第27話 2703(5)
キウイのジュースはバケツには入れていないらしく、
「ありがとうございます」
と受け取る。先輩は、もう脚を組まずに、普通に
キュロットが
先輩は、
「ところで、カラーガードはどうなの?」
どうして、みんな晶菜にカラーガードのことを聞きたがるのだろう?
そう思ったけど、もちろん拒否するつもりはない。
「いや。昨日、部室で新しい演技の説明があって。問題の
まち子を嫌っている皓子がどうしてあんなにまち子と仲よさそうだったのか。
それは、向坂先輩にはきかないほうがいいと思った。
「部内、それでまとまりそう?」
「はい」
晶菜はうなずく。
いかにも「いい子」といううなずき方だな、と、自分で思う。
「よくあそこまで単純化して、郡頭まち子が怒らないな、と思いましたけど?」
「怒るといけないからまち子に説明させたんだよ」
向坂先輩が言う。
「まち子に説明させたんだよ」と言ったときの、美しい唇の動きと、声にかすかにこもった力が晶菜の印象に残る。
「あれは、日曜日に、ここで、わたしと
ここで。
つまり、この部屋で。
向坂先輩の家が借りている、パールトンホテルの2703室で。
そういうことか、とは思った。
向坂先輩も雨乞いが効くとは思っていない。だから、カラーガードの演技を単純なものに切り替えたのだ。
雨が降らず、マーチングが行われる、という前提で。
でも、
「椎名先輩も、ですか?」
椎名先輩は去年からカラーガードにいた先輩だ。部長の向坂先輩に反抗的ではないけど、味方でもない。だから、この前の、
「うん」
と向坂先輩がうなずく。
「まあ、二つ意味があって、まず、椎名が敵に回るのを防止」
つまり、向坂先輩に反抗的な
「でも、それより、椎名は体もよく動くしよく知ってるからね。椎名の前では、郡頭まち子もうかつに旗とか言えない」
「カラーガードはフラッグで演技すべき」という主張のことだ。
「あいつさ。前に旗のことを言い出したとき、旗で演技すべき、とか言うと、椎名のほうが巧いから主導権取られる、って想定してなかったんだよね」
「それで、急に、フラッグなんかどっちでもいいです、とか言い出したわけですか?」
「そういうこと」
先輩はうなずく。
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