第46話 栄光を! 栄光を! 神を讃えよ!(12)
その
そのあとに来たのが
バスドラム首席の
トロンボーンの
そこに、体じゅうの血色がよい大きい子と、顔立ちはその子ほど派手ではないがやはりスタイルのいい子が来て、その大林千鶴と若林先輩の近くに席を取る。二人とも雨に濡れた細長いケースを持っている。持っている、というより、持て余している。たぶん、この二人がトロンボーンの一年生なのだろう。
いいけど。
でも、小森先輩も、もう少し、自分がカラーガードのメンバーに受け入れられる努力って、してほしいんだよね。
そして、集合時間ぎりぎりになって、やっと向坂先輩と
しかも、二人とも私服だ。
公式フォーラムに「制服を着て来てください」とあったのに!
先輩はベージュの
宮下先輩は清楚な感じのワンピースだ。生地は白がベースで、細かい柄が入ったプリント地だ。
向坂先輩が、その宮下先輩のワンピースの背中のボタンを留めている情景がふと頭に浮かぶ。
もちろん、場所はあの2703室だ。
腰のリボンを結ぶのもやったかも知れない。
宮下先輩の腰の後ろに、膝をついて……。
全面ガラスの窓の外は雨に煙っていて、何も見えない。ただ打ちつける雨が次々にガラスに波紋を作り、流れて行く。エアコンの音よりも、その雨が窓を打つ音のほうがバックグラウンドに大きく響いている。
……この情景を晶菜のところに届けたくれたのも、神様だろうか?
もちろん晶菜の想像だけど、嘘ではない、という確信があった。神様が届けてくださったものを嘘あつかいすることはできない。
宮下先輩は、昨日からいたのか、今朝になって来たのか。
2703に。
二人は、あのスイートルームに二人でいて、そこからここに来たのだ。
しかし。
それは楽しい時間だったのか?
宮下先輩はいつもどおり「いい子」な顔で微笑している。
でも、向坂先輩は、どこか疲れているようで、元気がない。
せっかく、向坂先輩の望みがかなって、マーチングが中止になりそうなのに?
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