☆第四話 宇宙へ出発!☆
翌日。
シュタ王子は自分を置いて先に帰星する兄たち一行を、いたいけで恨めし気な涙の眼差しで、見送っていた。
「それでは ホワイトフロールのお二方、弟をよしなに」
「「はい」」
「アレン。王家の公務、しっかりと果たしなさい」
「…はぃ…」
という挨拶で、サンサー・ラランドの外交船は出立をしたのだ。
その際にも、露出過多な正式スーツで見送ったマコトとユキに挟まれたショタ王子は、顔も耳も真っ赤に上気させて、俯いたままだったり。
それから一時間ほどの後、弟王子を乗せた中型の高速航宙船ホワイト・フロール号が、ネクスト・アトランティスの宇宙港より発進をする。
くすみが全くない艶めく真珠色の白鳥を見た弟王子は、大胆メカビキニのグラマー美少女二人に挟まれている事も忘れ、その美しさに暫し見惚れていた。
「わあぁ…なんて、美しい船…」
両隣からフワりと感じられる、大きなバストやヒップの体温や肢体からの甘い香りも忘れ、アレンショターリュ王子は美しい白鳥へと視線が釘付けである。
そんな王子の素直な感動が、メカヲタクのユキには嬉しいようだ。
「光栄に御座います、アレンショターリュ王子様♪」
「え…ハっ–あわわ…っ!」
言葉に気づいて振り仰いで、細いウエストや下からアングルの巨乳越しでのお姫様な愛顔に、あらためて恥ずかしくて俯いた王子様だ。
「アレンショターリュ王子様は、白鳥がお好きなのですか?」
マコトが訊ねると、王子はまた恥ずかしさを忘れ、キラキラと輝く瞳で見上げてきた。
「はいっ! 種を問わず、野生生物にはとても、知的好奇心を刺激されますっ! 人類の観念からすれば、一見すると残酷なようですが、そこには全て、生きる為の命の営みといいますかっ–はわわっ!」
見上げているアングル的に、マコトの巨乳越しな王子様美顔で、やはりショタ王子は気づくと恥ずかしくて、また俯いて目をキツく閉じたり。
(…書類情報の通り、生物好きは かなりだね)
(ええ。ですので、女性の肌に慣れて戴くのも、そう無茶という感じでは ありませんわ♪)
二人は目配せで、そう理解し合っていた。
ブリッジの中では、操縦席にユキが、副操縦席にマコトがお尻を降ろし、普段は収納されている後部予備シートへと、ショタ王子が小柄な身体を埋めていた。
「それでは、アレンショターリュ王子様、航宙船ホワイト・フロール号 これより発進をいたします」
発進シークエンスを終えて、管制塔から許可も得て、王子様へ報告をして、白鳥は優雅に飛翔を開始。
「窓の外を、ご覧になられますか?」
マコトが問いながら、シート横のスクリーンに、船外カメラの映像を映し出した。
窓の外では、カモメなどの海鳥が群れを成し、海面ギリギリを旋回飛行している。
海中で、小魚の群れを中型の肉食魚が集団で襲う狩りをしていて、逃げて海面へと上がって来る小魚を、カモメたちが捕食しているのだろう。
「…わあぁ…」
年上美少女のメカビキニ姿が恥ずかしくて直視できない王子様だけど、カモメたちの狩りには熱心だ。
「なんて雄々しい様子でしょうか…あの激しくも美しい姿こそ、命の賛歌でしょう…っ!」
と、地球換算で十歳としては、かなり達観した自然観の持ち主である。
知的好奇心が刺激をされて興奮する王子様に、二人はあらためて、確信を得ていた。
(あのご様子なら)
(ええ。私たちの事も、生物的なご興味で 慣れて戴けますわ♪)
宇宙へ出たホワイト・フロール号だけど、実は今回は、単機での航行ではない。
何と言っても、惑星サンサー・ラランドの王子様がご搭乗をされているのだ。
地球本星からサンサー・ラランドまでの全ての宇宙航路は、サンサー・ラランドの護衛隊が姿を潜めて警護している。
寄港予定の各惑星も、サンサー・ラランドの友好惑星国家であり、それぞれの惑星ごとに警備体制が敷かれていた。
このホワイト・フロール号も、必要なセンサーカメラが作動しているだけでなく、それぞれの警備隊との通信回線が繋がっている。
なので、二人の警備任務が緊急事態を迎える事は、絶対に有り得ないと言えた。
宇宙空間の高速航行を開始すると、窓の外は、特に変化も面白味も無い、暗い空間がただ続く。
「………」
宇宙クラゲなどの空間生物でも見当たらない限り、ショタ王子にとっては、露出過多でグラマーなケモ耳年上美少女とのブリッジ空間という、拷問に近い恥ずかしい時間となった。
「自動航行システム 切り替え完了。後は、お船が目的の惑星に到着するのを 待つばかりですわ」
