第56話 神の真実は進み行くなり(2)
少女たちは、一部を除いて、マーチングができるとわかって喜びに湧いた。
しかし、喜びのパワーだけでマーチングを成功させられるわけはなかった。
とはいっても、大部分のパートは、巧くやったと思う。
問題はカラーガードだった。
つまり、下級生のほうが出来がよかった。
マーチングの前のほうが崩壊度が高くて、後ろがまともだった、ということでもある。
パートのメンバーは不歓迎一色だった。「何しに来たんだろ?」、「いまごろになって」という声があちこちから漏れた。
「いやだいやだいやだ、こんなの出ない出ない出ない出ない、嘘だ嘘だ嘘だ」
とだだをこねていた。ほんとうに涙を流していたらしい。「嘘」というのは、晴れて日が照っているのが嘘だ、ということらしいけど、みんなにとってはそっちが現実なので、完全に無視されていた。
「だったらさっさと帰れ!」
とどなりつけた以外は。
それでも、郷司先輩に対する意地からか、唐崎は本番に出た。
まったく演技ができなかったのは当然だ。雨が降ると決めつけてまったく練習していないのだから。
それで何度もわざと落後して逃げようとした。でも、後ろで演技する二年生の富貴恵さんが、唐崎が自分より後ろに行くのを許さなかった。唐崎は一度は怒ってポンポンを道路に叩きつけたけど、富貴恵さんは何ごともなかったかのようにそのポンポンを拾って唐崎に押しつけ返した。
しかも、郡頭まち子までがすぐに脱落した。もともとこの演技をみんなに解説したのはまち子だったのに。
最初のほうだけ切れのいい演技をしていたのに、途中でまちがってから演技を思い出せなくなったらしい。一曲めの「故郷の人びと」の途中まではなんとか演技に戻ろうとがんばったけど続かず、やがて富貴恵さんのすぐ後ろをとぼとぼと歩くだけになってしまった。
富貴恵さんの前には唐崎がとぼとぼと歩き、後ろにはまち子がとぼとぼと続く。やりにくかっただろうと思う。
郷司先輩や晶菜や
カラーガードのリーダーの
そういう壊滅状態からの挽回をリードしたのが、
郡頭まち子が演技をあきらめたあたりで走って前に飛び出し、派手な演技を始めたのだ。
右手を頭の上に上げて右足の片足立ちで一回転し、手と足を入れ替えて左手と左足で同じように一回転する。大きく跳び上がって脚を両側に開き、ポンポンをまんなかで打ち合わせる。右へ「
問題はそれが曲にぜんぜん合っていなかったことだ。
ところが、
椎名先輩は演技しながら、大山先輩とアイコンタクトをとって動きを揃えていった。椎名先輩は曲をちゃんと理解しているので、大山先輩の動きもやがて曲調に合う。
そして、三曲め「リパブリック讃歌」の曲が止まったところで、一年生三人娘の歌が始まる。
その声は練習のときにもましてきれいだった。晶菜の
郷司先輩と
でも、千鶴の懸念も現実になった。
それも、たぶん千鶴が予想した以上に。
マーチングのペースは絶望的に遅かったらしい。
曲の演奏が終わったのは、ゴールのペデストリアンデッキとは交差点を隔てたはるか手前の坂の途中だった。
どこかの街のお
グロッケンシュピールパートを率いる反部長最強硬派の
「はい早くゴールまで行って! はい、走れ!」
と後ろから声を立てた。それに促されるように、大きい楽器を持ったメンバーたちまで小走りに走る。大
しかも、
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