第6話 求めていたクリームソーダ

「おや、亮が顔を見せに来るなんて珍しいね」

 母の第一声がそれだった。こうして実家に帰ってきたのはいつぶりだろうか。

 母は70歳目前だが、だいぶ若く見えると思う。苦労してきてるはずだけど、本当にタフな人だなと感心してしまう。

「ちょっと、気になることがあって。近くで姉さんに会ってきたんだ。せっかくだから顔見せておこうと思って」

「何? 気になることって? 」

 リビングのソファに座り、私は母にクリームソーダの話をした。夢で見た、幼い私が一人で喫茶店に行った話も。最初のうちは母もふーんという感じで聞いていたが、夢の話をしたあたりで少し驚いているようだった。

「ちょっと待っててくれる? 」

「あ、うん」

 母はそういうとキッチンの方に行ってしまった。何か思い当たることがあるのだろうか。

 テレビを見ながら待っていると、母がキッチンから戻ってきた。その手にはクリームソーダがあった。浅めのパフェグラスに盛られた、少なめのソーダと多めのバニラアイスクリーム。真っ赤なチェリーが乗っていないことを除けばまさに夢で見たクリームソーダそのものだった。

「どうしてこれを……? 」

 困惑しながらも母に聞く。

「まあまあ、後でゆっくり話してあげるから。とりあえず食べてみなさい。今暑いから、アイスすぐ溶けちゃうからね」

 促されるままに私はクリームソーダを口にした。まずはアイスを一口。そしてソーダをスプーンで掬って口に運ぶ。アイスとソーダが口の中で混ざったものを喉の奥に流すと、とても懐かしい味がした。

「これだ」

 私の求めていたクリームソーダの味だった。

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