第40話 栄光を! 栄光を! 神を讃えよ!(6)

 大林おおばやし千鶴ちづるがカウントを取る。

 「じゃ、はい、ワン、ツー、スリー」

 四拍めは黙る。そこに、一年生少女たちが歌い出した。

 「マ アイザ スィン ザ グローリ オザ カミン オザ ロー ヒス

  ツランプリ アウザ ウィンテジ ホェザ グレオ レッタ ストー ハット

  ルースザ フェイフ ライッニン オヒス テリブ スイフトゥ ソー

  ヒズ トゥルースィズ マーチン オン!」

 弾力のある、弾むような歌いかただ。

 最初のひとまとまりは、右手で傘をさしたまま左手を腰にやって、拍に合わせてその左手を動かしていた。

 それが、次になると、両手を上げ、右手と左手を交互に前に出す、という振りになる。

 右手は傘を持つ手なので、右手を出したときには、その体は「一分で回復不能」の雨にさらされる。

 気にしている様子は、三人とも、ない。

 次のまとまりになると、右手を斜め上に、左手を斜め下に、とか、さらに派手な振りが入る。

 そして、最後のまとまりの最後で、頭の上できらきらきら、とやるらしい。傘を持っていない左手は手首を回して手のひらを動かし、傘を持っている手は傘を回すので、しずくがまわりに散っている。

 これだけ動いて、横を見てたがいの動きを確認することもしない。

 それで歌がきちんと合っている!

 もちろん動きも合う。

 歌が続く。

 「グローリ グローリ ハレルーヤ!

  グローリ グローリ ハレルーヤ!

  グローリ グローリ ハレルーヤ!

  ヒズ トゥルースィズ マーチン オン」

 ポンポンを上に上げ、手を右に動かして右へステップ、左へ動かして左へステップ、その繰り返し、ポンポンを体の前で大きく回して、前でキラキラ、右手を上げて、左手を上げて、最後に前に突き出してキラキラ、という流れだ。

 最後のところはなんとかが「マーチング・オン」、つまり行進し続けている、という意味で、前に手を伸ばしてキラキラキラとするのは、それを表現しているのだろう。

 そして、そのあとは前半の歌と後半の歌の重唱になる!

 前列二人がハーモニーを作りながら「グローリ グローリ ハレルーヤ!」を繰り返すのに対して、後ろの子が一人で歌詞を歌う。

 声がよく通ってきれいだ。

 この子、ふだんはもっと甘々な声をでしてとろっとろっとろっとしゃべるんだけど。

 そんなとろとろ感が少しもない。

 全員の声がハーモニーで重なり合いながら「ヒズ トゥルースィズ マーチン オン」を繰り返して終わる。

 三人の一年生は、右手で傘をさし、左手は腰のところに置いた。

 晶菜あきなは熱烈に拍手したい思いだ。

 でも、しなかった。

 ももさんと一年生三人の「師弟関係」に割り込みたくない。


 ※「リパブリック讃歌」


 Battle Hymn of the Republic


 Mine eyes have seen the glory of the coming of the Lord:

 He is trampling out the vintage where the grapes of wrath are stored;

 He hath loosed the fateful lightning of His terrible swift sword:

 His truth is marching on.

 (Chorus)

 Glory, glory, hallelujah!

 Glory, glory, hallelujah!

 Glory, glory, hallelujah!

 His truth is marching on


 歌詞はウィキペディア日本語版・英語版より引用しました(最初の部分のみ)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%91%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E8%AE%83%E6%AD%8C

https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_Hymn_of_the_Republic

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