最終ミッション:可愛く和くんを起こす

 普通に起こすんじゃない。「可愛く」起こす必要がある。カーテンは先に開けるべき? 和くんの部屋のカーテンは光を通さない遮光カーテン。


 時刻は既に、6時50分となっていて、和くんがいつも起きる時間7時まであと10分になっている。


 外は既に日が昇っているけれど、部屋の中は真っ暗。あのカーテンのお陰だろう。カーテンを開けると「シャー」とか音がするし、後にしよう。カーテンの音で起きてしまったら、和くんを起こしたのは私はなく、カーテンになってしまう。


 まかり間違ってカーテンにNTRされたら、「カーテンに負けた女」として一生十字架を背負って生きていくことになりかねない。


 ここは私が起こさなければならないの!


 ああ、私は何を考えているのだろう。色々トラブルがあった少し混乱しているのかもしれない。




 私は床に落ちた空き缶などを避け、ベッドの横に静かに移動し しゃがんだ。



「か・ず・くぅーん♪」



 渾身の猫なで声で和くんを起こしてみた。



「……」



 私は反射的に立ち上がり、すぐさまカーテンの前に行き、思いっきり左右にカーテンを開いた!


「シャー!」と思いっきり大きな音と共にカーテンが左右に開かれた。



「あなた、誰!?」



 そう、和くんが寝ているはずのベッドには和くんとは似ても似つかない知らない人が寝ていたのだ!



「う、ん……なに? 誰?」



 年の頃なら30歳くらいのおじさんが眠たそうに起き上がった。



 ―これは、誰!?

 ―和くんはどこ!?

 ―ここはどこ!?

 ―私は誰!?



「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」


 私は大分混乱していたと思う。思いっきり悲鳴を上げた。その声は近所に響き渡ったという。



 ***



 その後、私の悲鳴を聞きつけて、和くんが駆けつけてくれた。


 和くんが事情を把握して、謎の男の人に説明してくれるまで私は全力で不審者だった。警察に突き出されても文句は言えない程に。


 結果から言えば、私はらしい。





 鍵は確かに大家さんから預かった。大家さんが部屋番号を間違えたのか、私が部屋番号を言い間違えたのか……


 私は知らない人の家に忍び込んで料理を作っていた「ちょっと頭のおかしな女」という事になってしまう。


 冷静になって考えてみたら おかしいことはたくさんあった。


 和くんにしては寝相が悪すぎた。日ごろのイメージと違い過ぎる。


 冷蔵庫の中に入っている物も普通じゃなかった。


 部屋の中もすごく散らかっていた。空き缶を床に散らばらせたまま寝ているのもイメージと違う。



 和くんは「よかったね、大事にならなくて。隣の人も笑って許してくれてさ」って言ってくれた。


「……うん、確かに。一つ間違えれば大変なことになっていたかも……」



 和くんの部屋に移動して、和くんを見た。きっと私はばつが悪い顔をしていただろう。



「朝から驚いたからお腹空いた」って爽やかな笑顔で言う和くん。パンはもう焼いてしまったからない。あるのは、たまごの残りと……「え」目的のネギ!!



「ネギ入りのたまご焼きならできるけど、それでいいかな?」



 その後、和くんの家で改めて普通のフライパンを使って、ネギ入りのたまご焼きを作って、和くんと笑いながら一緒に朝ごはんを食べた。


 ちなみに、和くんのお部屋は適度に片付いていて、きれいだった。知らないおじさんの家とはニオイからして全然違った。


 朝ごはんにたまご焼きとコーヒーだけだったけど、和くんはすごく喜んでくれた。きっと一生忘れられない思い出だろう……



「あの……和くん、私 和くんのことめちゃくちゃ好きなんですけど……お料理も頑張るし、お化粧ももっと勉強するし、ドジも……できるだけ減らすから、ずっと好きでいて……くれますか?」



 ……って聞いたらめちゃくちゃ抱きしめられて、めちゃくちゃ頭なでられた。


 これって、ミッションコンプリート?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

可愛い彼女大作戦ーミッションインポッシブルな理想と現実 猫カレーฅ^•ω•^ฅ @nekocurry

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