第35話 栄光を! 栄光を! 神を讃えよ!(1)

 水曜日は晴れた。

 フライングバーズではパート練習が行われた。この日はグラウンドが使えたはずなので、カラーガードも屋外で練習できたはずだ。

 そして、木曜日は、また雨だ。

 今日はまだ神様との契約の日ではない。

 まったく。

 だとしたら?

 晶菜あきなは高校北棟の廊下の窓から灰色の空を見上げて、小さい声で言う。

 「雨はだれが降らすのだろう?」

 「あーきな」

 声をかけられて晶菜は振り向く。

 「ああ、先輩」

 後ろで笑っていたのは郷司ごうじ先輩だ。

 前に雨が降ったときと同じだ。

 今日も髪が肩のところでふわっと広がっているが、さすがに湿気を吸ってもたついている。

 「来て」

 今回は「よかったら」もついていない。

 しかし、雨を降らせているのは晶菜ではないんだけどな……。

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