一目惚れした俺と4
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「桃夜!あの子どうなった!!?」
「いきなり喚くな、暑苦しい」
案の定桃夜の姿を見つけた途端騒ぎ始めた慶奈を、桃夜は煩いと一喝する。
先生には俺から事情を伝えといたから、と話す桃夜だが、慶奈は桃夜の話しなど聞く気はないと言った様子で、あの子...来栖のことを一方的に聞いていた。
はあ、と桃夜は呆れた声を漏らす。予想はしていたが、それ以上に鬱陶しい。
「足は大したことなかったみたいだけど、まだ痛むみたいで心配だったから保健室に置いてきたよ」
「はああ!?保健室に置いてきたああ!?保険医と二人きりにしてくるとかお前正気かよ!もしナニかあったらどう責任とるの!ねえ!!?」
「お前こそ正気か?あの子男だぞ、どっからどう見ても。何も起こるわけないだろうが、アホ」
「何言ってんの!あんなに可愛いい子と二人きりになれて手を出さないとかそれもう男じゃねえよ!」
「手出したらそれこそ男じゃねえよ」
「ああ言えばこういう!!」
「それはどっちだ!馬鹿言ってないで目を覚ませ!!」
「俺別に寝ぼけてな、いってぇ!」
スパコーン!と鋭いツッコミが慶奈を襲う。痛いと頭をおさえてしゃがみ込んだ慶奈に馬鹿、アホと罵倒を浴びせ、桃夜は「はあああ」と大きく息を吐き出した。
なんだよ、と納得がいかない声を漏らしながら慶奈はぶつくさと文句を垂れている。
ああ、やっぱりこいつあの子に惚れてたのか。
恋は盲目って言うが、可愛いって思ってても普通人前で言うか?男相手に。
「もういいから、ちょっと黙ってろ」
「せっかくまた会えたのに......名前、俺が聞きたかったし、呼ぶ暇もなかったし......桃ばっかりズルい..」
「面倒くさい奴だな...お前」
「それは桃が一番よく知ってるでしょ......俺がしつこいことくらい」
「ああ、ハマったらとことん最後までやり尽くす男ってな」
「やっぱ、わかってんじゃん..」
「そんで、やり尽くして飽きたらすぐ冷めんのもな。悪いことは言わない、やめとけ。これはちょっとした気の迷いだよ、どうせまたすぐに飽きる」
「......これはゲームとは違うし...なんで桃にそんな事言われなきゃいけないのさ。俺、本気だよ......こんなに本気で好きんなったの、初めてなんだよ」
「ダメだあの子はお前とは釣り合わない」
「やって見なきゃ分かんないだろ!」
「見なくたって分かる!いつもそうだっただろ!結局お前はいつもいつも..!」
慶奈は真剣な顔つきで、睨みつけていた桃夜の目を見る。
「ああそうだよ!いつもは桃に怒られて終わってから気づいてた!でも、でもね!これだけは絶対に譲らないよ...」
こんなにも真面目な顔を、俺は見たことがなかったかもしれない。
「言ったでしょ本気だって。俺、マジで本気だから。マジマジだから」
分かってよ。
冗談でも、遊びでもない。それが分かっていたからこそ止めているのに、お前こそなぜ分かってくれない。俺はお前を思って言っているのに。
分かってるよ。
だからこそ、譲れないんだ。
本気で好きになっちゃったもんは、好きになっちゃったんだからしょうがないじゃん。結末とかそういうのいいからさ、せめて挑戦くらいさせてよ。心配してくれてるのは、嬉しいけど、でも...俺は折れないよ。
だって、いつもそうだったでしょ?
ああ、そうだ。
こいつは、そういうやつだった。
「.........なんだよ、そりゃ......はあああ、そもそもお前が言って聞くようなやつだったらいままでこんな苦労してないよな..」
「そうだよ、俺は頑固でしつこいんだよ」
「威張るな.....頑固というより馬鹿なだけだろ」
「そう、馬鹿だから、身をもって知らないと分からないの。で、そんな俺に対して、桃さんの答えは..?」
「それ、一択しかないじゃねーか」
もういいよ。もうどうにでもなれ、俺の負けだ。
「へへっ、無言はokととってよろしいですね..!よっしゃ!!じゃあそういうことで、応援しててね!むしろ協力してくれると有難い!」
「調子にのんな。どうせ無理だし、自力で頑張って終われ」
「それが親友の言う台詞かよ!?せめて挑戦してから言ってよ!」
「本気、なんだろ?だったら、マジで死ぬ気で頑張れよ。たとえお前がホモになって引かれようが友達でいてやるから」
「.........桃、めちゃくちゃ怒ってるよね」
「当たり前だろうが、ホモ」
「ねえ!やめて!馬鹿なのは認めるけど、ホモって言わないで!俺あの子が好きなだけで男好きじゃないから!ねえ!!」
「ホモも皆最初はそう言うんだよ」
「やめて!!」
先ほどまでの真剣な顔つきはどこへ行ったのか。
騒ぐ慶奈をからかいつつ、桃夜はこうなったらとことん付き合ってやるかと一人決意を決めていた。
巻き込まれんのはいつものことさ。
今更、怒るだけバカバカしい。
今はただ、こいつの幸せとやらを考えといてやろう。
もしダメだったら怒ってやるから今はこれ以上は止めない。
俺がお節介なのもいつものことだからさ。
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