第37話 栄光を! 栄光を! 神を讃えよ!(3)

 郷司ごうじ先輩が言う。

 「でも、自分のことは置いといて、ってことになるけど、不安だな」

 晶菜あきなが聞く。

 「何がですか?」

 「本番で、ちゃんと演技できるか」

 郷司先輩がたんたんと言う。

 「もちろん、曲は繰り返し聞いて、頭に入れたけど、本番で箕部みのべ城跡しろあと通りをマーチングしながらそれができるか、っていうと、正直言って、自信ない」

 郷司先輩がこんな弱気なことを言うのは珍しい。

 あのときの向坂さきさか先輩も弱気だった。

 「わたしだって、ありませんよ」

 晶菜が言うと、郷司先輩は

「晶菜はもっと自信持って」

と言う。

 「いや、それは」と言い返しかける。しかし、その前に郷司先輩が

「あ。でも、火曜日にあれを提示された、って点ではいっしょか」

 今回の演技プランを、だ。

 「わたしは先に知ってたんだから、むしろわたしができないといけないのか」

 「そうですよね」とは、言えない。

 郷司先輩が、日曜日、その演技プランを決めるためにあの「2703」に行っていたことは、先輩自身は晶菜に言っていない。

 向坂先輩が伝えた、と、郷司先輩はわかっているのだ。

 「晶菜は、運動苦手だから生徒会役員になった系?」

 そういう「系」は確実にあるのだろうな。

 「というより」

と、晶菜は説明する。

 めんどうくさい説明だけど、いまの場面には省略せずにその説明をやるのが似合うと思う。

 「一年のときに、うちのクラス、部活から生徒会に参加する子が少なくて、もう一人役員出して、って話になったんですよ」

 生徒会の委員には、クラスから選出される委員と部活から選出される委員がいる。部活の委員はクラスには関係なく選ばれるから、クラスによって委員の数の多い少ないが出る。しかたのないことだけど、人数が足りなくなったときには、人数の少ないクラスが委員を出して、と言われることになる。

 しかも、その子は、クラス代表ではないので、何か別の役職が回ってくることになる。

 「ああ」

 郷司先輩が言う。

 「そういうパターン?」

 「はい」

 晶菜が律儀りちぎに答える。

 そのあいだも、二人の前のコンクリートを雨が絶え間なくたたき続けている。

 「それで、帰宅部員からだれか一人、ってことになって、じゃんけんして、わたしが負けたから、役員になって」

 「まあ、高校、生徒人数が多いからって、生徒会役員の数、多すぎるよね」

 「いや」

と、晶菜は郷司先輩を見上げた。

 「昨日、きいたんですけど、いまの期からは、その人数に合わせて、生徒会活動を活発にする、みたいな傾向になってるらしくって」

 「わたしにはついて行けない世界だね」

と郷司先輩が言う。

 続ける。

 「でも、こんど会長になったあの斎藤さいとう由子ゆうこって、そういうキャラだったかな?」

 「いや、それが」

と説明しようとしたところに、階段を上がってくる足音が響いて来た。

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