の愛顔が、ワクワクで輝く。
雨の公園は、高い樹木が濡れて葉を開き、緑の潤いを芳香している。
周囲に高い建造物はなく、しかも公園内からは見えないように都市設計がされていて、薄曇りの空と濡れる樹木と地面とで、幻想的な雰囲気でもあった。
「うわぁ…まさに、都会の中で大自然を感じさせる、荘厳な光景ですね…!」
と、視界に傘が入るのも無粋だと言わんばかりに、優しい春の雨に身を晒すショタ王子様だ。
二人も王子に倣って、傘を閉じて自然のシャワーへと肢体を晒す。
「自然 大好きだよね。ショタ王子様」
「くすくす。嫉妬してしまいますわ♪」
自分たちよりも自然の景色に興味の目を輝かせるショタ王子に、マコトもユキも、素直に微笑んでいた。
立ち入り禁止の策の外から、王子はしゃがんで、大きな葉の裏側を観察。
「ご覧ください! 雨の日には、葉の裏側に隠れている羽虫たちが、沢山いますよ!」
女性に羽虫をオススメしてしまうあたり、まだ少年というか、学者肌というか。
「あら、本当ですわ」
「うわ、ボクはちょっと」
「あはは、申し訳ありません」
二人の反応も、王子様には楽しいらしい。
他にも、高い樹の枝で雨を避けるピカランジェロ・ホトトギスや、石の上を這いまわるギャラクシー・カタツムリなどを、王子様は楽しそうに観察をしながら、動画撮影とメモを取る。
「こんな大きなギャタツムリ、初めて見ました! 立派だなぁ…♪」
なんだかヲタク特有な略称も出たり。
雨の中で一通りの公園散策を終えると、昼食を予約しているレストランへは、もう少し時間があった。
マコトが、屋根付きの広いベンチを指しながら、提案をする。
「王子様、少しあちらで ご休憩をされては、如何でしょう」
「はい…ぁ…」
と、ショタ王子の意識がようやく、公園の自然環境から、二人の年上ケモ耳美少女へと向けられた。
マコトの漆黒なネコ耳もネコ尻尾も、ユキの純白なウサ耳もウサ尻尾も、春の優雨に濡れている。
前髪からは僅かに雫が滴っていて、白い頬や高い鼻筋も水滴を滑らせている。
そして、ピッタリのミニな極薄ワンピースは、雨に濡れて、肌を透けさせていた。
細い鎖骨やしなやかな背中、括れたウエストや大きなヒップの左右が、肌色をハッキリと魅せている。
白くて丸くて大きな双乳は、上も下も外側も谷間も極薄の生地がピタりと張り付いて、色も形も隠せていない。
更に先端の小さな桃色にも、隙間なく完全に張り付いていて、濡れた魅惑の艶姿を王子の視線へと公開していた。
視線だけでなく、全身が凝固した王子様の様子で、マコトが気づく。
「あ、ユキ。このワンピース 透けているよ」
「あらあら、これは驚きましたわ」
と言いながら、二人は透ける肌を隠す様子など、微塵も無し。
(ユキの事だから、解っててこれを 着ているのだろうし)
と、パートナーの考えをよく理解しているマコトだ。
裸への抵抗が薄いだけでなく、王子様を女体慣れさせる任務の一環としては、春の雨というチャンスを生かしてもいるのだろう。
そしてその計画は、かなり成功していると言えた。
「………」
ショタ王子は、耳まで真っ赤に上気させながらも、視線を逸らす事が出来ないでいる様子だ。
マコトたちが王子の愛顔を見ても、王子の視線は二人の透け透けボディーラインへと引き付けられて、逃れられないらしい。
さり気なく、二人でゆっくりと、その場で回る。
背中やお尻の肌色が見えているけれど、閉じ合わされた清楚な処までは生地が張り付いておらず、見えない。
それでもショタ王子は、まるで官能的な森の妖精を見た想いで、二人の透け裸身に意識を攫われていた。
「王子様、ドコかお気分が 優れませんか?」
「ハっ–ぃいぇっ–すっすっ、すみませんでしした…っ!」
噛んで慌てて背中を向ける年下王子様が、とても愛らしく感じた二人だ。
~第十話 終わり~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます