☆第八話 シュタ王子様の決意☆


「ぅう~ん…ハっ!」

 少年王子が悩ましくも愛らしいノボセ状態から目を覚ますと、ホテルのベッドの上だった。

 高い天井の木目が落ち着いた雰囲気で、室内照明のデザインは、アンティークな蛍光管タイプ。

 広いベッドの左右から、年上美少女が言葉を掛けて来た。

「お目覚めになられましたか、アレンシュターリュ王子様」

 やや過剰な敬語はマコトだ。

「のぼせさせてしまい…申し訳ありませんでした」

 優しいお姉さんのような言葉遣いは、ユキである。

 左右から覗き込むような、ケモ耳美少女捜査官たち。

 ホテルが用意していた浴衣に袖を通し、おしとやかな感じだけど、大きな乳房が形作る深い柔谷間が、大胆にも覗けていた。

「あわわ…っ!」

 見上げるシュタ王子からのアングルでは、なんだかベッドの上で迫って来るようにも、感じられてしまう。

 慌てて身を起こした王子様は、下着も浴衣も綺麗に着衣済み。

「………」

 それが解った途端、湯舟でのぼせた自分が裸のまま運ばれて、この美しいお姉様たちの手で着衣をされたのだと、理解できてしまった。

「す、すみません…でした…」

 蚊の鳴くような声で、王子様はまた真っ赤になって、布団に愛顔を埋めてしまう。

「ボクたちこそ、すみませんでした」

「?」

 マコトたちの謝罪が、王子にはよく解からない。

 ユキが引き継ぐ。

「のぼせられてしまう程 王子様の御心にご負担をおかけしてしまうつもりは なかったのですが…」

 マコトのネコ耳もユキのウサ耳もペコんと折れて、自分たちの失態に、シュンと落ち込んでしまっているのが解る。

 それは年上女性の優しさと責任感だけど、少年の自尊心には、まだちゃんと理解できないだろう。

 ショタ王子は、謝罪をする二人に対して、自責の念が強く感じられる様子だ。

 静かにベッドから床へと立ったショタ王子は、窓の外に見渡せる景色へ正面を向きながら、静かに告白をする。

「お二人が、お心を痛められる必要は、ありません…。みな、僕–私の至らなさ…なのですから…」

 夜の輝く都会はキラキラと宝石箱のようで、とても穏やかだし華やかだ。

 王子様は、愛らしい顔を輝く月へと向けて、語る。

「…父上や母上、兄上たちが心配する事も、致し方のない事です。王族とは、民たちを護る事を義務とする…責任者なのですから」

 王子の告白を、二人は黙って聞いている。

「何もできなくなる程まで女性を恥ずかしがる事が、国家運営に於いて弱点となってしまう事は、事実です。僕は、それを克服しなければならないと、自覚はしております。それが王家に生まれた者の、良民の為の義務でもありますから…!」

