☆第六話 王子様はご熱心☆
美術館の中庭に併設されているレストランで、遅めの昼食を摂った三人は、更に予定コースの動物園なども巡る。
「わあぁ…ツノゴリラじゃないですか! 初めて見ました!」
檻の中にいるツノゴリラたちは、三メートルの巨体で頭に角が生えているうえ腕が六本という凄みの溢れる外見にも拘わらず、例に漏れず人懐っこい。
愛らしい王子に気づいた途端、まるで屈み込むように巨体を丸めると、野太い指でコミュニケーションを求めてきた。
「あはは、可愛いですね♪」
初めて直接に見た生物で、知的好奇心を刺激されているらしいショタ王子は、ご機嫌である。
対してマコトとユキは。
「「………」」
以前、繁殖欲に猛る野生生物の惑星をヌードで脱出する際に、その原因となり、更に最後の障害ともなった個体たちと同種の生物を見て、複雑な気分だ。
特に最後の障害としては、マコトとユキの二人揃って、ツノゴリラのお嫁さんにされてしまいそうな危機でもあったので、マコトはよりモヤモヤしていたり。
「別の個体ですし、気にしすぎですわ」
「そうだけれどね」
それでもユキはもう、ハラハラさせられたけれど今は楽しかった思い出として、切り替えている。
「ユキのそういうところ、ボクも見習いたいよ」
「うふふ…♪」
中性的な王子様の如き美顔を悩まし気に輝かせるパートナーに、愛らしいお姫様フェイスのユキが、楽しそうに微笑んでいた。
ツノゴリラの檻から別の生物の檻へと向かう途端、二人は背後から、繁殖欲も溢れる粘着性の強い視線を感知。
「また…」
チラと見ると、雄のツノゴリラたちがマコトとユキのお尻へ向かって、情熱的な欲望視線を遠慮なく送っていた。
欲求に撫で上げられるような感触がして、マコトの黒いネコ耳とネコ尻尾が、ぞわわっと艶毛を逆立てる。
「あのコたちも、マコトの魅力に撃ち抜かれてしまいましたのですわ♪」
「ユキのヒップも狙われているよ」
「うふふ♪」
と微笑むユキを、マコトは呆れながらも、自然と受け入れてしまっている自分がいた。
休憩スペースで、ショタ王子は手に入れた動物図鑑のチップをハンディー・コミュニケーターへと差し込んで、手首の機器から立体投影される生物たちの情報を、キラキラした眼差しで読み込んでいる。
「ふんふん…うふふ…♪」
マコトたちが感心したのは、お土産でもある動物図鑑を、熱心に熟読している事ではない。
一つ一つの情報を、別なる数種類のデータバンクと比較をしながら、自分なりに纏めてデータ化してノートを取っている事である。
例えば、ツノゴリラの体長なども、観察者や測定個体によって、その数字の幅も異なっている。
それらのデータと、自分で確認をしたデータを総合的に判断して、最新データとして書き留めているのだ。
「これはもう、職務とか趣味とかを超えた、研究者だね」
地球本星の基準では十歳である事を考えると、将来的には銀河レベルで生物博士として名を上げても、不思議ではない。
「ご立派な姿勢ですわ♪」
メカヲタクなユキも、愛らしい年下王子の真面目な向上心に、感心している。
そんな二人の会話も耳を通り抜けるくらい、ショタ王子はデータ検索に熱中。
警護に最適な距離で立つマコトとユキは、将来有望な少年王子の姿を、黙って見守り続けていた。
夕方になって、美術館も動物園も、閉館の時間を迎える。
自然に囲まれた空間は暗くなって、中庭の照明が点灯されて、王子様は初めて、熱中していた事に気づいた。
「あ…あわわっ!」
慌てて立ち上がって何事かと思ったら、二人を見つけた王子は走って近づいて来て、謝罪をする。
「もっ、申し訳ありませんっ! つい読書に熱中してしまって…っ、お、お二人をっ、立たせたままにしてしまいました…っ!」
本当に申し訳なく思っているのが、外出着の裾を強く握っている事でも、解る。
「どうぞ お気になさらないでください」
「私どもは、王子様の護衛なのですから」
「で、ですが…」
女性を立ちっぱなしにさせてしまった自分が、悔しいらしい。
マコトたちの言葉にも、王子様は失態を悔やんでいる様子だ。
((………))
恥ずかしい失敗に、頬を上気させて気弱に見上げるその愛顔は、ナチュラルに庇護欲を強く刺激してくる。
ユキだけではなくマコトも、失礼にも、思わず頭髪を優しく撫でてしまいそうになった。
もっともユキは、それ以上の失礼にあたる抱擁をしたくなっているけれど。