「銀河連合標準時間 三時間後には、惑星ピカランジェロに到着いたします。アレンショターリュ王子様」
「は、はぃ…」
マコトから寄港予定の惑星を報告された年下の美王子様は、護衛の美少女たちと目を合わせる事もなく、また真っ赤な愛顔を上げる事もなく、恥ずかしそうに蚊の鳴くような声での返答のみだ。
ブリッジに溢れる甘い香りや、目の前のシートからチラチラと覗ける肌色成分に、必死で耐えているご様子である。
王子様を女体慣れさせるという任務の為に、二人のコンソールも、予備のシートをセッティングしてあった。
スイッチ一つで出し入れが出来る予備のシートは、背中やお尻の辺りがくり抜かれた、新しいデザイン。
使用感などを確かめる為にと、ホワイト・フロール号をはじめ数隻の航宙船で、今回、試験的に搭載されているシートである。
今、恥ずかしがりな十歳の愛らしい王子様と同乗するにあたり、初めてその効果を的確に発揮していると言っても、過言ではなかった。
(背中に まったく視線を感じませんわ)
(本当。徹底しているね)
普段から、地球連邦のイメージ戦略としての大胆メカビキニな二人である。
観られる事も任務だから、二人の目を盗んで王子様がチラチラと見たとしても、咎めるつもりなど全くない。
むしろ、ここまで徹底して視線を逸らされると、ボーイッシュなマコトとはいえ、心のどこかがムズムズする感じだ。
(…ボクも、少しヘンなのかな…?)
そのムズムズ具合も、ユキはマコトの比でない事も、マコトは十分に理解していた。
「王子様、少々 失礼いたします」
ユキがシートから立ち上がって、王子様の近くのコンソールを弄ると、大きな双乳が目の前で、たぷっと揺れる。
「! は、はぃひ…っ!」
育ちの良い王子様は姿勢も正したまま、首も折れんばかりに下を向いてしまう。
「王子様、お飲み物は如何ですか?」
マコトがトレイで、三人分のグリーンティーを用意すると、屈んだマコトの下向きに質量を増した巨乳が谷間を魅せ付けて、また王子様は焦って後ろを向いてしまったり。
「ぃぃいっ–ぃ戴きます…っ!」
ソッポを向いたまま、震える小さな両掌でカップを受け取る年下の王子様に、マコトも庇護欲を刺激される。
(………)
二人とも、ケモ耳がピクんっとうごめいて、ケモ尻尾も小さくスキップをするような、楽し気な反応を無意識に見せていた。
王子様へお茶を差し上げて、副パイロットのシートへ戻って来ると、ユキが少しだけプクんと膨れている空気を醸している。
「はい、グリーンティー」
「戴きますわ」
(やっぱり 軽く不機嫌になってる)
無垢なお姫様フェイスが、愛らしくムクれている。
その原因も、なんとなく解っているマコトだ。
(ユキと二人だから、この任務も 安心して遂行できるんだよ)
(わ、解ってますわ…♪)
中性的な王子様美顔を、パートナーへの信頼の意思で微笑ませると、その意図と想いに、ユキのご機嫌も直ったようだ。
そんな感じで三時間ほどの航行を経て、ホワイト・フロール号は、本日の目的惑星であるピカランジェロへと到着。
ブリッジのセンサーには、白鳥の航行を了解する警備隊のシグナルが送られて、ユキがステーションとの応答を開始。
「アレンショターリュ王子様。この惑星ピカランジェロに於きましては、国立美術館での芸術鑑賞が ご予定とされております」
「はっ、はぃ…っ!」
立ち上がって報告に来たマコトの、広くて平らに引き締まったスベスベ肌色下腹部が目の前の高さで、ショタ王子はまた、恥ずかしくて下を向く。
「四時間ほどの美術鑑賞の後、今夜は、国営ホテルにて ご宿泊の予定で御座います」
「ぇ…た、大使館では…?」
王族の宿泊が、友好国とはいえ大使館でないのは珍しい。
「はい。通常は仰る通りなのですが、在ピカランジェロ サンサー・ラランド大使館は現在、大規模改装工事中との事でございます」
これは、たまたまタイミングがそうなっただけである。
もっとも、依頼主であり兄王子であるアラン王子からすれば「大使館では滅多なことも出来ないですから。ははは」という本音もあるらしい。
秘書以外の、年上の女性とホテルに泊まるという予定に、恥ずかしがりなショタ王子は、もはや手足が震え出す勢いである。
「了解しました。ホワイト・フロール号、これより惑星ピカランジェロ本星の 国際宇宙港へと、降下をいたします」
艶真珠色の白鳥が、大気圏突入で真っ赤に染まりながら、惑星へと降りて行った。
~第四話 終わり~
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