 いつの間にか「僕」と、ナチュラルに言葉が出ている。

 それだけ、本音なのだろう。

「「………」」

 マコトもユキも、正直、少し驚いていた。

 地球本星の基準ではまだ十歳の少年だから、年上の要求する困難からは逃げたいと思っても不思議ではないし、年齢的にも逃げて責められる事はないだろう。

 それでもショタ王子は、王族としての責任を自覚している。

 それは、少年としても王族としても、とても立派だと、二人は素直に感じ入った。

「ショタ王子、ご立派です」

 マコトは、心のままの言葉を捧げる。

「私も…ショタ王子様の御意思に、深い感銘を受けました」

 ユキも、素直な言葉を捧げていた。

「そ、そんな…あ、あの…」

「このような仕草でしか、敬意を表せない事を、お許し下さい」

 そう言いながら、マコトもユキも、年下王子様を前後から挟んで、優しく抱きすくめる。

 ショタ王子の顔はマコトたちの平らなお腹あたりなので、引き締まっていながら薄い皮下脂肪でプニプニな二人の腹部へと、愛顔や後頭部が押し充てられてしまう美王子様だ。

 恥ずかしくて俯く少年に、ケモ耳美少女たちは跪いて、優しく微笑む。

「ショタ王子。王子の素晴らしい決意に、ボクたちも精いっぱい 尽力をさせて頂きます」

「私たちが必ず…ショタ王子様に 女性慣れをさせて御覧に入れますわ♪」

 中性的な美しい王子様みたいなマコトの笑顔が、無垢な愛らしいお姫様みたいなユキの微笑みが、月明りで神秘的に輝いて見える。

 姿も心も、美しい女性たち。

「あぁ…」

 それはまるで、大自然の中に存在する慈母性の象徴であるかのように、ショタ王子には感じられた。

 水族館の水槽に映る二人の美しさを超えた、目の前に存在する現実。

 ショタ王子の意識に根付く、美しい生命体に対する尊敬の念が、強く湧き上がって来ていた。


 三人で冷たい水出し緑茶を戴きながら、王子様の体長が万全まで回復をすると、もう時間は夜の十時を過ぎている。

「明日のご予定もありますので、そろそろ、ご就寝になられませんと」

「あ、はい」

 王子が素直にベッドへと上がろうとして、気づく。

「…? お二人のベッドは、お隣の部屋でしょうか…?」

 と訊ねてから、親愛を込めて「おやすみなさい」と挨拶をしようとした王子へ向けた、マコトからの返答は。

「いいえ。警備上の理由などにより、お供をさせて頂きます」

「…え…あ、あの」

「失礼いたします♪」

 と、愛らしく微笑むユキが、王子様の両目を塞ぐ形で、ふわふわなタオルを使って目隠しをする。

「痛くは ごさいませんか?」

「え、は、はぃ…あ、あの…ぉお供とは…」

 言葉の意味や目隠しで戸惑う王子の耳に、何やらシュルシュルと、布の擦れる音が聞こえる。

「言葉の通りです」

「私たちが、王子様のベッドで 添い寝をさせて頂きますわ♪」

 心なしかというよりハッキリと、ユキの声は楽しそうだ。

「そ、添い寝…ですか…は、はぃ…」

 ただの添い寝と思って、一瞬ホっとしたものの、では視界を塞がれる意味や、その為に敏感になった耳へと聞こえる布の音は。

 ベッドの前で戸惑う年下王子様の両掌が、左右から二人の柔らかい掌で取られる。

「王子様、ベッドへ どうぞ」

「は、はぃ…」

 ユキの声に促されて、ベッドの上へと、小柄な体の四つん這いで上がる。

 掛け布団はマコトが捲ってくれていたので、ショタ王子は言われるままに、ベッドの真ん中へと身を置いた。

「えっと…」

 目隠しと布擦れの音の正体がまだわからないけれど、これから美しいお姉様たちが、添い寝をしてくる事だけは、解っている。

「「失礼いたします」」

「!」

 ベッドが小さく揺れて、二人がINしたと伝わってくる。

 左右がモゾモゾとうごめく感触があって、敏感になった腕の肌に、暖かい空気が感じ取れた。

 左右に添い寝をされたと解ると、やはりドキドキと緊張をしてしまう。

 暖かい掛け布団がかけられると、目隠し越しでも、室内照明が落とされたと解る。

 布団の中から、石鹸の清潔な香りと、暖かくて甘い女性の肌の香りがした。

 二人の美しい顔や魅惑的過ぎる全身のラインで、頭が占領されてしまう。

「では 王子様♪」

「失礼いたします」

 と右からユキに、左からマコトに言われ、左右それぞれの小さな掌が、優しく取られる。

 そのまま引き寄せられた掌は、柔らかくて温かいプニプニふわふわ何かへと、押し充てられていた。

「……?」

 大きくてプヨプヨで暖かい何かが、何なのか気になる。

 静かに指を動かしてみて、何か小さくて柔らかい突起に触れた瞬間。

「ん…王子様ったら♪」

「は…」

 左右から、なんだかセクシーな吐息が聞こえた。

 指が動いて、小指よりも小さな柔突起の周囲に小さい粒だった肌を感じた時、年下王子は柔らかい何かの正体が解った。

「っ!」

 二人が添い寝をしている位置や、自分の掌が外向きな事など。

「あっあのっ–ぉぉお二人はっ、そのっ–っ!」

「はい♪」

 布が擦れる音は、二人が浴衣を脱衣していた音であり、掌を取られて触れているのは、二人の巨乳だった。

「あわわっ–すすすっ、すみませんっ–っ!」

 直接に女性の肌へと触れる失礼で、王子は恥ずかしさだけでなく、申し訳なさまで感じている。

「いいえ、ショタ王子様。ご存分に」

 思わず引きそうになった掌を、マコトが引き直して、柔らかいバストへと更に押し付けられる。

「ぃっぃいえぇえっ–ぁあのそのっ–っ!」

 ユキも、バストへと少年王子の掌を押し付けながら、恥ずかしがる王子様を、優しく説得。

「ショタ王子様。これも鍛錬 でございます♪」

「た、鍛錬…」

 そう言われると、王子も恥ずかしさに耐えて、乗り越えるしかない。

 直視をしたら気絶してしまいかねない王子の為に、裸の二人は、目隠しをして差し上げたのだ。

 ヌードなお姉様たちの肌へ触れながら、王子はドキドキの夜を過ごした。


                    ~第八話 終わり~

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