第52話 聖者戦6:騎士の最後
神々の戦のような光景を見据えながら、私は波をかき分けて足を進める。
ッヒュ……! ガンッッ!
またトラップを踏んだらしく、かぎ針が飛んできて3000の耐久を削られた。
「ステータス表示呪文は、先人の作った方程式に基づいています……」
魔法学園の授業を思い出す。私は嫌な田舎を出るために魔法学園に来たような生徒だったから、意識も低くて追試が多かった。
追試で叩き込まれた基礎の基礎。
それが今役に立っている。
先生は言っていた。
「我々は普通級の騎士の戦力を500と見積もっています。それは攻撃力10の攻撃を50回繰り出す体力がある、という意味です。
攻撃力5なら100回になるでしょうし、攻撃力50の攻撃なら10回で体力切れになり、休憩を余儀なくされるでしょう。
もちろん騎士はバネ仕掛けの人形ではありませんので、そんなにきっちりはしていませんが……。
物理職に対するステータス表示呪文は、おおざっぱにそのように計算される、ということです」
では――。と先生は間を置いて言った。
「魔道士が魔法で生み出す騎士――ゴーレムはどうでしょうか?
その出力はかなりきっちりしています。
ゴーレムは、基本攻撃力の50回分の体力を持って召喚される設定になっています……」
この法則に基づけば――。
ニャニャンの無敵騎士ゴーレムは、戦力1,000,000の50分の1である、20,000の攻撃力を一度の攻撃で発揮することになる。
私のゴーレムの耐久は100,000。
ニャニャンのゴーレムの攻撃を5回は受けられる計算になる。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン……!
ゴウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥン……!
ギキキキキキキキキキキキキキイイイイイインッ!!
早くも4度目の打ち合い。
その轟音を風圧のように受けながら、私はククとマリモの元にたどり着いた。
「ククはっ! 大丈夫かっ!」
彼女はお腹のあたりをかぎ針に圧迫されて、ぐったりとうつむいている。
「息はあります! でも、かぎ針が抜けませんッ!」
マリモはドラゴンの背骨に食い込んだかぎ針を必死に引っ張っていた。
「
私はマリモに攻撃力10000を付与した。
マリモの身体が魔法の力場で包まれて、かぎ針の攻撃力の3倍以上の力が備わる。
マリモは湧き上がる慮外の力に驚き、自分の手を見つめ、迷う間もなくかぎ針を引き抜いた。
メキィッ!
ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ……!!
かぎ針は元の闇へと戻っていき、ククはマリモの腕の中に倒れ込んだ。
「行こう! もうゴーレムが持たない!」
「はいっ!」
ザバアアアアアアアアアァァァァァァア……!!
私はマリモとともにククを抱え、大波の中を岸辺を目指した。
ドズウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥン……!!
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン……!
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!
背後では5発目の打ち合い。
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ……!
嫌な音に振り返ると――。
飛び散る火花と水蒸気の向こう――。
私の無敵騎士ゴーレムが耐久を失い、腕から胴体まで大剣でぶった切られているところだった。
『チエリー式・
戦力:0
耐久:0』
『ニャニャン式・
戦力:880,000
耐久:990,000』
よく健闘した――――――――!
などと感慨にふける間もなく……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
ぶった切られた私の無敵騎士ゴーレムが、こちらに向かって倒れてくる。 それはさながら崩壊する巨大建造物。
ゆっくりと倒れてくるその下を、私たちは叫びながら突っ走った。
「急げえええええええええええええええ!!」
「きゃあああああああああぁぁぁぁあああああ……!!」
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