素っ気ない君と
第二話 素っ気ない君と
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「おっはよー!桃!」
今日も変わらない元気な声が校内に響いた。
昨日あったことを彼はちゃんと覚えているのだろうか。
男相手に好きだのと応援してくれだのと言ったその言葉を。
「おはよ、今日もお前は相変わらずだな」
気怠げに返せば、へへっとだらしない笑い声が返ってきた。
「昨日のコ、どうしたかな?あのあと、家に帰ったみたいだけど」
あのあと、とは慶奈とあの子…来栖がぶつかって保健室行きになった後のこと。
桃夜が来栖と話したあと、どうやらすぐに早退したらしい。
心配する慶奈は「会って謝りたいんだけど」と言葉を続けた。
「今日来るかはわからないが来てるなら教室にいるんじゃないか?」
「そうだよね!ちょっくら俺見てくる!」
「待て待て、上級生があんま下の教室行くのはまずいだろ」
「えっ、でも…会いたいし…」
「謝りたいんじゃなかったのか…変わってるぞ目的が」
はあ、と桃夜はため息をつく。
「一人だと心配だからついていってやる。お前のことだ一人で行ったら突っ走って何するかわからん。それに俺ならその子と話したりもしたし多少は顔が利くはずだ」 「話したのはちょっと嫉妬心だけどありがとう」
「お前のその素直なとこは嫌いじゃないわ」
ちょっと不貞腐れたあと、へへっとまただらしなく笑う慶奈に笑い返す桃夜。
二人はひとつ下の学年を目指してあるき出した。
「おはよう、来栖くん足の具合は」
「昨日はごめんよーー!!!!足痛くない!?大丈夫!?」
「お前は少し静かにしてろ!割り込むな!」
来栖のいる学年へとやってきた慶奈と桃夜は来栖を見つけるとすぐに話しかけた。
桃夜が優しく声をかけると来栖は振り返る。そして急に大声で割り込んだ慶奈に来栖は驚き、慶奈は桃夜に怒られた。
「ごめんな、驚かせて」
「あ、えっと、はい、大丈夫です」
「改めて聞くけど足の方はどう?病院には行ったのかい?」
「いえ、腫れもなかったので病院には…大丈夫ですよ」
「そっか、ならよか」
「良かったああああ!」
「だから割り込むな!」
泣きながら良かったと叫ぶ慶奈に怒り呆れる桃夜と困り顔の来栖。
教室内での出来事のため何事かとみんなの視線が集まった。
「あの、すみません。あまり、騒がれるのは…」
「ああ、ごめんなホントに。迷惑だったよね…足の具合が気になっただけだからすぐに出てくよ」
「えっ、せっかく話ししてるのになんでそんな勝手に決め」
「周り見ろ周り、あんま迷惑かけると嫌われるぞ」
「それはやだ!!分かった…ねぇ、また来るね」
しょぼんと気を落とした慶奈は来栖を見るとそう言い残し、優しく笑った。
来栖はそれに困惑する。
なぜ?と言いたかったが聞く前に二人は「じゃあまたね、足お大事に」といい去っていった。
「何だったんだ…」
周りからの視線をひしひしと感じながら来栖はそう一人呟いた。
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