第4話 クリームソーダの夢
その日、私は夢を見た。幼い頃の私。おそらく5歳くらい。私は昔ながらのレトロな喫茶店にいた。席に座っていると、
「お待たせしました」
黒のカマーベストを着て、ギャルソンエプロンを身につけた、背の高い男性がやってきた。おそらくこの喫茶店のマスターだろう。顔は……いまいちよく見えなかった。彼は銀色のトレーに乗せていたものを、私の目の前に置いた。それはクリームソーダだった。浅めのパフェグラスの中に、透き通った、まるで翡翠のようにキラキラとしたメロンソーダ。そして贅沢に乗ったバニラアイスクリーム、定番の真っ赤なチェリー。他で食べるクリームソーダとは違い、ソーダの量は少なく、バニラアイスの量が少しだけ多いような気がした。子供の私はクリームソーダと一緒に置かれたスプーンを手に取り、バニラアイスを掬い、口へと運んだ。上品なバニラの香りと濃厚なミルクの味わい。とても美味しいバニラアイスだった。私はアイスを掬ったスプーンで少しだけソーダを掬い、持ち上げる。はじめての炭酸に、少々緊張しているのか、心臓がバクバクと音を立てていた。
「そんなにシュワシュワしないから大丈夫だよ」
男性が優しく促す。私はその言葉を信じて、ソーダが乗ったスプーンを口に運んだ。少しだけシュワと弾けた。初めての感覚に少しびっくりしつつ、後からやってきたメロンの香りと爽やかな甘さが口を、いや、体全体を包んだような気がした。
「おじさん!これ、すごく美味しい! 」
私は無邪気に男性に言った。彼は私を見てニコニコしているだけだった。
そこで私は目が覚めた。今の夢はなんだろうか……なんとなくだが、昔、こんなことがあったような気がする。しかし、実際、私はあの歳で一人で喫茶店に行ったことなどあっただろうか。夢の中で私は一人だった。保護者らしき人の姿は見当たらない。一体どういう状況なのだろう。なぜだか夢の情景が気になって気になって仕方がない。実際にあったことなのかどうか、なんとかして確認する方法がないかと考え、一つ思い当たる。
朝6時。カーテンの隙間から朝日が見え隠れする中、私は枕元に置いてあったスマホを手に取り、姉の電話番号を探した。
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