ミッション:朝食づくり
■ミッション:朝食づくり
いよいよ朝食づくり開始っっ!
メニューは、トーストとスクランブルエッグ、焼きベーコン、それにレタスサラダにプチトマト。
全ての材料は準備しているから、あとはフライパンで調理して、お皿に盛るだけ! 多少のことは、私の計画の妨げにはならない! 私の計画は完璧なの! 常勝! あぁ、敗北が知りたい!
まずは、フライパンを準備……フライパン……フライパンはどこ!?
まずね、真っ暗!
なんにも見えないのっ!
マンガのヒロインとかは、彼氏が目覚めた時に朝食を既に作っている時どう調理しているの⁉ この暗黒の中で料理!? こわっ! ストーカー!? やってることは泥棒とあまり変わりがない。
そう言えば、昔のドラクエの主人公は村人が寝ている間に部屋に忍び込んで引き出しとか開けまくっていた。あれは泥棒では……
はっ、どうでもいいことに気を取られていた。
キッチン灯を
コンロ! コンロの明かりよ! 幸いコンロは電気コンロ。電源をONしたら赤くなるやつ。蚊取り線香張りにぐるぐる巻かれたレトロタイプの電気コンロ。
近づけば手元くらいは見える! 難しい作業はないからある程度見えれば何とかなる!
「(コンロ、スイッチオーン!)」
赤くなるのに時間がかかる……でも、うっすら明るい。そういえば、念のため、たまごの賞味期限を確認したい。たまごに貼ってあるシールを見れば分かる。たまごをコンロに近づけて……
「あっっっっつい!」
バッ! 慌てて口を両手で塞ぐ。恐る恐る和くんの方を見る。
……動かない。まだ寝てる。
セーーーーフッ! 思わずガッツポーズが出た。
静かに蛇口から水を出して流水で火傷したところを冷やす。痛い痛い痛い。
もういい。たまごはOK。買ったの昨日だし、大丈夫という事にしよう。スーパーを信じる!
ボウルはないので、コーヒーカップを借りよう。これで代用。コーヒーを淹れる前に洗えば大丈夫。
私は持って来たたまごをコーヒーカップに割り入れ、これまた持って来た菜箸で手際よくかき混ぜる。
チャチャチャチャチャ
このいい音を和くんに聞かせたい。「今ちゃんと料理できている」感が半端ない!
イケる! この調子なら、今のうちにフライパンを準備……ないーーっ! フライパンがない!
そして、ここでなぜか電気コンロが切れたーっ!
再び暗黒!
なに!? 何が起きたの⁉ もしかして、安全装置!? 過熱センサーが働いた的な!? そりゃあ、このコンロが過熱したのって私の親指くらい。
とりあえず、電源をOFF。
人類の家に置いてフライパンがない家があるなんて……迂闊だったわ。こうなれば、電子レンジで加熱するしかない。
電子レンジは、キッチン横の棚の上にある。……あるけど、使うと「ブーン」っていわない!? 「ブーン」って!
ブーン……真っ暗なキッチンに電子レンジの加熱音と庫内灯の光がこぼれる。
加熱時間は60秒! 味付けも忘れてない。大丈夫、私!
チーン!
ドキーーーン!!
起きた! 絶対起きた! 和くん絶対起きたーーーーー! 頭を抱えたまま動けない。
……再び静寂がキッチンを含めた室内に訪れる。外には原付バイクが走り去る音が聞こえる。恐る恐る顔を上げると何も変化がない様子。
ベッドの方を見ても、和くんは寝がえりを打ったくらいでまだ寝ているみたい。セーフ? セーフなの?
静かに電子レンジの扉を開けて見る。コップの底にたまごの塊ができている。そっと取り出し、菜箸で軽くかき混ぜたらスクランブルエッグが完成した。
……なんだろう。この満足感の無さ。
あんまりおいしそうじゃない。フライパンを使った時と違って、全然フワフワしてない。
これが私の渾身の料理!? これが和くんに見せる愛の結晶!?
いや、違う。これは違う。作り直すしかない。幸いたまごは1パック10個持ってきている。もう一度作ることくらい十分できる。
よく見ると、パンを焼くためのトースターが……ない! この家にはトースターもないの⁉
しばし指を額に当てて止まる。
材料はすべて持って来た。調味料も持って来た。油だって持って来た。だけど、調理器具がないという発想がなかった……
調理ミッション失敗……
ここで終わり? 終わってしまうの⁉ 私は思い出していた。
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