第57話 神の真実は進み行くなり(3)

 パレードはネット中継されていた。定点カメラのほかに、ドローンまで使って、一団体ごとに、パレードの最初から最後までが全世界に中継されていたのだ。

 しかも、ネット中継なので、リアルタイムでコメントがつく。

 大山おおやま蒼子そうこ先輩のイケイケダンスは評判がよかった。海外から

「Wonderful! Is this Japanese IKE-IKE?」

というコメントもついていた。たぶんめられているのだろう。

 椎名しいな先輩と動きを合わせてからはさらに高い評価になった。

 「この娘らスゲー!!!(驚きの絵文字が五つ)」

 「高校生? プロのダンサーじゃないの?」

というコメントもあった。

 三人娘の歌は、映像では声をじゅうぶんに拾えていなかったにもかかわらず、すぐ横で聴いていた何人かが「天使の歌声」とか「これが聴けてしあわせ」とか「一年間幸せな気もちで過ごせます」とかコメントしてくれていて、やはり評価が高かった。

 でも、高かったのはそれだけだ。

 向坂さきさか部長は最初から集中していなかった。足の動きとバトンの動きが合っていない。バトンの動きとバンドのリズムも合っていない。ときどきバトンを落としそうになる。やがて唐崎からさき郡頭こうずまちと同じようにとぼとぼ歩くだけになった。その様子が中継映像にずっと映っていた。

 マーチングの先頭なので、とても目立つ。

 三人娘の歌でマーチング全体が停止したときの向坂先輩の姿もカメラはとらえていた。

 向坂部長は、指揮者であるにもかかわらず、マーチングが止まることを認識しておらず、小森こもり先輩といっしょに先へ進んでしまい、様子が違うのに気づいてあわてて引き返していた。

 向坂部長は、晶菜あきなが2703に行って最初に説明したとき、どこで一年生の歌が始まるか合図がほしい、と言っていた。そのあと、郷司ごうじ先輩から、どこで曲が始まるかの説明はあったはずだけど、やっぱり覚えていなかったのだ。

 それから映像は三人娘のほうに切り替わったけど、再び向坂部長が映ったとき、部長は大あくびして指揮用のバトンで肩をたたいていた! コメント欄に非難と嘲笑のことばが飛び交ったのも当然だろう。

 「こんなリーダーに従わされるバンドもかわいそうだよな」

というコメントまであった。

 ところで、その部長の指揮を見ていたのは、すぐ後ろの小森先輩ぐらいで、ほかのメンバーはスネアドラムのリズムにしたがってマーチングしていた。マーチングに出発してすぐに、スネアドラムのリズムがいちばん正確だと体で感じたからだろう。郷司ごうじ先輩も晶菜あきな夏子なつこもそうだった。それどころか、その映像を見ると、小森先輩も部長の乱れたリズムにはしたがっていない。

 だから、部長の指揮がどんなに乱調でも実害は何もなかったのだけど。

 最後の「大潰走かいそう」には「何やってんだ?(驚きの絵文字と笑いの絵文字)」「笑笑笑笑笑」とコメントがついていた。

 そして、さらにそれでも終わらなかった。

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