「んん…アレンショターリュ王子様は、ご立派に公務をお勤め上げられていらっしゃると、ボクたちは感銘を受けておりました」
つい、素のボクっ娘が出てしまったマコト。
「マコトの言う通りですわ♪ アレンショターリュ王子様の情熱には、私…強くご声援をさせて頂きたく感じました♡」
ユキも、さっきより近い距離感の言葉遣いになっている。
「あ、ありがとぅ…ござぃます…」
安心をすると、ボディーラインを全く隠していない、二人の魅惑的な肌曲線にあらためて意識が向いてしまい、恥ずかしさで真っ赤になって頷くショタ王子だった。
今夜の宿泊施設である国営ホテルへ到着すると、ホテルのオーナーや接客の責任者などが、総出でお出迎え。
「「「お待ちしておりました」」」
三人はオーナー直々に、ホテルの最上階へと案内をされた。
「アレンショターリュ王子様との謁見を許されるとは、身に余る光栄に御座います」
芸術的で上品に整えられた白い髭と、芸術的で綺麗な白髪のオーナーは、友好惑星国家というだけでなく、王子の人柄をよく知っているようだ。
裏表なく、少年王子へ敬意の礼を捧げていた。
「こちらこそ、銀河の五つ星に名を連ねるピカランジェロ・ムルンクサイド・アージナリトュルンクライラハーバリャス・国際ホテルへのお招き、心より感謝いたします」
ショタ王子は、名前も発音も難解なホテルの正式名称を、メモも見ないでスラスラと流れるように、美しい発音で返礼。
「おおぉ…なんと 光栄な…っ!」
老オーナーは感動のあまり、まるで孫に対するように、王子を抱きしめたい衝動に駆られている事が、二人にも解り過ぎるくらいに解った。
((ああ、そうですよね))
男女の堺なく、人を魅了する罪なショタ王子。
上品で美味しい夕食を部屋まで運んで貰って、三人で戴く。
「「!」」
公務員であるマコトとユキが食べた事の無い程の、深い味わいの料理たち。
特に、料理が好きで食べる事も好きなマコトは、一口一口に感性が刺激をされてしまう。
ネコ耳とネコ尻尾がピンと立ち、興奮を素直に表している。
(なんて美味しい…宇宙には、こんなにも素晴らしい味わいの料理が…)
と、感動で料理をジっと見つめるパートナーを、ユキは嬉しそうに眺めていた。
ショタ王子も、自分と通じる研究熱心さをマコトに感じて、素直に嬉しそうである。
食事が終わると、あとは寝る前に、お風呂である。
「アレンショターリュ王子様、ご入浴のお時間です」
「! えぇぁの…ど、どうぞお二人から、お先に…っ!」
と、顔を真っ赤にしつつ俯いて、部屋の隅へと後ずさる王子様。
これからお風呂という事は、美しい年上の美少女たちと、湯舟を共にする。
という事であると、素直に解る。
逃げ道を探す年下の美王子に、ユキが告げた。
「そのようなワケには、まいりません。王子様の護衛と、女性の肌への克服のお手伝いをする事が 私どもの務めである以上、入浴を共にさせて頂きます♪」
とか、真面目な愛顔でとんでもない事を、平然と言う。
「でっ、ですがっ…あわわっ!」
「さあ、まいりましょう」
マコトが素早く背後へと廻り、ショタの背中を支えながら、ユキが王子の両掌を取って、三人で浴室へ。
脱衣室は広く、五人くらいでも余裕で着替えが出来る程だ。
和風の造りで、浴衣やタオル類が置かれた広い棚と、床には古風な脱衣カゴも用意されている。
「あああっ、あの…っ!」
「さあ、王子様」
「ま、待って下さぃっ–んむむっ!」
二人がしゃがんで前後から挟み込み、手分けをして、王子様の脱衣をお手伝い。
ユキが前側から上を脱がせて、マコトが背後から下を脱がせる体勢だ。
「アレンショターリュ王子様には、このような状況でも堂々とされる大胆さも、必要でございます」
と、背後のマコトが説得。
王子様は、普段から従者たちに着替えを手伝わせる事も職務だからか、恥ずかしくて抵抗がありながらも、マコトたちのするままでもあった。
「でっ、ですがっ–うぅぅ…っ!」
全てを脱がされると、年下王子は首筋まで真っ赤に染めて、両掌で身体を隠そうとしたり。
「それでは、ボクたちも」
「警護の準備をいたしますわ」
そう言いながら、王子様の前で脱衣を始めるマコトとユキ。
「!」
前後からの挟み撃ち脱衣に、少年王子は更に真っになって、俯いてしまった。
~第六話 終わり~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます