第3話 雨乞い計画(3)

 唐崎からさきが言う。

 「生徒会が出場辞退を認めねえって言うし、今度の顧問もさ、腰抜けで、生徒会が認めないことは認められないとか言ってるんだからよ」

 生徒会も、交替して新しく就任した顧問の先生も、出場辞退は認められない、と言って来たのだ。

 そこで、そうなった以上、城まつりのパレードというイベントを中止にしてしまうしかないという話になった。

 そこまでは、半ば冗談のような話だった。

 髪の毛がパンチパーマみたいな天然パーマの大山おおやま蒼子そうこ先輩が

「じゃ、爆弾テロ予告状でも送る?」

ととてものんびりと提案した。それはただちに却下されたが。

 そのとき、唐崎がネットを検索して「古代エジプト流雨乞あまごい」というのを見つけたのだ。

 成功率九九・六パーセントだという。

 なんだ、その中途半端な数字は?

 たぶん「百パーセント」と書くとかえってうそくさいと思ったのだろうけど。

 「雨が降って中止になるのは当然だし、雨乞いしたって犯罪にはならねえだろう?」

と唐崎は強く主張した。

 雨が降ればパレードは中止になる。たしかにフライングバーズはパレードしなくてすむ。

 郷司ごうじ先輩がうんざりして言う。

 「だから、その出場辞退って考えが、いいの、って言ってるの」

 唐崎がいきり立った。

 「だってできねえもんはできねえんだから、しょーがないだろうが!」

 少なくとも自慢することじゃない。

 いま、そのフライングバーズで、どのパートがどの程度まで仕上がっているか、音楽的素養も体育的素養もない晶菜あきなにはわからない。

 ただ、バトントワリング以外の演技を担当するカラーガード部門の出来が最悪だということだけは、その素養のない晶菜にもわかる。

 そして、ここにいる幹部メンバーのうち、部長と副部長、トランペットの江藤えとう九美くみ先輩と井川いがわめぐむ、バスドラムの山鹿やまが芳子よしこ先輩以外は、そのカラーガードに属している。唐崎も、晶菜自身もだ。

 唐崎はさらにことばの矛先ほこさきを郷司先輩に向ける。

 「てめえなんかなあ、会計に専念するとか言って演技に参加しないとか言ってるやつが何抜かしてんだ」

 早口でまくし立てる。

 郷司先輩にはこたえない。

 郷司先輩は体が大きく、態度もしっかりと構えているので、唐崎は苦手らしい。

 郷司先輩が言う。

 「じゃ、わたしも出ようか、演技?」

 唐崎が、その反応に、えっ、となる。

 いばっていても、予期しない反応が返って来ると、唐崎は反応できないらしい。

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